「ダニは“神様の贈り物”。一度、食べてみましたが…」忌み嫌われる存在にダニ研究の第一人者が語る

「ダニは“神様の贈り物”。一度、食べてみましたが…」忌み嫌われる存在にダニ研究の第一人者が語る

フランス産のチーズ(ミモレット)の熟成を助けるチーズコナダニ

ただでさえ疎(うと)まれた存在なのに、ここ数年、ウイルス性の感染症を多数引き起こし、さらに評判を落としている“嫌われ虫”の代表格、ダニ。特に、最悪は死に至るSFTS(重症熱性血小板減少症候群)やダニ媒介性脳炎をもたらすマダニは“殺人ダニ”などと忌み嫌われる存在になっているが…。

「(ダニなんて地球上から消えればいいのにと思うのは)人間のエゴです」と話すのは、法政大学教授でダニ研究の第一人者、島野智之(さとし)氏。話を聞くと、「日本に生息する約2千種のダニのうち、血を吸うのは1%」「大半のダニは森などで静かに暮らす“平和主義者”」なんだとという(前回記事参照)。

さらに頬を緩ませながら、ダニの魅力を語り出す島野氏…。

島野 とっておきの話をしましょう。チーズがおいしいのはダニのおかげなんです。

―ん? どういうことですか?

島野 日本でも普通に売られているフランス原産のミモレットというチーズがあります。オレンジ色で堅く、カラスミのような香りと味がクセになるチーズですね。実はミモレットを作って熟成棚に置くと、最初はカビだらけになるんです。

職人がブラシを毎日かけてカビを落とすのですが、表面に発生したダニがカビの量を調節しチーズを熟成させているんです。24ヵ月たつと、最高のミモレットの完成です。フランスのチーズ職人は『ダニは神様の贈り物』と言ってました。

―で、ダニごと食べちゃう!?

島野 いえ、フランスではダニがついた状態でチーズが売られてますが、ダニがいる表面は削って食べます。ちなみに私は試しに一度、ダニとチーズを一緒に食べてみましたが、ほとんどダニの味はしませんでしたね。

―食べたんだ! ダニを…、

島野 はい。1匹じゃ味がわからないと思って、50匹くらい舌の上に乗せて。

―“ダニ愛”が半端ないっすね!? というか、人によっては異常と映るかも(笑)。

島野 自覚はあります。普段、こんなに全開モードでダニの話ができる機会なんてありませんから。国内のダニ博士が集う、年イチの『日本ダニ学会』くらいなもので…。

―確かに、ダニの話題って一般の人には敬遠されそうなイメージはあります(笑)

島野 おっしゃる通りで…。以前、所属していた大学の講義でダニの話を始めたとき、目の前の女子学生に全否定の顔をされたことは今でも忘れません。しかも、私はとっさに『まぁ、そんなダニの研究をしてる友達もいるんだけどね』と、ごまかしてしまった。

それ以来、『専門の研究分野は?』と聞かれても『微生物です』と答えたり、『ダニ』という言葉を口にするのを意識的に避ける癖がついてしまった。でも、私はやっぱりダニが好きなんです」

愛、ほとばしる島野氏の“ダニトーク”はこの後さらにヒートアップし…。

★完結編⇒“殺人マダニ”で忌み嫌われるダニの交尾の神秘──なぜそこにロマンチックなものを感じてしまうのか

(取材・文/興山英雄)

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