モーリー・ロバートソン×プチ鹿島――「ショーンK発言」と「前原質問」の真意

モーリー・ロバートソン×プチ鹿島――「ショーンK発言」と「前原質問」の真意

週プレ酒場で時事放談するモーリー・ロバートソン氏とプチ鹿島氏

各メディアに引っ張りだこの国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソン氏が、右からでも左からでもなく「ニュースを立体視する知性」を詰め込んだ最新刊『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』。

その発売を記念して、TVやラジオでお馴染みな切れ味抜群の時事芸人・プチ鹿島氏をゲストに招き、新宿・歌舞伎町の「週プレ酒場」で行なわれたトークライブの模様をお送りします。異様にかみ合う、ふたりのマシンガン時事放談!

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鹿島 モーリーさん、最近忙しそうですね。TVに出まくってるし、ネットニュースでも見ますよ。この前も関西のTV番組で『ユアタイム』についてディスったみたいなネット記事が出てましたね。

モーリー あれはですね…番組の構成上、そこに“舞台”が用意されていたので、ネタとして面白くなるようにやるしかないと思ってフルスロットルで話したんですよ。「ショーンKさんは英語が喋れないんですか」って聞かれたから、「喋れませんね」と確かに言いました。ただ、それだけじゃなく相当長い尺で話したんです。そうしたら、見事にそこだけが抜き出されて、それがネットニュースの見出しに(笑)。

鹿島 そりゃ、なりますよ(笑)。でも真相は違うと。

モーリー ネットニュースを見て騒いでいる人は、ほとんど元ネタ(の番組)を見ていないと思うんですけど、「死体蹴りはやめろ」みたいな批判まであって。ただ感情移入して適当に書かれた記事が拡散していくんですよ。「なぜモーリーは叩かれるのか」という記事まで作られて(笑)。

鹿島 まさにそれ、この本で書かれている「フェイクニュースができあがる構造」と同じじゃないですか。

モーリー そう。もう、すごい便乗の仕方をするわけです。ちなみに僕としては“愛あるいじり”のつもりだし、ショーンKさんには頑張ってもらいたいと思ってます。いじられる覚悟があるなら、もう1回出てきてほしいし、それをみんなも受け入れてほしい。セカンドチャンスを与える社会であってほしい。日本は潔癖だから難しいかもしれないけど。

鹿島 「リベラルとは、汚さやノイズが入ることを許容することである」ということも本に書いてますよね。日米のリベラルの違いも含めて。

モーリー アメリカでは1930年代、米共産党が「黒人であろうが女性であろうが平等に扱うべきだ」と、当時としてはめちゃくちゃ先鋭的な主張をしつつ、本気で共産革命を起こそうとしていました。それを徹底的に潰していたのが初期のFBIです。そして第二次世界大戦後、再び労働運動が盛んになると、共和党右派のジョセフ・マッカーシー上院議員が先導して“赤狩り”をやった。ここでアメリカにおける共産主義は完全に力を失いました。

ただ60年代に入ると、かつての活動家たちが徐々に公職追放を解かれ、主に東海岸の大学などで教職に就くようになって、次世代の若者に「理想」を説いた。そこで焚き付けられた若者たちが公民権運動、ベトナム反戦運動、黒人差別や女性差別の撤廃、ゲイライツ獲得…といった声を上げたんです。これが今につながるアメリカのリベラル。要は政治的な革命ではなく、アメリカ合衆国のシステムの中で社会をよくしたいという考えですね。

当時、出回ったスローガンは“The Personal is Political”、つまり「個人的なことが一番政治的である」。今の日本に無理やり置き換えるとすれば、例えば100円ショップやファストファッションばかりで買い物をすることは、賃金の低い国の人たちに富を流しているのではなく、むしろそういう国の労働者の人権を無視していることにつながるのだ…というような考え方、捉え方です。

鹿島 現状に不満があるなら、日常の中から変えていこうと。それに対して、日本のリベラルは観念的、理想的なものにとどまっていると書いていますよね。

モーリー 例えば今、日本が原発から完全に手を引いたら、いずれ粗悪なロシア産や中国産の原発がアフリカや中央アジアにたくさんできるわけです。それなら日本が関与し続けていたほうが、世界全体のエコロジーを考えたら、より責任のある選択かもしれない。それ、どっちがいいですかと。こういうチョイスを議論するのがアメリカ式のリベラルです。

鹿島 一方で小池百合子さんは、保守と言いながら「原発ゼロ」と言ったじゃないですか。あれはなんなんですか?

モーリー あれはポピュリズム。あの軽さに日本人が乗るかどうかに注目していました。もし希望の党が80議席、100議席といくようなら、日本も“トランプの国”になったんだな、と。殺処分ゼロとかもありましたよね。

鹿島 あと、花粉症ゼロね。あれがうまくいって、花粉症の最後のひとりになったら、もう生きられないんじゃないかと思いましたけどね(笑)。とにかく、リベラルがもっと現実的な土俵に乗れ、というのがモーリーさんの主張。

モーリー そうですね。立憲民主党にしても、あの党に投票した人は、僕の印象だと特に強いイデオロギーとか主義主張があったわけじゃない。

鹿島 筋を通しているとか、ブレてないとか、ですよね。

モーリー そうそう。それなら「日本のこころ」も全然ブレてない。

鹿島 確かに1ミリもブレてない(笑)。それに対して自民党は、よく「鵺のような」って言うけど、なんでもかんでも飲み込んでしまうような狡猾(こうかつ)さというか、ある意味でのしたたかさがある。民進党代表時代の前原誠司さんが「消費増税分を社会保障に回す」と言ったら、安倍首相も同じことを言うとか。

モーリー 前原さんには僕、『ユアタイム』の最後の出演回の時に質問したんですよね。「希望の党は基本的に保守色が濃い党だと思うが、日本のリベラルが消滅するリスクを犯していいのか?」と。

鹿島 見てました。あの質問、面白かったですね。その答えを聞きたかったんだけど…。

モーリー 「リベラルってなんですか?」とかはぐらかされて、そのまま終了。もうすぐCMに入ることがわかっていて、逃げたんですよ。あそこで「おっしゃる通りだが、この危ない橋を渡ってでも結集する必要がある。リベラル左翼に純化していったのが民主党・民進党の敗北だと思っている」とでもいえば、まあ怒る人はいるでしょうけど、彼こそ筋を通したと見る人も結構いたと思う。

鹿島 みんな気になってたんです。前原さんどう答えるかなと。あのとぼけ方で、よくも悪くも前原さんってああいう人なんだなということがわかったし。

モーリー TVのいいところは、そういうハードトークをぶつけて相手がはぐらかしたり、うろたえたり、場合によっては虚偽を言ったりしても、みんなにわかるわけじゃないですか。前原さんは実際、その直後には小池さんにはしごを外されたわけで。TV的にはあの時、僕がやりこめられたように見えたかもしれないけど。

◆後編⇒モーリー・ロバートソン×プチ鹿島――TVに出ることで「中から日本を変えていく」

■日本社会に必要な「ニュースを立体視する知性」と「タブーなき議論」を詰め込んだモーリー・ロバートソン氏の新刊『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』が好評発売中!

●モーリー・ロバートソン







国際ジャーナリスト、ミュージシャン。日米双方の教育を受けて育ち、米ハーバード大学で電子音楽を専攻。『スッキリ』(日テレ系)、『みんなのニュース 報道ランナー』(関テレ)、『正義のミカタ』(ABC)などレギュラー・準レギュラー出演多数。

●プチ鹿島







時事ネタと“見立て”が得意。オフィス北野所属。『荒川強啓デイ・キャッチ!』(TBSラジオ)、『火曜キックス』(YBSラジオ)ほかメディア出演、コラム執筆多数。著書に『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)、『教養としてのプロレス』(双葉文庫)など。

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