小島慶子の今週の気になるコト――国民祭典の異様な「万歳48唱」。不気味だった「間に誰かいる」感

小島慶子の今週の気になるコト――国民祭典の異様な「万歳48唱」。不気味だった「間に誰かいる」感

あの48唱は普通じゃなかったと思います

11月9日、東京・皇居前広場で開かれた天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」で異例の「万歳48唱」が。来場者の間には戸惑いの声が上がった。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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天皇陛下の即位を祝う国民式典で話題になった万歳48唱。スピーカーを通じて繰り返し「バンザーイ」と叫ぶ影ナレの有無を言わせぬ声色。嵐目当てで参列した人々を帰らせまいとする工夫なのか、参列者に何度も何度も万歳を促すアナウンスは動員感が半端なく、異様な光景でした。

あの声色からは、両陛下へのお祝いや親しみの気持ちは感じませんでした。式典を運営している奉祝委員会の男性スタッフの声だそうですが、妙にハイトーンで一本調子なバンザイ連呼に参列者が旗を振って唱和する様は、まるで戦時中のよう。現場では失笑や戸惑いの声が漏れたと報じられネットでも「怖い」と話題になりました。締めの万歳48唱でお祝いムードが一気に崇拝ムードに塗り替えられて、興ざめした人も多かったのでは。

両陛下が退出されるときに参列者が親しみの気持ちから自然に旗を振って歓声を上げるならわかるけれど、音楽に合わせて退出される両陛下と参列者の間に割って入るようなエンドレスのバンザイアナウンスは、そうした交流の場面も台なしにしたように感じました。天皇が国民の統合の象徴というなら、即位を祝う場では人々の間から自然に湧き上がる両陛下への親近感が大切にされなければならないはず。

式典で嵐が歌った、奉祝曲『Ray of Water』の第三楽章『Journey to Harmony』の作詞は人気脚本家の岡田惠和(よしかず)さんだそうですが、これも聞いてびっくり。『君が代』の現代版かと思いました。

最後の「大丈夫♪」の繰り返しにはかえって不安が増すばかり。「人の世は変わっても自然は変わらないよ、大丈夫大丈夫♪」と言われても、戦前に後戻りされたのではたまらないよなとむしろ警戒してしまいました。

あの国民式典で強く感じたのは「間に誰かいる」という感覚。天皇への親しみでもなく国民への親しみでもない、別のもっと冷たくどろっとしたものを抱えた存在が、国民と天皇との間に立ちふさがっている気配を濃厚に感じたのです。

お茶の間で見慣れている人気司会者やアイドル歌手が、晴れの舞台で一生懸命丁寧に役目を果たしているのを見ると「あの人たちがやっているのだから安心だ。きっとこれが普通なのだな」と思ってしまうものなのかもしれません。天皇、皇后両陛下に対して敬意を示すことのどこが悪いの?と。でもやっぱりあの48唱は普通じゃなかったと思います。

嵐が歌い終わってざーっと人が引いてもいいじゃない。最後まで残って両陛下をお祝いしたいと思う人たちが、おのおの両陛下に声をかける温かい空気のなかでゆるく式典が終わるぐらいが、ちょうどいい距離感だと思うけどな。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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