外国人従業員数13000人――コンビニ・ローソンを支える、知られざる外国人研修制度と見直すべき外国人店員への接し方

ローソンの外国人店員は13000人 外国人店員が仕事し易いよう接することを提案も

記事まとめ

  • 現在のコンビニ業界は、外国人店員なくしては成り立たないと言っても過言ではない
  • ローソンの外国人従業員数は9月時点で13000人で、ほとんどは大都市圏で働いている
  • 日本には誤解しがちな言葉があるため、外国人店員が仕事し易いよう接することを提案も

外国人従業員数13000人――コンビニ・ローソンを支える、知られざる外国人研修制度と見直すべき外国人店員への接し方

外国人従業員数13000人――コンビニ・ローソンを支える、知られざる外国人研修制度と見直すべき外国人店員への接し方

ローソンスタッフには全国14都道府県17ヶ所に研修拠点があり、約600名の外国人が登録し、その多くは留学生

都心のコンビニを利用している人であれば、ほぼ間違いなく外国人店員に接客されたことがあるだろう。現在のコンビニ業界は、まさに外国人店員なくしては成り立たないと言っても過言ではない状況だ。

ではなぜ、コンビニには外国人店員が多いのか。彼らはちゃんと業務をこなせるのか。どのような教育を受け、レジに立っているのか。そして、外国人がコンビニで働いて苦労することとは?

そんなさまざまな疑問をぶつけるべく、ローソン傘下で従業員の派遣などを手掛けるローソンスタッフ株式会社の外国人向け研修を取材した。

* * *

ローソンMO推進部の坂本泰司(さかもと・たいじ)氏は、外国人店員が増えている理由を次のように話す。

「近年はどこも人手不足で、採用にかかる費用が高騰し続けています。そのうえ求職者の中にはスマホで複数の求人へ同時に応募する方も増えているため、より採用が難しくなっています。外国人はオペレーションの習得に時間はかかりますが、横のつながりが強く、友達の紹介も行ってくれるんです」

2019年9月現在、ローソンの外国人従業員数は約13000人。2年前と比べ約4500人も増加しており、そのほとんどは大都市圏で働いている。出身地域別ではネパールが最多の31%で、その次に中国、ベトナムと続く。近年はスリランカも増加しており、欧米出身者も珍しくなくなっているという。

コンビニのアルバイト店員には2種類のタイプがいる。ひとつは特定の店で働く店員。もうひとつは人材派遣会社に登録し、人手が足りない店に派遣されて働く店員だ。今回取材したローソンスタッフは後者にあたる。逆に言えば、ローソンの外国人店員すべてがローソンスタッフに登録しているわけではない。

ローソンスタッフには北は札幌から南は福岡まで、全国14都道府県17ヶ所に研修拠点があり、日本人も含めると約1500名が登録している。そのうち約600名が外国人で、その多くは留学生だ。このほかに親や配偶者の都合で家族滞在している外国人もいる。研修拠点はベトナム、韓国にもあり、来日前から研修を受けている場合もある。

同社の東京第二拠点で拠点長を務め、トレーナーとして外国人への指導も行なっている中江 良(なかえ・りょう)氏によると、外国人を雇う理由は単純に人手が足りないからだけではないそうだ。

「コンビニ業界に限らずだと思いますが、サービス業のアルバイトを長く続ける人はごく一部です。その点では、日本人の学生よりも外国人留学生のほうが長く働いてくれますし、1週間あたりに働く日数も多いんです」

一般的な留学生は卒業後、日本の企業に就職。それが出来なければ母国に帰らなければならない場合がほとんどだ。つまり、長くても数年しか働くことは出来ない。さらに、週28時間までという労働時間の上限が法律で定められている(学校の夏季休暇期間などは週40時間)。

しかし、それを差し引いても、日本人学生よりも外国人留学生のほうが、より長く、より多く働く傾向があるという。

外国人を雇うメリットは、それだけではない。中江氏が続ける。

「ただ生活のためにアルバイトするのではなく、将来日本で就職したいとか、母国で日本語を活かした仕事がしたいとか、明確な目的がある人が多いんです。だから本当に一生懸命働いてくれます。

特に中国から来た留学生は、日本語学校に加え塾にも通っているケースも珍しくありません。そうするとアルバイトする時間なんてないのですが、日本語の勉強をしたいから1時間だけでも働かせてほしいと面接に来るんです。本当に勉強熱心だなと思います」

しかし、近年のコンビニはオペレーションが複雑化している。店員は単純なレジ業務だけでなく、チケットの発券や通販の受け取りなどにも対応しなければならない。日本語学校に通う学生が多いとはいえ、決して言葉が完璧でない彼らは、問題なく業務をこなせるのだろうか。

ローソンスタッフでは、日本語能力試験のN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することが出来る)以上が採用基準となっている。ただし、面接して会話に問題がない場合や、日本語がうまくなりたい、日本の接客を学びたいといった熱意がある場合は、基準をクリアしていなくても採用することがあるそうだ。

面接に合格すると、1回3時間の研修を計10回受ける。研修場所は実際に営業している店舗の奥にある事務スペースで、研修用のレジも置かれている。

5回目までは座学中心。基本的な心構えに始まり、箸やスプーンなどの消耗品、レジ袋の種類、レジ操作の練習など、業務に必要な知識を覚える。6回目以降は店頭に立って実践。トレーナーが横についた状態で業務を行なう。ちなみに研修にも時給は発生する。

取材を行なった日は、午前と午後に各1名ずつ。ローソン・下落合二丁目店で研修が行なわれた。午前の研修を受けたのは、韓国人女性、ユン・ユナさん(21歳)。現在、韓国の大学を休学し、ワーキングホリデーで8月末に来日したばかりだが、彼女は日本語を本格的に勉強したことはなく、日本の歌を聞いたり、映画やドラマを見たりしているうちに話せるようになったという。

「好きな映画は『いま、会いにゆきます』と宮崎 駿さんの作品で、最近はYouTubeでヨルシカというバンドの曲をよく聞いています。小学生の頃から日本の文化に接し始めて、高校生のときに日本で就職したいと思うようになりました。大学ではコンピューターソフトウェアの勉強をしているので、卒業したら日本のIT会社で働きたいです」

彼女はなぜ、アルバイト先にコンビニを選んだのだろうか。

「韓国でも2年半ぐらいコンビニでアルバイトしてました。だから日本でも働いてみたいなと思って。日本のコンビニはすごく親切だと聞いたんです。韓国では『いくらです』『ありがとうございます』くらいしか言わなくて、お客さんもそんなに来ないから、ほとんど座ってスマホを見てました(笑)」

この日は5回目の研修で、後半には実際にレジに立っての業務にもチャレンジ。最初から領収書をくださいと言われたり、オークションサイトの発送サービスの対応をしたり、ハードルの高いお客が次々と訪れたものの、トレーナーを務めた上野敦子(うえの・あつこ)氏の的確なサポートもあり、大きなトラブルなく業務をこなすことが出来た。

研修後、ユンさんに話を聞くと「覚えたことを順番通りに思い出すのが難しくて、困ってしまいました」と苦笑いを浮かべたが、会話やレジの操作でつまづくことはなく、安心して見ていることが出来た。

研修後には項目ごとにA・B・Cの評価が書かれたカルテが渡されるが、ユンさんは軒並み高評価。おそらくこの記事が配信される頃には、都内のローソンで活躍していることだろう。

次に午後の研修を受けたのは、台湾人男性、オウ・ハクユウさん(27歳)。台湾の塾で日本語を勉強し、大阪の日本語学校で半年間の留学を経て、今年から東京の音楽専門学校でレコーディングについて学んでいる。

好きな音楽はヘヴィメタルで、好きな日本のバンドはX JAPAN。この日は研修初日で、しかも日本でアルバイトをするのは、これが初めて。なぜコンビニを選んだのだろうか。

「大阪にいたときの留学生の友達が、全員ローソンスタッフでバイトしてたんです。それにシフトが自由に決められると聞いたので、自分もやろうと思いました。日本語の勉強になったらいいなと思います。日本人や他の外国人の友達も作りたいです」

最初の研修では給与や税金、労働契約書などについて説明を受ける。続いて挨拶のルールや身だしなみの規定、SNSの禁止事項など、基本的な心構えについて教えられる。その後、消耗品についてなど、実際の業務に必要な知識を覚えていく。

はじめは明らかに緊張していたオウさんだったが、上野氏が「うちの娘はね......」など日常会話を挟んで場を和ませていくうちに、少しずつ笑みもこぼれるようになった。

それにしても覚えることが多い――。たとえば袋の種類。白い袋はSSSからLまで5種類あり、弁当などを入れる茶色い袋は3種類。さらに生理用品などを入れる黒い袋、酒瓶などを入れる緑の袋もあり、全部で10種類もある。

箸やスプーンなどの消耗品は、もっと大変だ。種類の多さもさることながら、スープ類はスプーンが基本だが味噌汁は箸、丼物もスプーンが基本だが牛丼は箸といった例外もある。日本人なら感覚で理解できるかもしれないが、外国人にとっては簡単なことではないだろう。

その後も研修は続き、後半には店に出て「前陳」(商品が売れた後、奥の商品を手前に移動させる「前進立体陳列」の略称)を学び、次回の研修に備えてレジの操作も少しだけ体験。あっという間に3時間の研修は終了した。

オウさんに感想を尋ねると「難しいと思います......」とポツリ。とはいえ自分もお客としてコンビニを日々利用しているだけに、特に驚いたことはなかったようで、むしろ「敬語を正しく使えるか心配です」と言葉のほうに不安を感じていた。

実際、働き始めの時期はオウさんのように言葉に不安を抱える店員が多いそうだ。そのため中江氏は「とにかく自信を持ってもらいたい」と話す。

「言葉に不安があると、どうしても声が小さくなっちゃうんですよね。でも、日本人だって正確な日本語を使えている人は、なかなかいないじゃないですか。だから『自分の国では100点満点の言葉をしゃべっているの?』『ちゃんと通じているから大丈夫だよ』と言って、少しでも自信を持って接客してもらえるように心がけています」

それでも店員デビューして間もない時期に、客から難しい質問をされて、一気に自信を失ってしまうケースもあるという。逆に我々日本人が、外国人店員にとって接しやすい客になる方法はないのだろうか。中江氏にちょっとしたコツを教えてもらった。

「もし外国人店員がこちらの話したことを理解していなかったら、違う言葉で言い換えるようにしています。例えば『これ捨てといて』と言って伝わらなかったら、『ゴミ箱に入れて』と言うとか。

でも、お客様のなかには、何度も『これ捨てて』と繰り返す方もいらっしゃいます。そうすると店員も、その度に聞き返してしまい、そのうちお客様が怒ってトラブルになるケースもあるんです」

ローソンスタッフでは、わからないことがあったときは、すぐに店長を呼ぶように教育しているそうだが、もっと客側からも歩み寄る必要があるのではないだろうか。乱暴な言葉を使っていないか、紛らわしい言葉を使っていないか、思い返してみてほしい。

特に「大丈夫です」「結構です」といった言葉は、日本人でも誤解してしまいがちだ。自分も「ポイントカードはお持ちですか?」と言われた際に「大丈夫です」と答えていたことを思い出し、反省した。

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厚生労働省によると、2018年10月末現在の外国人労働者数は約146万人。前年から約18万人増加しており、過去最高を更新している。コンビニに限らず、外国人と接する機会は、今後ますます増えると予想される。

外国人と接することなく日常生活を送ることが難しくなっている現在、彼らが仕事をしやすいように接したほうが、お互いに気持ちよく過ごせるというもの。多くの人が日々利用するコンビニが思いやりを持つきっかけになれば、社会全体にも優しさが広がっていくのではないだろうか。

取材・文/田中 宏 撮影/五十嵐和博

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