えちごトキめき鉄道新社長・鳥塚亮「鉄道はどうやっても赤字。でも地域を黒字にすることはできる」

えちごトキめき鉄道新社長・鳥塚亮「鉄道はどうやっても赤字。でも地域を黒字にすることはできる」

鉄道業界の名物社長・鳥塚亮氏が新たなチャレンジ! 今度の舞台は新潟だ!

ユニークなアイデアを次々と打ち出して、乗客数が大幅アップ。赤字に苦しんでいた千葉のいすみ鉄道を救った男・鳥塚亮(とりづか・あきら)氏が、9月より新潟のえちごトキめき鉄道社長に就任!

開業以来、厳しい状況が続く鉄道会社で今度は何をするつもりか? 週プレ・鉄オタ記者が直撃!

■トキ鉄はなんでもあります

――いすみ鉄道(千葉県夷隅[いすみ]郡大多喜町)の社長を昨年6月に辞めて、自身が設立したNPO法人「おいしいローカル線をつくる会」の活動をしていると思ったら、まさかえちごトキめき鉄道(新潟県上越市。以下トキ鉄)の社長になるとは! なぜやろうと思ったのですか?

鳥塚 いろいろな鉄道会社の手伝いをしているうちに、並行在来線(新幹線と近いルートを走る在来線)の問題に気づいたんです。今は新たに新幹線が開通すると、民間会社であるJRがふたつの路線を維持するのは負担が大きいということで、並行する在来線の経営は地元の第三セクターに委ねることができるんです。

地元はJRに代わってローカル線を走らせなきゃいけないんですけど、長距離を乗ってくれる上顧客は新幹線に取られ、地域輸送だけでどうやっていくのか? 

また電化されて50年近くたって、どこも設備更新の時期を迎えている。大変なことになりそうだなと。そのタイミングでたまたまトキ鉄の社長の公募があって、チャレンジしてみたいなと。

――トキ鉄はほかの並行在来線と違って県庁所在地を通りません。大きな需要はないし、沿線は車社会。昼間の列車は1両か2両で車内もガラガラ。勝算はありますか?

鳥塚 ここは観光資源が豊富です。妙高高原はスキーリゾートだし、高田は城下町。日本海の夕日、そして糸魚川(いといがわ)ではヒスイが採れる。前のいすみ鉄道では「何もないがある」なんてキャッチコピーでしたが、ここはなんでもある。ないのはお金だけです(苦笑)。

――それも悲しいです!

鳥塚 でも、いすみ鉄道でやっていた手法が通じるかなと。観光資源を地域の人と掘り起こしていけば、黒字は難しいですけど、地域にとって必要な存在になれると思います。

――やっぱり鉄道だけで黒字は厳しいですか。

鳥塚 そうですね。例えば東急電鉄は鉄道事業の営業収益が全体の2割以下です。3年前に上場したJR九州も鉄道事業はずっと赤字。じゃあ何で儲けているかといったら、不動産だったり流通だったり別の事業なんです。でも第三セクターの鉄道は、民業圧迫になるので鉄道関連以外の事業はできない。

――それはもう無理ゲーじゃないですか。

鳥塚 だから考え方を変えてみる。儲かる部分はウチでなく地域がやればいい。いすみ鉄道では駅のホームで弁当を売ってもらったり、居酒屋をやってもらったり、鉄道を使って地域の人といろいろやりました。

鉄道があることで地域が潤う仕組みをつくっていく。地域が鉄道を中心としたひとつの会社のようなもの。鉄道が赤字でも地域全体が黒字になればいいんです。

――そうしていくためにはまず、地域の人にとって鉄道が自分たちのものという意識が必要だと思うんです。いすみ鉄道は国鉄の時代に廃線にされそうになり、地元が立ち上がって経営を始めたから、自分たちの鉄道という意識が高い。

でもトキ鉄は北陸新幹線の開通で、JRから押しつけられたような形。地域の人に自分たちの鉄道って意識がどれだけあるのかなと。

鳥塚 私も最初はどうかと思ったんです。でも来てみたらトキ鉄は自分たちの鉄道という意識が高かった。例えば二本木駅は上越市が整備して、運営を地元住民がやっています。糸魚川駅にはちょっとした鉄道博物館があって、そこにいすみ鉄道にもあるキハ52が保存されている。

直江津は新潟県の鉄道発祥の地。学校の授業でそのことを教えていたり、元国鉄職員があちこちにいたり。このエリアは鉄道と関わりのある人が多い。これは強みだし、いろいろ面白いことができそうですよね。

■客車列車はここなら走れます

――いすみ鉄道は社員が二十数人の小さな会社でしたが、トキ鉄は10倍以上。意思疎通はうまくできそうですか?

鳥塚 以前は目の前に社員がほぼ全員いましたが、今は本社は3階建てだし、運転士や整備士のいる場所へは車で移動しないといけない。各駅を回るにも1日がかり。でもそれぞれが専門家なので、私が口を出す必要はないかなと。今のままで鉄道は安全に運行できてるし。

お願いしたいのはプラスアルファの部分。どうやったらお客さんを集められるか。沿線人口が減るなかで、何をしたら来てもらえるか考えてくださいと。私の使命もそこだと思ってます。

――鳥塚社長といえば、あっと驚くニュースを提供して、いすみ鉄道を全国区にしました。そのなかでも特に話題となった研修費用700万円を自腹で払う運転士。今回もやる予定はありますか?

鳥塚 あれは会社にお金がなくての苦肉の策でしたからね......。今回はちゃんと予算化されてるので、やらなくて大丈夫です。ただ会社の年齢構成を考えると、JRから出向しているベテランと、プロパーで採用した若い人しかいないので40代が少ない。何かしなきゃと思っています。

――そのときは応募します! 前回、いすみ鉄道の社長だったときに客車列車(電車や気動車と違い自走できず、機関車に引っ張ってもらう必要がある)を走らせたいという話で盛り上がりましたが、トキ鉄なら可能じゃないですか?

鳥塚 できるかもしれないですね! ここは普段JR貨物が貨物列車を走らせているから、線路はちゃんと整備されてるし、機関車もたくさんある。今、客車列車は日本でほとんど走っていないので、鉄道ファンの間では大人気。

私も8月に津軽鉄道(青森)で客車列車のツアーを企画して、ひとり1万8000円でしたが、すぐ売り切れました。

――あれって、実は深夜に2往復させただけなんですよね。普通運賃なら3000円程度ですが、貴重な体験がしたくて各地から鉄オタがたくさん集まりました。

鳥塚 ディーゼルカーが1両2億円ぐらいかかるのに対して、客車は1両5000万円ぐらいで造れます。県内には新潟トランシスといういい車両メーカーがある。客車の牽引(けんいん)はJR貨物に頼めばいい。無理な話じゃないですよ。

――いっそのこと、しなの鉄道(長野)から、えちごトキめき鉄道、あいの風とやま鉄道(富山)、IRいしかわ鉄道(石川)と並行在来線を一気に結ぶ列車があったら、すごく話題になりますよ!

鳥塚 各社で1両ずつ各県の魅力を詰め込んだ客車を造って競い合うのも楽しそうですね。行きは食事をしながら、いろいろな駅に停車して7時間ぐらいかけてゆっくり走る。帰りは夜行列車として戻ってくるとか。

――鉄オタも一般の人も楽しめそうですね。これ、ぜひ実現させてください!

取材・文・撮影/関根弘康

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