息子や娘の結婚相手を探すために親同士が集合する、本人不在の婚活サービス「親親婚活パーティ」現場ルポ

息子や娘の結婚相手を探すために親同士が集合する「親親婚活パーティ」

3月某日、都内シティホテルのパーティ会場には50〜80代の男女、40名弱が集まっていた。皆、参加者名簿を熱心に眺め、気になった人に積極的に話しかける――だが、熟年婚活パーティではない。

これは独身の子供を持つ親同士が集まり、結婚相手を探す「親親(おやおや)婚活」なのだ。子供と二人三脚で婚活をする親もいれば、縁談相手を見つけても子供から突っぱねられる親も。わが子の幸せを願う親たちの思いが錯綜する現場では何が起きているのか? 取材した!

■開始前に名簿を見てお相手の目星をつける

盛り上がりが続く婚活業界だが、その行き着いた果て(?)ともいえる新たな婚活として「親親婚活」なるものが注目を集めているらしい。いったいどんな婚活なのか? 『[婚活ビジネス]急成長のカラクリ』(扶桑社新書)著者の有薗隼人(ありぞの・はやと)氏に話を聞いた。

「親親婚活とは、親が未婚の子供の代わりに婚活パーティに参加し、子のお見合い相手を探す代理婚活のことです」

親が代理で婚活!? 子供からしたらちょっとよけいなお世話な気もするけど......。

「確かに少子高齢化で親が過保護になっている時代背景はあります。ただ結婚は当人だけでは決められない問題。初めから親公認であれば、後から反対されることもなく、結婚への近道ととらえることもできますよ」(有薗氏)

なぜ注目を集めているの?

「安全性が高いからです。現在の婚活業界は、誰でも手軽に利用できる婚活用マッチングアプリが独走中。日本での利用者は1000万人以上ともいわれ、例えば『ペアーズ』や、『タップル誕生』など、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

しかしアプリをめぐるトラブルが後を絶たないのも事実。会ってみたらお金目当てで結婚の意思がなかった、美人局(つつもたせ)だったなど。しかし、いくらでも嘘をつけてしまうので、防ぎようがありません。

その点、親親婚活では親が間に入っているのでプロフィールを偽ることもありませんし、事前に相手の家族を見るから、身の上もわかる。アプリで起こっている詐欺的なトラブルは回避できます」(有薗氏)

親に代理で婚活させるなんてちょっと想像つかないけど、ウマくいくのか!? ということで、早速親親婚活の会場に行ってみた!

今回取材にご協力いただいたのは、「一般社団法人 良縁親の会」。2005年から親同士の婚活交流会事業を始め、全国で455回開催、延べ3万人以上の参加者実績を持つ老舗親親婚活業者だ。記者は3月某日、都内シティホテルで開かれた交流会へ向かった。

記者「受け付け開始30分前ですが、会場前には参加者らしき方がすでに10名ほど。男性はスーツの方もいれば普段着の方も。女性はスカート姿の方が多く、割と落ち着いた印象です」

参加者は子供の顔写真付き身上書を複数枚持参。事前に簡単な参加者名簿が自宅に郵送されているので、この名簿を頼りに、身上書を交換したい人と交流するシステムだ。

記者「名簿を入手しましたが、参加者のお子さんは30代中盤の方が多く、わずかに20代や50代の方も。記載されているのは年齢、正社員か契約社員かなどのざっくりとした職業、家族構成、居住・勤務する市区町村、親が見た性格など、最低限の情報のみ。これだけでお相手を決めるのは難しそう......」

会場に到着した親たちは事前に届いた参加者名簿を改めてチェックし、このパーティでアプローチするお相手を入念に選ぶ

名簿には、一般的に結婚相手を選ぶ上で重要な条件となる容姿や勤務先といった情報はない。これらは身上書に記されているのだ。しかし、子供の身上書を交換できるのは、約1時間のアピールタイムのみ。全員と交流するわけにはいかないので、事前に交換相手の目星をつけなければならない。そのため開会前に名簿を読み込むことが必須となる。

受け付けを済ませると、1卓5〜7名座れる円卓へ移動。

記者「少々皮肉ですが、結婚披露宴を想起させる豪華さと広さがある会場です」

今回は定員80名に対し、息子側の参加者が24名、娘側が15名。新型コロナの影響で若干少なかったそうだ。通常時は定員ギリギリになったり、男女比が逆転する会もあるという。

■子の同意を取らずに参加する親も

開会前に参加者に話を聞いた。まずは初参加だという60代の母親、Aさん。

A「30代の息子は結婚願望が強く、親子二人三脚で婚活中。息子から要望があり参加しました」

息子さんとはかなりオープンに結婚の話をしているもよう。

A「事前に郵送された参加者名簿は息子自らチェックしており、お相手の条件もしっかり話し合っています」

数ある婚活のなかで、なぜ親親婚活を選んだのですか?

A「結婚相談所だと登録料や成婚料などで数十万円かかってしまうが、ここだと1回の参加費が1万3000円(会場により異なる)。親としても払いやすい価格なので、まずはここで出会えればと」

確かに結婚相談所への金銭的ハードルを解決する手段として使うにはとても良さそうだ。一方でこんな参加者も。60代父親のBさんは、

B「2回目の参加です。もう息子も37歳と適齢期を過ぎているので焦りますよ」

息子さんは参加に同意しているんですか?

B「一応参加は伝えていますが、『勝手にやってくれ』というスタンス。前回は身上書を見せてもお相手に会ってくれませんでした。息子は結婚願望が薄いように感じます」

同様の参加者はほかにもいた。70代父親のCさんいわく、

C「40代の兄弟ふたり分の身上書を持ってきました。とにかく孫見たさでもう何回参加したかわからない。息子にはアプリや相談所も勧めているけどまったく動いてくれないから親が動くしかないんです。持ち帰った身上書はまともに見てくれたことがない」

このように子供に婚活の意思がないまま参加する親も多いというが、親の努力が無駄にはならないのか? 「良縁親の会」専属結婚カウンセラーの宮越のり子氏が解説する。

「お子さんのなかには年齢や経歴で自分に自信がなくなっているだけで、本音では結婚したいと思っている方も多いんです。親からアクションを起こし、実際に身上書を見せることで結婚願望を呼び起こすきっかけになったこともあると聞いています」

パーティの開始時と終了時には、主催団体「良縁親の会」の脇坂代表理事による挨拶がある。代理婚活は大変だが、このスピーチに勇気づけられると語る親御さんも

良縁親の会代表から開会の挨拶(あいさつ)があり、いよいよ会がスタート。まず息子を持つ親のみ行動できるアピールタイムが35分設けられ、続いて娘を持つ親からアプローチする時間となる。交流中の親御さんは皆、物腰が柔らかい。先ほどのAさんも、お相手の親御さんに、

A「息子は休みが変則的ですが、大丈夫でしょうか?」

と、あらかじめウイークポイントを隠さずに会話をしている。

一方、上手にアピールできないのか手持ち無沙汰の方も。

「初参加ですが、50代の自分の息子よりひと回り若い娘さんを持つ親御さんが多く、一歩引いてしまいました」(80代父親)

前出のCさんも、

C「毎回緊張して話しかけるタイミングで躊躇(ちゅうちょ)してしまうんですよ......」

と、場の空気にタジタジ。

当然だが親の印象がそのまま子の印象に直結する場。親のコミュ力が試されてしまう。

積極的にさまざまなお相手に話しかける親御さんがいる一方で、話しかけるタイミングを失って所在なげにしている方もいた

各親からのアピールタイムが終わると、その後はコーヒーを飲みながら25分間のフリータイム。談笑の声も聞こえ、会場内はリラックスした雰囲気にAさんは、

A「すてきな方が多く、息子に見せるのが楽しみ! これでダメだったら意を決して結婚相談所ですね」

と、手応えがあったよう。

息子さんの結婚願望が薄いと語っていたBさんも、

B「結局3枚の身上書を交換できました。息子も気に入ってくれるんじゃないかと思います」

と、満足げ。なお、良縁親の会が主催する親親婚活パーティでは、身上書交換後は各自が連絡を取り合い、お見合いをする仕組みだ。実際の成婚率はどれくらいなのか? 良縁親の会事務局によると、

「正確な統計は取っていませんが、参加者の任意で、2019年までに900名から成婚のご連絡をいただいています。ただ複数回ご参加されている方もいるので、実際の成婚率は1割程度かと思われます」

とのことだった。

会を終えた参加者からはほかにもこんな声が。

「親元がしっかりされている方との出会いは貴重。3回ほど参加しているが、めげずに今後も続けたい」(60代母親)

「終わった後は疲れるし『これで最後にしよう』と思うのですが、会長が開会の挨拶で『子供は良い出会いを待っている』と言っていたのが胸に響いたので、引き続き頑張ろうと思います」(70代母親)

満足する親が多かった一方で、複数回参加している50代母親からはこんな声も上がった。

「親同士で縁談がまとまったのに、先方の親が子の承諾を取っていなかったようで、連絡を取ってみてもなしのつぶてということもままあります。なので無事に子供同士が会うまで油断はできませんね」

親親婚活は、未婚率が上昇し少子化に歯止めが利かない日本社会を救う救世主となるか!?

取材・文/菱山恵巳子 撮影/鈴木大喜

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