国産海苔"46年ぶりの大凶作"でコンビニおにぎりは大丈夫か?

国産海苔"46年ぶりの大凶作"でコンビニおにぎりは大丈夫か?

3大チェーンの主力商品である手巻きおにぎりはいずれも国産の有明産を使用

国産海苔(のり)が史上まれに見る凶作らしい。そこで気になるのは、大口の仕入れ先であるコンビニ3大チェーンのおにぎりへの影響だ。

この状況が続けば"ニッポンの国民食"の値上げは不可避? 海苔生産者および各コンビニに事情を聞いた。

* * *

■なぜ歴史的な凶作になったのか

今年度(2018年11月〜19年4月)の全国の海苔生産量が、46年ぶりの大凶作となる見込みだ。

業界紙「食品新聞」によれば、3月末時点での全国の海苔の共販枚数(市場に出回る枚数)は前年比15%減で、平均単価は約6.8%高。4月末までの枚数を見込んでも最終的に62億から63億枚程度にとどまると予想されており、約61億枚だった1972年度以来の低水準が確実視されている。不足分を補うため、国内海苔企業は韓国産や中国産の海苔での補填(ほてん)も視野に入れているという。

同紙は今年度の大凶作の原因を「暖冬による高水温や栄養塩不足」、さらに「東北の有力産地である宮城県でのタンカーのオイル漏れ事故」に求めているが、オイル漏れ事故の影響は理解できるとして、高水温と栄養塩不足がなぜ海苔の凶作を招くのか?

海苔の生産者組合である「全国海苔貝類漁業協同組合連合会」(全海苔漁連)の関係者が解説してくれた。

「秋から冬にかけて適度に冷え込み、海水温が下がることで、海苔は品質が良くなり、収穫量も上がります。しかし昨秋から今年にかけて気温が平年より高めだったため、海苔の養殖に適した海水温まで下がりきらなかったのです」

さらに、別の気象状況も影響した。

「海苔の生育期に、大産地である関東、東海、瀬戸内海沿岸などで、平年より降雨量が少なかったのです。雨が降ることで大地に含まれる窒素、リンといった栄養塩が川に流れ込み、海にまで届くことで海苔が育つのですが、今年度は海苔の肥料ともいえる栄養塩が各地で不足しました」(全海苔漁連関係者)

こうした複合的要因が大凶作を招いたわけだ。

「ただ、海苔の育成環境が年々悪化しており、収穫量の減少が今後もどんどん進行する見込みかといえば、そうではないのです。事実、72年以降は増加傾向に転じていて、昭和の末期から平成の前半にかけては、過去最高だった93年度の約110億枚を含み、年間90億枚、100億枚を当たり前に記録していました。それが13年度に突然約70億枚へと落ち込み、以降、17年度までは約81億枚、約74億枚、約75億枚、約75億枚というレベルで推移している状況です」(全海苔漁連関係者)

つまり、中長期的に年々減少しているのではなく、ここ5年ほどたまたま海苔養殖には厳しい気象条件や人為的事故が重なった結果だと見るべきなのだという。

すると今は、このところ続いてきた不作の底で、各地の秋冬の降雨量や海水温が平年並みに戻れば、来年度以降はV字回復に転じる可能性だってある?

「もちろんです。ただ自然が相手のことですし、ほかにも不作の要因があるかもしれないので、断言はできないところなのですが。いずれにせよ、今年が近年例を見ない大凶作であることは認めざるをえません。全国一の産地である佐賀県・有明海を含む九州地域の共販枚数は、3月31日の時点で約35億枚。昨年は同じ時点で約40億枚でしたから、5億枚も減っているというのはやはり大変なことです......」(全海苔漁連関係者)

ん? 有明海産海苔と聞いて、庶民のわれわれがまず思い出すのは......そう、コンビニおにぎりだ。

コンビニ大手各社は主力商品であるおにぎりの大部分に有明海産の海苔を使用しており、パッケージにも誇らしげに謳(うた)っている。その有明海産海苔も大凶作であれば、仕入れ価格も上がると考えるのが自然だ。とすると、こんな事態が起こりはしないか?

・小売価格の値上げ

・おにぎりラインナップの中に、オムライスおにぎりやチャーハンおにぎり、もち麦入りおにぎりのような「海苔なし」おにぎりの割合が増える

・有明海産だった海苔を、韓国産や中国産に切り替える。

もちろん値上げなんてしてほしくないし、価格を維持するため、あのパリッと香り高い有明海産海苔を使ったおにぎりの品目が減ったり、なくなったりするのもいやだ!

■海苔なしの「変わりおにぎり」が増える?

そこで、週プレはコンビニ3大チェーンへ、今そこにある"おにぎり危機"について質問をぶつけてみた。各広報部門から戻ってきた答えは、次のとおりだ。

「海苔なしおにぎりの割合を増やしたり、海苔を海外産に切り替えたりすることはございません」(セブン−イレブン・ジャパン)

「今年度の凶作を受けての値上げは考えておりません」(ローソン)

「現状では、有明海産海苔を使ったアイテムを削減したり、海外産海苔にしたり、値上げしたりすることはありません」(ファミリーマート)

なぜ大丈夫なのか? その裏事情を、コンビニ業界に詳しいフリージャーナリストの吉岡秀子氏が明かしてくれた。

「コンビニ大手各社は規模が大きいですから、計画的に大量の海苔を仕入れることで、仕入れ価格の変動がおにぎりの販売価格を左右しないようリスク管理しているのです。また、外国産海苔への切り替えもないでしょうね。コンビニは価格よりも価値を提供することをポリシーとしている業態ですので、一度上げた品質は絶対下げたりしません」

ただ、大凶作とは関係のない理由から、海苔なしおにぎりの割合が今後増えることは十分にありえるという。

「10代、20代ユーザーや女性客の多くは、見た目がきれい、白飯よりいろいろ入っていてお得感があるなどの理由でまぜご飯のおにぎりを好み、海苔のありなしをさほど気にしてないというデータがあるのです。ローソンの『悪魔のおにぎり』の大ヒットがいい例ですね。このトレンドに乗り、海苔なしの"変わりおにぎり"が増えていっても不思議はありません」(吉岡氏)

変わりおにぎりの増加はともかく、有明海産海苔を使った定番おにぎりが値上がりしたり、品目が減るようなことはなさそうだ。よかった......。あとは今年、全国で降るべき雨が降り、冬らしい冬が来ることを祈るのみ!

関連記事(外部サイト)