小島慶子の今週の気になるコト――「ネットの中傷は有名税」は、甘え

どうやら有名税とは、「人々に叩く自由を与える義務」のことを指すようです

著名人に対する誹謗中傷について議論が活性化している。先日「検察庁法改正案」の反対を表明した、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅのSNSにも誹謗中傷の嵐が。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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「有名人がネットで中傷されるのは、有名税」と割と気安く言う人がいるのだけど、それは有名人が、誰に、何を納める税なんでしょうか。

有名人は無名な人に比べて多くのお金や影響力を手にしているのだから、その分、社会にたくさん貢献するべきだという意味での有名税なら、人助けをするとか、寄付をたくさんすることがそれに当たりますよね。でも有名人が慈善活動をすると、偽善者とか売名行為と叩かれることも。

どうやら有名税とは、「人々に叩く自由を与える義務」のことを指すようです。お金ではなく、痛みや苦しみを世間さまにお納めしろと。「貴族は民から搾取したのだから斬首されて当然」に近い理屈です。

でも、有名人は民衆から富を搾り取ったのではありません。むしろ私生活の隅々までしゃぶられ、搾り取られて有名になるのですから。自分でわが身を差し出したのだから何をされても仕方がないだろ?というのは、それこそ暴君の発想です。

今はネットで、誰でも一夜にして有名になれてしまう時代。フォロワーやいいね!を集めることは富を手に入れることです。もしかしたら、有名税なるものを主張する人は、有名人に自分の目と時間と関心を「奪われた」と感じるのかもしれないですね。

でもそれは単に「見たい」という自分の欲望を抑えきれなかっただけ。ある人物が有名になり、広告などで巨額のお金を稼いでも、人々から何かを奪ったことにはなりません。

でもなかには「こいつを有名にしてやったのは自分なのに、なんでこんなに差がつくんだ」と被害感情を持つ人がいるのかも。それで、「不幸になれ! 有名税だろ!」で帳尻合わせをしようとする。ネガティブな感情の捌(は)け口になるのも人前に出る人間の務めだと信じている人もいるようだけど、そんな義務はありません。誹謗中傷をどう正当化しようと、それはいじめです。

私はエゴサをしないしSNSのコメントもフィルターをかけているので至って平和な生活なのですが、たまにクソリプを見つけると「この人は私に誰を重ねているのかな」と興味深く思います。お母さんが怖いのかなとか、女性に好かれないのかなとか。意見をはっきり言う女性に引け目を感じるのかなとか、働く女性が嫌いなのかなとか。代理処罰だと思うんですよね、クソリプって。

身近な誰かにぶつけたくてもぶつけられない感情を似たような属性の誰かにぶつけてる。甘えだと思います。知らない人の甘えに取り合う時間はないし、あなたの悪意には自分で思っているほどの影響力はないよと教える義理もないので無視。世界中でこういう甘えを許すのは、もうそろそろやめたらいいんじゃないかと思います。有名人は、寛大なママの身代わりじゃないのでね。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。佐藤愛子との往復書簡集『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか 女二人の手紙のやりとり』(小学館)が好評発売中

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