仕事を続けやすい環境が整った学校現場で女性管理職が育たない理由

仕事を続けやすい環境が整った学校現場で女性管理職が育たない理由

なぜ女性の管理職志願者が少ないのか

 女性活躍推進法が施行され、教育現場でも校長や教頭などの管理職に女性を登用するための計画や目標値などが定められている。元々女性の割合が多い教員の世界だが、管理職は男性が占めてきたケースが多かった。女性管理職の割合がうなぎのぼりの相模原市のような自治体がある一方、なかなか増えない自治体もある。

全国最低の山梨県「男性の志願者は多いのに…」

 山梨県は女性教員の管理職比率が6.6%と全国で最も低い。2008年は9.2%だったため、女性活躍推進の流れに逆行し、むしろ減っている状況だ。
 山梨県教委は、「50歳代の教員が多く、管理職登用試験自体の倍率が高い。そのなかで女性の志願者が少ないことが理由」と説明する。管理職になる手前の教務主任・学年主任などの職に女性教員が就くのも難しいという。一方、女性教員の割合自体は男性より多い。
 管理職試験を受けている女性の合格率は高く、担当者は「女性で受験をしてくれる方は優秀な人が多いのでもっと受験してほしいが、男性に遠慮している風土がないとは言い切れない」と話す。
 今年3月に作った女性教職員の活躍推進に向けた取り組み計画では、小中学校で2020年度までに10%、高校・特別支援学校で20%以上になることを目標にし、ロールモデルとなる先輩女性教員が歩んできたキャリアパスの事例の紹介などで女性教員の意欲向上を図るとしている。

下から2番目の北海道は「広すぎることがネックに」

 管理職比率が7.7%(2015年)と低い状況にある北海道教委は、北海道独自の理由として「広域性」を挙げる。教頭などの管理職になれば、自宅から通えない遠隔地へ異動しなければならない可能性もあり、単身赴任となることもある。道教委の調査でも管理職を志望しない理由として「勤務地等に関する希望が出しづらく、結果として広域異動となるため」という回答が72.6%に上った。
 一方、女性管理職へのアンケートでは約7割が「仕事に満足している」と答え、やりがいを感じている様子も伺える。道教委の担当者は「女性管理職が少なく、身近に感じられない現状がある。女性のミドルリーダーを集めて、女性管理職のやりがいなどを伝えられる機会を増やしたい」と話す。また、今年度からは女性管理職の割合を2020年度までに15%とする目標を掲げ、勤務地への配慮を行っていくことなどを定めている。

 文部科学省の初等中等教育企画課教育公務員係は「女性管理職比率は、少しずつ伸びているが、各県の事情は異なり地域差がある。人員の配置は各自治体に任されているので文科省が直接できることは少ないが、中堅教員に対する研修などで他県の女性管理職登用の好例を共有するなどして、地域差を埋めるよう努力していきたい」と話す。

女性管理職が増える組織と増えない組織の違いとは

 取材して感じたのは、まず女性管理職が増えるためには、候補者の母数が必要だということだ。教員は育児休暇も3年認められており、代わりの教員の補充もあるなど出産を経ても続けやすい環境が整っている。そこからさらに、管理職候補者になる「ミドルリーダー」を育てられるかが鍵になる。山梨県のように女性自体は多くても、ミドルリーダーになる女性が少ないと、登用率の低迷につながってしまう。
 管理職になることで引っ越しを伴う転勤や単身赴任が生じるかどうかも大きい。家庭生活の両立が図れる条件をなるべく整えることは登用率を上げるためには必須だろう。相模原市は広域な自治体ではないため、転勤になることはなく、有利な条件が元々整っている。
 ただ、最も重要なのは「男女の別と能力を切り分けて考える」ことだろう。女性管理職比率が36.2%に上る相模原市の場合、当事者が口々に「男だから、女だからと考えることがない」と話した。女性教員を集めた研修なども行っていない。普段の業務から能力重視の人事異動を貫いているからこそ登用が増えたのだと感じた。これは今の「女性活躍推進」の風潮の中で、無理矢理女性を押し上げるといったこととは対極にある。相模原市教委の登用方針や制度の運用方法については、民間組織でも学べる部分があると感じた。
動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=noMhhDax9O8