ついに証明された「ABC予想」。その偉業を数学芸人が超解説!

数学の超難問である「ABC予想」とはーー? *写真はイメージです

数学の超難問が解明された! 「ABC予想」の証明に成功した京都大学・望月新一教授の論文が、国際的な数学専門誌『PRIMS(ピーリムス)』特別号(電子版)に3月4日に掲載され、世界的に注目されている。

いったいどうスゴいのか? 元高校数学教師で教育YouTuberでもある、"数学芸人"のタカタ先生に解説してもらった。

「ざっくり言うと、ABC予想は整数の和(足し算)と積(かけ算)に関する予想です。こういうと簡単に思えますが、30年以上証明されなかった超難問。望月教授の論文は700ページ以上あって、それを専門家がチェックするだけでも8年以上かかりました。今でも、ちゃんと理解できる人間は世界で10人くらいしかいないといわれています」

では中身の理解は早々に諦めることにして......、望月教授がスゴかったのはどんなところだった?

「ABC予想のキモとなる足し算とかけ算って、全然違うものですよね。例えば、小数同士であれば、足し算はしやすいけど、桁数が増えるとかけ算はけっこうめんどくさい。一方、分数であればかけ算はラクだけど、足し算は通分する手間がありますよね」

確かに、全然違いますね。

「でも、2+2+2から2×3ができたことを踏まえると、足し算とかけ算って、もともと親子のようなものなんですね。でも、それぞれ独自に成長を遂げた結果、うまく連携が取れなくなっていたのです。親子だったのに、別々の場所で暮らしていたら疎遠になっちゃった......みたいな。

そこで、望月教授は独自の『宇宙際(さい)タイヒミュラー理論』を構築しました。ここでいう宇宙というのは、『足し算』『かけ算』のように数学のある分野の体系だと思ってください。この理論によって、異なる宇宙をつなげることを可能にし、ABC予想の証明につなげたのです」

なんだかわからないけどスゴそう! 証明終了のニュースを聞いた感想は?

「ABC予想が解決されたと聞いたときには、心の底から『望月先生ありがとう!』と思いましたよ。たとえて言うなら、どこかにいる気はするけど生きているうちには見られないと思っていた未確認生物を、望月教授が『ハイ、どうぞ』と捕まえてきてくれたようなものですからね」

では、今回の証明は具体的にどう役に立つ?

「まず、『モーデル予想』など、ABC予想が正しいなら進展するとされる予想はいくつかあります。

ただ、宇宙際タイヒミュラー理論が最終的に何につながるかは、望月教授にもわからないでしょうね。もちろん望月教授は人類に貢献しようと考えているでしょうが、具体的に何かに役立てようと思って研究しているわけではないと思います。

例えば、ピタゴラスの定理はGPS衛星に応用されていますが、ピタゴラスはGPSのために研究していたわけじゃないですよね」

じゃあ、役に立つのはかなり先になるかもしれないと。

「はい。よくいわれているのが、生物学を突き詰めると化学に、化学は物理学に、そして物理学は最終的に数学に行き着く、ということ。つまり、今の最先端の数学は将来の物理学であり、もっと将来の化学や生物学なんです。だから、もしかすると数百年後には宇宙際タイヒミュラー理論が具体的な成果を生んでいるかもしれません」

気の遠くなるような話だが、望月教授をはじめとした数学者たちは、われわれとは異なる「宇宙」を見据えているのかもしれない。

取材・文/佐藤 喬

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