「コロナ不安差」みんなどうしてる? そもそも個人差はどうして生まれるのか、相手のコロナ不安レベルをさりげなく探る方法は?

不安感の個人差がトラブルの引き金にも......

繁華街や観光地がにぎわいを取り戻す一方、こうした風潮を警戒する人も多い。感染拡大が少し落ち着いてきた今、こうした不安感の個人差がトラブルの引き金にもなっている。

みんなはこの差をどう考え、どう対処しているのか? アンケートをもとに分析してみた。

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■コロナが落ち着いて不安差が拡大中

もやもやする日々が続いている......。

先月には、飛行機内でマスク着用を拒否した乗客が途中で降ろされたニュースがあり、まだまだコロナ警戒ムードは強いか、と思いきや、10月1日から始まった東京発着のGo To トラベルキャンペーンでは、開始わずか10日もたたないうちに当初の給付金額の予算上限に達するなど利用者が殺到。ここにきてコロナへの警戒レベルは人によってかなり個人差が出てきている印象だ。

マスク着用拒否のニュースに合わせて、20代、30代の男性200人に「公共交通機関でマスクを着けていない人が気になるか」聞いたところ、気になると答えた人は約6割。感染ピークの頃ならもっと多かったと思うけど、気にならない人との"不安差"は徐々に出ているのかも。

さらに「同僚や友人のコロナ対策が甘いと感じたことがある」と答えた人は45%と半数近い結果に。

「同僚から『そろそろ新入社員を交えた懇親会を開こう』と誘われたが、今の時期、後輩まで巻き込んでクラスターとなったらどう責任を取ろうと思っているのか」(東京都・25歳)

「自分は飲み会自粛中。SNSで友人が連日飲み歩いている様子をアップしていると、自分に関係ないことはわかっていてもイラッとする」(東京都・28歳)

親しき仲でさえコロナ不安差による分断が起きているのが現状だ。

■不安差が顕著に表れそうな現場の声

シルバーウイークの新宿・歌舞伎町の様子。一時は閑散としていた街に人通りも戻ってきた

では、具体的に"不安差トラブル"が起こりそうな現場で働く人たちの声をアンケートとともに見ていこう。

「警戒している行動」のアンケートで最も多かったのは「人の多い繁華街に行く」が41%、次いで「居酒屋に行く」が40%。九州地方を中心に東京の新橋にも店舗を持つ小規模居酒屋チェーンのオーナーに話を聞いた。

「同じ居酒屋でも立地によってお客さんの不安差は異なる印象です。飲み屋街のど真ん中にある新橋の店舗では不安レベルの高い方も多く、『あの卓が騒ぎすぎだ』とクレームを入れる人や、狭い店内なのに『隣には人を通すな』と言う人も。

一方、地方の店舗ではそういったクレームはほとんど入ってきません。感染が拡大していないからなのか、マスクをせずに入店する方がいても誰も気にしない。お互いにおおらかな印象です」

さまざまな対策を行なうカラオケボックス。個室のため客同士のトラブルはないという

さらに、「カラオケボックス」も37%の人がまだ警戒している。東京・池袋のカラオケボックス店長はこう語る。

「最近は、不安レベルの高い方はまず来店されません。最初はマスクをして歌っていても、盛り上がれば取る方がほとんどですし、酔ってから来店する方は最初からマスクを忘れている場合も。ただ、ほかの部屋がどんな対策をしているかは客同士わからないので、不安差によるクレームやトラブルは起きていません」

他人が見えない個室では、トラブルも少ないようだ。

■旅行先での不安差トラブルも!

シルバーウイークの羽田空港は行列ができるほどだった。Go Toで今後もこんな状態は続くかも

では、Go Toトラベルなどで推進されている国内旅行への不安はどうかというと「警戒している」と答えた人は33.5%という結果。この不安差にはホテルも悩まされている。関東近郊の高級リゾートホテル従業員によると。

「来館される方はきちんと対策をされている方がほとんどなので、不安レベルが低い一部のお客さまが目立ってしまいがちではあります。ロビーでマスクを着用していないお客さまがひとりいただけで、予約サイトの口コミに『従業員の教育がなっていない』と書かれてしまう始末。

また、ご家族内で不安差が異なる方はいちいちもめています。『夕朝食の時間』など、空いている時間優先の奥さまと、一番混む時間帯でも気にせず予約しようとするご主人さまが口論になっている場面にはよく遭遇します」

サウナではマットで席間隔調整されているところも多いが、それでもトラブルが起こることも ※写真はイメージです

続いて「銭湯」に警戒している人もおよそ25%と、まだ一定数いることが判明。東京都心の銭湯経営者は不満顔で語る。

「生活のルーティンになっている方も多いので、警戒しつつも来てくれる常連の方が増え、徐々に客足は戻りつつあります。ただ、お客さん同士にギスギス感が生まれて雰囲気は悪くなりました。

『サウナでちょっと汗をぬぐっただけで注意された』と訴えにきたお客さんもいて、『汗でコロナに感染するのか?』と問い詰められ、私も返答に困りました」

同じように客対応に悩んでいると語るのは東京都内で勤務するタクシー運転手。

「乗った瞬間に窓を全開にするお客さんもいれば、『寒いんだよ』とひとりごとをつぶやいて閉めるお客さんもいる。これから寒くなっていくなかで、換気対策をどうすべきか悩んでいます」

と冬に向けて、この不安差がどうなっていくのかを不安視していた。

■不安差は、環境や行動のクセで変わる

ここで少し話は変わるけど、気になるのはそもそもこうした"コロナ不安差"はなぜ生まれるのかということ。多くの企業で従業員のメンタルヘルスケアに当たってきた産業医の大室正志氏に話を聞いた。

「基本的に、この時期に不安を感じることは無理もないことですが、リスクに対して『心配しやすいかどうか』という性格はある程度遺伝子で決まっていると言われています。

ただ、コロナに関してはもともとの性格にプラスして"定量比較に慣れていない人"が必要以上に不安を感じやすい傾向にあります。

例えば、私の知人に肥満体なのにシュークリームを食べながらコロナが怖い怖いと言っている人がいますが、コロナ単体での死亡リスクデータと、肥満と生活習慣病が合併した場合の死亡リスクデータなどを客観的に分析できていない。自分に都合の悪いデータを取り入れず、いたずらにコロナを怖がっている状態です。

一方で、置かれている環境や立場にも大きく左右されます。基礎疾患がある方や高齢者・子供と同居している方、コロナリスクを統括する部長クラスの管理職などは、コロナにより生存や社会的立場が危ぶまれる可能性があるためどうしても不安も増大しやすい。周囲の理解も必要です」

ほかに、必要以上に不安を感じやすい人は?

「コロナや放射線のような『目に見えない不安』に過剰に反応する人は一定数います。食品添加物を毛嫌いするなど自然志向が強かったり、あるいは感受性が豊かな人に多い傾向があるのですが」

■ビジネスシーンでの不安差はどう探る?

以上のような要注意事項を踏まえて、特に気をつけたいのはビジネスシーン。仕事相手の不安レベルがわからず、困ったり悩んだりした経験がある人はおよそ4割もいた。

「取引先の同年代の相手に、何も考えず『この後メシでもどうです?』と誘うと返答に困っている様子で『ハッ』としました。後から聞くと、奥さんが妊娠中でコロナをかなり警戒しているようでした。やってしまった......」(東京都・36歳)

こんな失敗をしないために、雑談から相手のコロナ不安レベルを上手に見抜く方法はないのか? 『大人力検定』(文春文庫)の著者でコラムニストの石原壮一郎氏によると。

「単刀直入な質問はご法度。不安レベルが高い人にとっては『当たり前だろ』と不快に感じますし、低い人でも『非常識に思われたくない』という思いから、本心とは別に、とりあえず警戒姿勢を見せてしまいがちです。なので、相手の本音を上手に引き出すためには、答えやすい話題での事前の探りが必要です」

どんな探りが有効?

「『通勤スタイル』を聞いてみましょう。例えば『弊社は100%出社になったのですが、御社の出社状況はいかがですか?』と聞くことで、リモートメインか出社メインか、出社はあるが自主的に満員電車を避けた時間に通勤しているかなど、会話の流れのなかで相手の不安レベルを探ることができます」

また、こんな探りも。

「『身近に陽性者は出ましたか?』と聞く。もし出た場合『それは大変でしたね。今はどんな対策されています?』と自然と本音を引き出す流れをつくれます。また出ていない場合でも『もはやいつなるかわからない状況ですよね......』などと、どこまで対策をしているかという会話のフックになります」

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ゴルフや釣りなどアウトドア趣味のある仕事相手にはその話題きっかけにコロナの話も聞き出せそう

さらに相手によっては、こんな質問も有効。

「『ゴルフ、釣り、キャンプ』といったアウトドア系の趣味を持っている相手にはその話題を。どれも3密を避けた行動であるので、行っていたとしても堂々と答えやすい話題。場合によっては食事や宿泊も伴う趣味なので、相手がどこまでOKとしているかがはっきりとわかります」

初対面の仕事相手に対面での会議を申し込むかリモートでお願いするかの判断は悩みどころ

ほかにも、不安差を探りたいシーンとしてこんな声が。

「会議方法の提案について。取引先によっては『コロナが気になる』と対面会議をいやがる方もいれば『セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性が気になる』とリモート会議を却下されたことも。どちらを最初に提案すべきか毎回悩む」(東京都・27歳)

この場合、どう探るべきか。『損する気づかい 得する気づかい』(ダイヤモンド社)の著者で、人心掌握術に詳しいコラムニストの八嶋まなぶ氏からはこんな提案が。

「枕ことばとして『弊社のリスクポリシー』というキーワードを使いつつ、相手に意見を聞きましょう。『弊社のリスクポリシー的には面会訪問がOKになっているのですが、御社はいかがですか』などです。会社という大義名分を使えば、あなたの株が下がることもありませんし、相手が気を使いすぎることもないでしょう。

さらに、個人の本音を探りたい場合は、会社としての建前を聞いた後に『ちなみに個人的にはどう思いますか?』と聞くと、ワンクッション入ることで答えやすくなります」

"新しい気遣い"も増えて、何かと心が休まらない日々。今は少しでもコロナをめぐる状況がよくなることを祈ろう。

取材・文/菱山恵巳子 イラスト/福田嗣朗 写真/時事通信社 iStock

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