地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ── 日野市役所「選之介弁当」

地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ── 日野市役所「選之介弁当」

日野市観光協会のキャラクターの名前にちなんだ「選之介弁当」

 「社員食堂」がある会社のように、市役所や区役所といったお役所にも食堂がある。うどん・そばやカレーといった定番メニューに加えて、地元の食材や名物グルメが味わえる食堂も。そんな地元の味が楽しめる役所の食堂を探訪する当連載企画。第1回は、東京都日野市役所内の「市民食堂 ベル・ハート」で、日野産の野菜を味わってきた。職員のほか、一般の来所者も利用できる。

 レンガ色をした日野市役所庁舎。玄関から1階に入り、住民票申請などの窓口を左側に見ながら通りすぎると、食品サンプルのショーケースと食堂の看板が見えてきた。「市民食堂 ベル・ハート」は、市が地元の民間の食堂運営会社「ベル・ハート」に委託している。

 ショーケースにはさまざまな品目が並ぶが、お目当ては日野市産の野菜を使ったメニュー。ベル・ハートで営業推進を担当する木村幸予さんから、この日は同市観光協会のキャラクターの名前にちなんだ「選之介弁当」に日野市産のミニトマトと大葉が使われていると聞き、560円で食券を購入する。

 窓口で待つこと1分弱。出てきた弁当は、ショーケースで見た通り、白いご飯とさまざまなおかずが、四角い箱の中にところ狭しと収められていた。その横には味噌汁もある。

 まずは箱の左上、カニしゅうまいの横にあるミニトマトに目をつけ、口に入れる。噛み締めた途端、甘くて少々酸みのある果汁が口の中に拡散する。以前、取材先の農家で味わったもぎたてのトマトと同じく野性的な味わいと太陽のエネルギーが感じられた。露地栽培の野菜だろうか。

 おそるおそる木村さんに確認すると、たしかに露地ものですと教えてくれた。思い込みではなかったとホッとしながら、今度は、刻んだ大葉が上に乗ったヒレカツの卵とじに箸をつける。控えめだがさわやかな大葉の香りが、ほどよい厚さのヒレカツの味わいを好アシスト。今度、家でもヒレカツに大葉を乗せてみよう。

 イカとパプリカのごま塩炒めやカニしゅうまい、野菜の棒餃子、キュウリとワカメの酢の物、キャベツの千切り、白米、お新香そして味噌汁を次から次へと味わい、完食。結構なボリュームだ。

 「女性には量が多いかな、とも思いますが、野菜の味がおいしくて新鮮です」と木村さん。人気メニューだという。毎日60食ほど用意するが、午後1時前までにはたいてい売り切れるのだとか。この日は、早くも午前11時30分過ぎに完売していた。

 食堂で日野市産野菜を使いはじめたのは、4〜5年前。日野で生まれ、今も日野で事業を展開する同社社長と地元農家とのつながりや、社長が関わる市の食育関連の活動をきっかけに、市内の野菜を取り扱うようになったという。

 野菜は、市内の農家数件のほか、日野産野菜の販売などを行う日野市立ファーマーズセンターから仕入れる。日野市産業スポーツ部都市農業振興課農産係の戸塚一三さんによると、日野の野菜生産は少量多品種の傾向があり、市内ではジャガイモや小松菜、枝豆、トウガラシ、にんじん、さつまいも、里芋、かぼちゃ、ナスなど、多彩な顔ぶれの野菜が栽培されている。市としても、農家への支援や都市農業保全の観点から、食堂での日野産野菜の使用を歓迎する。

 店内の席数は約100席、喫茶コーナーもある。1日の利用客数は300〜350人ほどで、毎日のように食べにくる常連も。別の席で選之介弁当を食べていた市内在住の小林正男さん(78)と妻の喜美乃さん(74)も常連客だ。喜美乃さんは、選之介弁当の日野産野菜について、「とにかく新鮮で生きが良い。スーパーの野菜とは全然違う」ときっぱり。正男さんも「新鮮でいつもおいしい」と笑顔で話していた。

 ベル・ハートは平日午前10時〜午後5時営業で、定休日は土日祝日。もより駅のJR日野駅から日野市役所へは徒歩15分だが、途中の坂道を登りたくない場合は、駅のロータリーから京王バス「日02」系統の日野市役所経由「高幡不動駅行き」に乗り、「日野市役所」バス停で下車する方法もある。

(取材・文:具志堅浩二)