市川紗椰「何を隠そう、私はダジャレが大好きです。ダジャレがいつか世界を救う気がします」

(液)としっかり書くまじめさがたまらない

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、ダジャレについて語る。

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先日、久々に埼玉・大宮の鉄道博物館(鉄博)にお邪魔しました。もう当たり前になったアルコールも各所に設置されていましたが、「中消毒駅」と堂々と鉄博流の張り紙が。よく見ると、自信なさげに「中消毒駅(液)」と書かれており、「液」と「駅」をかけていることを丁寧に解説するまじめさ含め、たまらない光景でした。

何を隠そう、私はダジャレが大好きです。幼稚で寒いイメージもあるダジャレですが、私にとってダジャレは、平和の象徴。世界的パンデミックに打ち克つために、ダジャレを用いて少しでも人を和ませたいと工夫した鉄博に脱帽です。

ダジャレとオヤジギャグ。正式な分類基準はわかりませんが、あえて定義づけると、ダジャレは思いやりにあふれていると思います。オヤジギャグは場所や状況をわきまえず、思いついたら口にする自己中心的なもの。

相手の反応はどうでもよく、いやがっても畳みかけてくる人もいます。言葉遊び的なうまさも薄く、自分が目立ちたいだけのものをオヤジギャグにしましょう。

対してダジャレは場を和ませる目的で発します。バカ受けしなくても、張り詰めた空気の緊張感が少し解けたり、一瞬滑ってもその後に打ち解けるだろう、という計算のもとに送り出されます。

ダジャレを発する人には悪意がなく、自分を犠牲にしてでも相手を笑わせたい憎めない存在。誰かをいじって生まれる笑いではなく、誰も傷つかないダジャレ、好きです。

しょうもないダジャレも多いですが、切れ味ゼロの健やかなジョークに笑える心も大事。日頃から余裕がないとこんな純粋な笑いにクスっとしないので、ダジャレは言う側にも受け入れる側にもゆとりのある、平和なもの。年齢と共にダジャレが好きになるのは、年を重ねると、ちょっととしたことで笑顔になる大切さが身に染みるからかもしれません。

不意に襲ってくることもありますが、私は「ダジャレは脳のおならだ」と思っています。頭が回転して、意外な思考が発酵、そしてダジャレが発生。我慢するとよくないので、いいダジャレを思いついたときは言ってみましょう。TPOが違ったら、メモして私に送ってください。

そんなダジャレ、日本ではもともと、貴族や僧侶などの上流階級のたしなみだったそうです。和歌では「秋」と「飽き」などの同音異義の言葉をかけ合わせた「掛詞(かけことば)」は定番で、古典文学にも頻繁に出てきます。

さらに、鳥のふんが落ちてきたら「運がつく」と言ったり、いやな出来事を粋な言葉遊びでポジティブに切り替える文化もあります。なんて平和。

ちなみにアメリカもダジャレ好きが多く、ペットの毛づくろい用の商品「ファーミネーター」や、クリーニング屋さん「アイロン・メイデン」、フルーツ屋さん「ジョン・クーガー・メロンキャンプ」のような、ダジャレ固有名詞をよく覚えています。

ダジャレ大会なるものも開催されており、ラップのMCバトルさながらの雰囲気でダジャレを言い合います。このピースフルな8 mileを見て、最後まですごくダサいのか、すごくカッコいいのかわからなかったけど、ダジャレがいつか世界を救う気がしました。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。とっくに「イオン」に変わったのはわかっているけど、それでも地元の商業施設を「沢口ジャスコ(靖子)」と呼んでいる。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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