「近松巻セット」を関西の名物に 若手後継者同士がコラボ

「近松巻セット」を関西の名物に 若手後継者同士がコラボ

[写真]近松巻セット。左が大判きつねうどんで、右が近松巻

若手後継者同士が「伝統を生かした刷新」で意気投合

梅田と尼崎──近松門左衛門ゆかりの地ではぐくまれたふたつの名物食材がコラボ定食でお目見えし、話題を呼んでいる。ご当地の若手後継者同士が「伝統を生かした刷新」で意気投合。関西の食文化に新たな味わいを提案している。

近松巻は直径10センチで大判きつねは長さ16センチ

 このコラボ定食は、大阪・梅田のうどん王梅田本店が今月から試験販売を開始した「近松巻セット」。兵庫県尼崎市塚口駅前の松葉寿司が考案した特大巻き寿司「近松巻」と、うどん王の大判きつねうどんの組み合わせだ。近松巻は直径10センチ、大判きつねは長さ16センチ。華やかなジャンボサイズ・コラボは、どのようにして生まれたのか。

 近松巻は昭和初期創業の松葉寿司が今年、名物の特大巻き寿司に改良を加えて開発にこぎつけた。後継者候補の岡本博幸専務取締役らがコンビニのロールケーキ販売のように、特大巻き寿司をひと切れずつ提供する画期的販売方法を思い立つ。

 兵庫県が運営するクラウド・ファンディング方式で資金を調達して、最新鋭の瞬間冷凍技術を導入。寿司職人手作りの品質を保ったまま出荷し、より多くの顧客に提供できるシステムを構築した。

 一方、うどん王をチェーン展開するダイニング・クエスト(大阪市西成区)。会社設立は1994年だが、松葉寿司同様、昭和初期創業のお菓子メーカーをルーツに持つ。3代目世代の加藤肇悟副社長が軸となり、品質重視を堅持しつつ、外食業界の激戦に勝ち抜く活路の模索に打ち込む。今春、中小企業診断士の紹介で、共通の目標を持つ両社が出合った。

彩り豊かな近松巻が大阪うどんの総合力を強化

 加藤副社長が振り返る。「品質を重視するお互いの姿勢に意気投合。近松巻を試食したところ、とても美味しかったので、提携の交渉はスムーズに進みました」

 うどん王は「大阪うどん」の伝統を受け継ぐ。近松巻との相性はいいのだろうか。「麺に腰があり、のどごしの良さが持ち味のさぬきうどんに対して、当店の大阪うどんは麺、出汁、具材の三位一体の味わいで満足していただく。総合力で勝負です。近松巻はていねいに下ごしらえした多くの具材を使用しており、彩りも味わいも豊か。大阪うどんの世界をひと回り大きくする新たな魅力を持ち込んでくれました」(加藤副社長)

 近松巻セットを試食する。きつねうどんはやや太めの麺に適度な腰があり、大きなきつねは食べ応え十分。何よりも出汁が美味い。昆布とかつおのシンプルだが、深みのある出汁は飽きが来ない。

 近松巻は食べるのが惜しくなるほどの彩りで、秀麗な近松劇にも通じ合う。明石産のあなごを中心に、えび、かずのこ、とびっこ、湯葉、玉子焼などの具材をたっぷり盛り込む。寿司の甘酸っぱさと出汁のマッチングもいい。

梅田は近松ドラマの舞台で尼崎は近松の仕事場

 同店は地下街ホワイティうめだの一角にある。梅田は近松の代表作「曾根崎心中」などの舞台。悲劇のヒロインお初をまつるお初天神(露天神社)へも、同店から歩いて行ける。尼崎は近松が創作活動に励んだ場所として知られている。

「ともに関西に根付いて生きる両社のコラボのシンボルとして、近松ゆかりの梅田から近松巻セットを発信していくを決めました。試験販売で手応えをつかんだうえで、年内にも2店目で採用し、徐々にネットワークを広げていきたい」(加藤副社長)

 伝統を守りつつ、時流に沿う刷新から生まれたコラボ定食。つねに取材をしながら新たな劇作を手掛けていた近松が味わったら、どんな反応を示すだろうか。詳しくはダイニング・クエストの公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)