もし親が「アポ電」を受けたら? 最新の犯行手口と、詐欺・強盗被害に遭わないための対策

もし親が「アポ電」を受けたら? 最新の犯行手口と、詐欺・強盗被害に遭わないための対策

全国で急増する「アポ電」被害。そのトレンドは、目まぐるしく変わっている

東京・江東区に住む80歳の女性が「アポ電」強盗の末に殺害された――。このニュースを見て、「うちの親は大丈夫か?」と一瞬でも不安になった人は多いはず。

なぜ今、「アポ電」が全国各地で急増しているのか? 犯行の実態や手口の"トレンド"を明らかにする!

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■高齢者世帯のリストを入手し、エリアを絞り込む

2月28日、東京都江東区東陽で80歳の女性が被害に遭った強盗殺人事件。このニュースで、犯人が資産状況や自宅にある現金の額などを事前に確認する「アポ電」という言葉を初めて知った方も多いだろう。

警視庁によると、昨年は都内だけで3万4658件も通報があった。前年より8747件増え、2年前と比較すると2倍以上。今年は2月末までで6368件と、昨年を上回るペースで急増している。

アポ電の手口は、これまではオレオレ詐欺などの特殊詐欺で多く見られてきたが、今年に入り、1月11日に渋谷区初台で約2000万円、2月1日に同区笹塚で約400万円が奪われるなど、強盗へと凶悪化。この2件は先述した江東区の強盗殺人事件で逮捕された3人のうちのひとりが関与した犯行と目されているが、今後も同じ手口を使ったアポ電強盗によって、金銭を騙(だま)し取られるだけでなく、命までも奪われる事態が続発するかもしれない。

ここで心配になるのが、「もし自分の親がアポ電を受けたら?」ということ......。高齢化しつつある親がアポ電による詐欺、強盗被害に遭わないようにするために有効な対策はあるのだろうか? 

元警視庁の刑事で防犯コンサルタントの吉川祐二氏が犯行グループの手口を分析する。

「江東区東陽、渋谷区初台・笹塚の事件に加え、3月16日に起きた静岡県小山町(おやまちょう)のアポ電強盗事件の取材をしたところ、実は被害者の家だけでなく、近隣住民にも不審な電話がかかってきていたことが明らかになりました。犯行グループは名簿業者から大手企業退職者や高齢者世帯などのリストを入手し、エリアを絞り込んでいきます。

その上で、付近の防犯カメラや交番の位置などを下見している可能性が非常に高い。アポ電があった地域の近くにご両親がお住まいならば、狙われているかもしれないと考えるべきでしょう。注意深く警戒し、固定電話にかかってくる不審な番号の電話には一切出ないようにするべきです」

アポ電と聞くと、「犯行の第一手」とのイメージを抱くかもしれないが、実はそうではない。特殊詐欺に詳しい弁護士の若井亮氏が語る。

「犯人がアポ電をかけるのは、すでに手元にある情報に加え、より確実に犯行を遂行するための情報を仕入れたいから。電話でコミュニケーションを取り、被害者との信頼関係を築こうとしているのです」

そもそも、アポ電がここまで急増している背景には、犯行グループと防犯対策とのイタチごっこがあるという。

「5年くらい前に横行していた振り込め詐欺の場合、犯行グループは被害者と対面することなく、ATMを通して金銭を受け取ることができました。しかし、振り込め詐欺が社会問題化したことで、警察や自治体の防犯指導が進んだ。その結果、犯行グループは直接振り込ませるのではなく、間に受け子を挟んで金銭のやりとりをするようになっていったのです」(吉川氏)

ところが、さらに防犯対策が進んだことで、受け子が捕まるようになってきた。

「犯行グループの稼ぎ高が激減したことにより、原始的ではありますが、確実に金銭を得ることができる『強盗』という段階までエスカレートしていったのではないか。巧妙に仕掛けられた強盗だからたちが悪い。今後ますます増えていくでしょうね」(吉川氏)

■固定電話を解約するか、防犯用に買い替えるか

急増するアポ電被害だが、その"トレンド"は目まぐるしく変わっている。

「3月半ばまでは確定申告の時期ということもあり、市の職員を装う還付金詐欺が横行。次に増えるのは、東京オリンピックの入場チケット詐欺ではないかと私はみています。高額でも入手したい高齢者は多いはず。新聞やテレビで目につく時事を絡めたネタがよく使われます」(吉川氏)

凶悪化、巧妙化するアポ電には対策が必要だ。まず、アポ電の疑いがある不審な電話に対してどう対応すべきか、親と事前に決めておきたい。

「もし怪しい電話がかかってきたら、『間もなく家族が戻るので、もう一度かけ直してください』と応対してもらいましょう。犯行グループの狙いは高齢者世帯なので、同居家族がいる家は避けますから」(吉川氏)

若井氏は「もし電話で受け答えをしてしまったら、直(ただ)ちに警察へ通報すべき」と訴える。

「緊急性がなくてもかけられる警察相談専用電話『#9110』でもいい。各都道府県警察本部の警察総合相談室などにつながるので、危険性があれば対応してくれます」

「#9110」はダイヤル回線ではつながらないが、別に、都道府県の警察本部ごとに、警察総合相談電話番号も用意されている。この番号は必ず親に伝えておきたい。

「アポ電の9割が自宅の固定電話にかけられています。この際、固定電話は解約してしまい、ご両親には携帯電話に切り替えてもらうのも有効な対策になります。固定電話を使い続けるのなら、相手の電話番号を表示する対応にして、知らない番号や非通知の電話には出ないほうがいい。それから留守番電話も有効です。犯人は声を残したがらないですから」(若井氏)

自治体や警察によっては、アポ電を阻止するための防犯グッズを貸し出してくれるところもある。板橋区や江東区などでは電話機に取りつける自動通話録音機を無料貸与しており、受電するとすぐに「防犯のため通話内容を自動録音します」などとアナウンスされるため、効果は絶大だ。

ただ、これを逆手に取る犯行グループもいるようだ。

「『録音機を貸し出しますので、ご家庭の状況を教えてください』というアポ電もあるそうです......」(吉川氏)

とにかく、市販されている防犯対策グッズを有効活用するだけでアポ電の被害を未然に食い止めることができるのは確か。例えば自動通話録音機能に加え、警察や自治体などから提供された迷惑電話番号を常に更新し、かかってきた電話番号を自動的に判別して着信拒否する迷惑電話防止機能のついた優れものの固定電話もある。

遠く離れた両親へ、親孝行としてプレゼントする価値は十分ある。「母の日にあげようと思っていたけど、その前に......」なんて事態にならないよう、今すぐアポ電対策をしたほうがよい。

取材・文/羽柴重文 イラスト/渡辺貴博

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