完成を東京五輪に合わせた“外環道ファースト”? 総工費1兆6千億円の問題だらけな大事業に小池都知事は無反応…

完成を東京五輪に合わせた“外環道ファースト”? 総工費1兆6千億円の問題だらけな大事業に小池都知事は無反応…

シールドマシン発進式で祝辞を述べる小池知事(東京都HP.より)

来たる7月2日に迫った都議会選を前に優勢とされる都民ファーストの会だが、前回記事「都民ラスト? 完成まで200年の『スーパー堤防』計画で“おしゃれに安全を確保”って…」に続き、小池都知事の都政に懸念を覚えざるを得ない問題はまだある。

今年2月19日、東京都世田谷区で「東京外かく環状自動車道」(以下、外環道)の「シールドマシン発進式」があった。シールドマシンとはトンネルを建設するための巨大掘削機のことだ。

式典会場の外では周辺住民が集結し、「勝手に掘るな!」「外環道ファースト?」などの抗議のプラカードが上がった。対して、会場内では小池都知事が「国際競争に勝ち抜き、我が国の成長を牽引するには、人と物のスムーズな流れの確保が重要。外環道の整備事業は、その中心となる取組みで、大いに期待をしています」と挨拶をした。

外環道とは、国が1966年に計画した千葉県、埼玉県、東京都を環状に貫く自動車道だが、練馬区にある大泉インターチェンジから南へ16キロの東名高速道路までをつなぐ部分が、大気汚染や騒音を懸念する住民の長年の反対運動を受け30年間も凍結されていた。

だが03年、当時の扇千景国土交通大臣が「未着工部分は大深度でやる」と表明。以後、施工を担うNEXCO東日本やNEXCO中日本が準備を進め、今年、いよいよ地下トンネルを掘削する用意が整った。完成予定はなぜか東京オリンピックのある2020年。総工費は1兆6千億円!

大深度とは、概ね地下40メートル以深の地下空間のことで、その使用には地上の地主との交渉も補償も不要となる。ところが、これはこれで様々な問題を生む。

まずひとつが、「シールドマシン」は地下水脈を断続的に断ち切るが、外環道のルートでは都の貴重な水資源である「三宝寺池」「善福寺池」「井の頭池」をすれすれで通るため、その枯渇の可能性があること。また、ルート上にある三鷹市、武蔵野市、調布市は飲み水の6割以上を地下水に依存しているため、その影響も懸念されている。

もうひとつが、排気ガスを4ヵ所の排気所から集中排出することでの局所的な大気汚染。また、大深度と言いながら、インターチェンジ周辺では地上部に出ることから、大深度ではない地域が4割強に及び、それらの地域で立ち退きを迫られたり、今後24時間続くかもしれない工事での騒音や車両通行に悩まされることになる。

数ヵ月前、東名ジャンクションの予定地で、江戸時代から続く農家のAさんが計画に反対しながらも立ち退いた。周囲から知人がひとり去りふたり去り、同居する母親が工事車両が走り回る環境に耐え切れなくなったからだという。

今、その周辺で都市農業を営むのは池田あすえさんの家族だけになった。池田さんは家屋の収用は免れるが、畑の5分の1が収用予定だという。25年前にここに嫁いで農業を始めてから徐々に外環道計画について知ったが、国の事業とはいえ、その許認可については都知事に権限があることを池田さんは重視している。

「実際、1967年から就任した美濃部亮吉知事は、住民が反対していると、この計画を凍結しました。それを復活させたのが石原慎太郎知事です。そして今、私たちの反対の声が小池さんには届いているのかはわかりません」

昨年、外環道計画に異を唱える市民団体「外環ネット」がこの問題についてのアンケートを都知事選の立候補者に送った。これに対し、小池候補(当時)は無回答。

さらにおかしなことには、高架での自動車走行を回避するための大深度計画だったのに都は15年、「外環ノ2」という名前で地上部での道路計画を策定。これにも都内の複数の市民団体から反対の声が上がっているが、小池知事は推進の立場だ。

今年2月13日、外環ノ2が通る武蔵野市の邑上守正市長は小池知事と対談、「外環ノ2計画は住民の合意が得られていない。現地を見てほしい」と要望し、小池知事は「検討する」と回答した。さらに2月28日の都議会では、畔上三和子議員(日本共産党)が小池知事と以下のやり取りを行っている。

畔上議員「都は、なくなるはずの地上部道路の計画を外環ノ2として推し進めました。地元住民や区市からは、約束が違うと厳しい批判が出されました。こうした経過をどう考えていますか。現地視察はいつ頃になるのでしょうか」

小池知事「外環ノ2について、様々な意見があることは承知をしており、都は沿線四区市の要望を踏まえて、地域住民の意見も広く聞きながら、整備のあり方などについて検討を進めてまいりました。今後も地元区市と連携をして、地域の様々な意見も聞きつつ、そのあり方を検討してまいります。現地視察については、状況を踏まえて判断をさせていただきます」

だが現在、市民団体が外環道計画の中止を求める10万人署名活動を展開しても、小池知事が現地視察をして地域住民と話し合いに臨む予定はない。

冒頭で先述した通り、2月19日のシールドマシン発進式では小池知事が祝辞を述べ、関係者によると、住民からの抗議のアピールは会場内にも届いたという。知事は反対住民の声を知っているはずだが、今のところ現地視察どころではないらしい。

自分たちの意見が反映されないままでの事業推進で、前出の池田さんに畑を譲る気はない。「最大の問題は民主的手続きを踏んでいないことです。だって発進式には泣く泣く土地を売った住民が招待もされていないし、そのお知らせすらなかったんです」

東京都議選は6月23日に告示されたが、市民団体「外環ネット」は、その少し前に都議選立候補予定者に外環計画についてのアンケート調査を実施した。都民ファーストの会の候補者には8人にアンケートを送ったが、回答があったのはわずかにひとり 、新人の鈴木邦和氏だけ。そこにはこう書かれていた。

「東京都では、一度決定した公共事業の計画が、前提条件や社会環境が変わった後も残り続けている事例が多くあります。不合理な計画は一旦立ち止まって見直すことが必要だと考えています」

だが、残り7人は揃って「無回答」――。これは小池知事の姿勢に合わせているのだろうか? 都民ファーストと言いながら、豊洲移転問題などのパフォーマンスばかりが目につき、住民の不安に寄り添う姿勢がいまだ見られないのが懸念される。

(取材・文・撮影/樫田秀樹)

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