小島慶子の今週の気になるコト――「医者は金持ち」は半世紀前の話? 人ごとではない地域医療の実態

他業種同様、公的資金で地域医療を支える必要があるでしょう

新型コロナウイルス蔓延の影響で「受診控え」が続出。地域の診療所を訪れる患者の数が激減し、存続の危機が叫ばれている。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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開業医といえば高級外車に乗って左うちわ、というのは半世紀前の話だそうです。知人の開業医から、今コロナ危機で経営難に瀕(ひん)している地域の診療所が続出していると聞きました。

なぜ、経営難か。コロナで患者は増えているのではないかと思われがちですが、実は感染を恐れて受診控えが起きており、幅広い診療科目で患者が大幅に減っているというのです。高額な自費診療でビジネスを展開しているクリニックでない限り、保険診療では価格は全国一律。

かつては開業医が製薬会社と直接取引をして薬を処方し、薬価の差額で利益を上げることができたそうですが、今は院外処方でその差益はなし。お医者さんは楽な商売ではないのだと。

知人の医師は渋谷区で内科を開業しているのですが、コロナ危機でやはり受診者が激減。通常の半数以下しか来ないそうです。渋谷区では家賃や人件費などの固定費を賄うには1日の受診者がおよそ30人が損益分岐点といいます。

もともと1日40人ほどの受診で回しているクリニックも珍しくなく、受診者が半減すれば固定費が賄えず、融資でつないでも長くは持たない。看護師や医療事務員を解雇せざるをえず、閉院したり、倒産を余儀なくされるところが出てくるのも時間の問題だと。

そうなると、コロナ危機が過ぎてみたら、いつも行っていた地域のクリニックがあちらもこちらもなくなっている!ということになりかねません。地域医療の砂漠化です。医療へのアクセスができなくなってしまう人がたくさん生まれてしまう。

かかりつけの内科も、歯医者さんも眼科も、行きつけの形成外科も潰れちゃった......ということになったら困りますよね。しかし今まさに、そのリスクが高まっているというのです。ここへきてそんな記事もちらほら出てきました。報道でこの問題が広く知られることを願います。

やはり他業種同様、公的資金で地域医療を支える必要があるでしょう。一度潰れてしまったクリニックを再建するには多額の資金が必要ですから、再建支援融資などの策も必要では。

また、気がかりなのは解雇された人員の再就職です。専門性の高い医師や看護師と違って、医療事務の人は賃金も高くなく、最初に人員整理の対象になる弱い立場にあるといいます。雇用促進のための公的な後押しも必要でしょう。

知人の医師の言葉で印象的だったのは「日本では赤ひげ先生が称賛されるように、医師たちは使命感が強く、お金の話では声を上げにくい。誰にも相談できずに苦しんでいる開業医がたくさんいることを知ってほしい」というものでした。

お医者さんはお金持ち、という古い先入観で危機に気づかずにいるうちに、地元のクリニックが全滅ともなりかねないのです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。佐藤愛子との往復書簡集『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか 女二人の手紙のやりとり』(小学館)が好評発売中

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