小島慶子の今週の気になるコト――コロナと風俗嬢。考えてもらいたい「彼女たちのその後」

女性の貧困は日本の大きな社会課題です

お笑い芸人の岡村隆史氏がラジオ番組で、「コロナが明けたら美人さんが風俗嬢やります」といった発言をし、物議を醸した。後日、岡村氏は番組内で謝罪。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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ナインティナイン岡村隆史さんの風俗嬢に関する発言が批判されてラジオで謝罪するに至りました。コロナ危機で困窮した女性が風俗に働きにくるのを楽しみにしているという類いの発言は、経済的弱者の性的搾取を娯楽として語ることですから、謝罪は当然でしょう。岡村さんには、今生活に困っている女性がたくさんいることを、知ってほしいです。

風俗は女性のセーフティネットではありません。楽して稼げる仕事といわれているけれど、性感染症の危険があり、長く続けられる仕事ではなく、一度長居してしまうと他業種への転職も難しい。

なかにはDV被害者や、辞めたいのに無理やり働かされている人もいます。精神を病む人も。その上、身バレを恐れて支援にもつながりにくい。本人の意思であるかどうかにかかわらず、構造的に見て、安全な労働環境とは言い難いのです。

働く人が大きなリスクを背負わなければならない構造を無視して、お金を払っているのだから問題ないだろうというのは都合が良すぎます。

自分は風俗嬢を助けているとか、尊敬しているとか感謝していると言うなら、サービスを買うだけではなくて、彼女たちが安全に働けるような環境づくりを考えてみてほしいです。彼女たちの「その後」を心配したことはあるでしょうか。支援団体に寄付をするとか、何か行動したことは?

日本は先進国の中で最も男女格差が大きく、女性は不安定な雇用や給与格差により、男性よりも弱い立場に置かれています。非正規雇用で収入が低い20代の女性、30代のシングルマザー、40代以降で親の介護を担う単身女性など、幅広い世代の女性にコロナ危機の前からギリギリの生活をしている人がいます。そんな女性たちが今、失業などで住む場所にも困るほどの打撃を受けています。

かつては家父長制の下、女性は父親の所有物から夫の所有物になるだけで、社会的に自立した存在とは認められていませんでした。今も日本では、多くの家庭で男性が世帯主。今回の政府の特別定額給付金も、個人ではなく世帯主に給付されると発表されました。手間を省くためという理由のようですが、家族は世帯主男性の庇護の下で生きていくものという前提がまだ生きていることをうかがわせます。 

女性は男に養ってもらえて、いざとなったら体を売れるから男より楽だと考える人もいるかもしれない。それは養い・買う側の発想です。経済的な自立の機会が得られず、誰かに依存するか、リスクの高い仕事に就くしかないのは、男性よりも選択肢が少ないということ。

困窮女性は、周囲の偏見や自分を責める気持ちから、困っても支援窓口に相談できない人も多いのです。女性の貧困は日本の大きな社会課題。これを機にぜひ目を向けてほしいです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。佐藤愛子との往復書簡集『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか 女二人の手紙のやりとり』(小学館)が好評発売中

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