今なお不祥事が続発。10年間、まるで成長していない国と東電の「原発安全管理」

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、国と東電の「原発安全管理」について指摘する。

(この記事は、3月8日発売の『週刊プレイボーイ12号』に掲載されたものです)

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東日本大震災から10年が過ぎようとしているこのタイミングで、あらためて原子力行政への信頼を揺るがすような不祥事が続発している。

メルトダウンを起こした福島第一原発1号、2号機の共用排気筒(高さ120m)の中をてっぺんまで延びているはずのベント用配管が、根元でぷっつりと途切れていたことが原子力規制委員会の報告書で明らかになったのは今年1月のことだった。

ベント用配管は放射性物質を含む蒸気や水素ガスを外部に放出し、原子炉格納容器の圧力を下げる設備だ。しかし、その配管が根元で途切れていては排気筒内に水素ガスが充満し、激しい水素爆発を起こしかねない。

驚くのはその重大な不備を今日まで規制当局はおろか、東京電力でさえ気づかずにいたという事実だ。規制委員会、そして東電に、原発を審査・規制し、安全に運転する適格性があるのか。あらためて疑いは深まる。

今年6月に7号機の再稼働が予定されていた新潟県の柏崎刈羽原発でも信じられないようなトラブルが続いている。

昨年9月21日、東電社員が中央制御室に他人のIDカードで不正に出入りした事実を東電は原子力規制庁に報告した。中央制御室は原発の運転をコントロールする施設だけに、その入退室は厳密に管理されなくてはならない。他人のIDで入室するなど、あってはならないことだ。

しかし、この重大なセキュリティ違反を規制庁が規制委員長に報告したのは今年1月19日のことだった。不正入室が発覚した2日後の昨年9月23日に、規制委員会は柏崎刈羽原発を運転する東電の「適格性」を認め、その保安規定を了承する決定をしている。

規制庁が不正入室の報告を4ヵ月近くも放置したのは、東電の「適格性」審査をスムーズに進めるためではないか。だとしたらもはや隠蔽(いんぺい)だ。これでは原子力「規制庁」ではなく原子力「不正庁」ではないか。

安全対策工事の未完了も発覚した。原子炉建屋の配管止水工事、火災感知器設置工事の未完了など、再稼働の前提となる安全対策が行なわれていないことが明らかになり、東電は6月再稼働のスケジュールの白紙化に追い込まれた。

3・11を契機にそれまで原発の安全基準などを担当していた原子力安全・保安院は原子力規制庁に衣替えとなり、所管官庁も経産省から環境省へと変わった。

原発を推進したい経産省や電力会社からの独立性を高め、世界で最も厳しい安全基準を定めることで、二度と3・11のような深刻な原発事故を起こさないための措置とされた。

しかし、それから10年たってわかったことは、そうした一連の安全対策はかけ声にすぎず、実際にはいいかげんな原子力行政がまかり通っているという事実である。安全対策は進化どころか劣化の一途をたどっているとしか思えない。

菅政権が温室効果ガスの排出をゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を打ち出したことで、政財界ではCO2を排出しない原発の再稼働や新増設を求める声が高まっている。しかし、国や電力会社に原発を安全に運転する「適格性」はない。このままでは再び深刻な原発事故が起きかねない。

あれから10年もたったのに、この体たらく。いいかげん、気づくべきである。日本は原発と決別すべきなのだと。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。

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