地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ── 東村山市役所「黒焼きそば」

地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ── 東村山市役所「黒焼きそば」

東村山市役所で提供される「黒焼きそば」

 「社員食堂」がある会社のように、市役所や区役所といったお役所にも食堂がある。うどん・そばやカレーといった定番メニューに加えて、地元の食材や名物グルメが味わえる食堂も。そんな地元の味が楽しめる役所の食堂を探訪する当連載企画。第3回は、東京都東村山市役所内の食堂で、地元グルメの「黒焼きそば」を味わってきた。

 キャベツや豚肉など具材を炒める音とフライパンの発する金属音が聞こえる厨房の奥。リズミカルで手際の良いフライパンさばきを見ていると、しだいに期待感が高まってくる。

 東村山市役所の地下1階にある食堂で、出来上がりを待っているのは、本日お目当ての黒焼きそば(470円)だ。

 東村山市における黒焼きそばとは、市内にあるソース会社のポールスタアが販売する「東村山黒焼そばソース」を調味のメインに使った焼きそばを指す。このソースは、同社が地域の名物を作ろうと考えて開発した製品で、材料にイカスミが使われているため、一般的なソースよりも、仕上がりの黒い焼きそばが出来上がるという。

 ほどなくして、白い皿に乗せられた黒焼きそばが目の前にやってくる。麺やキャベツなどの具材には黒いつやがあり、横に添えられた真っ赤な紅しょうがとの色の対比が鮮やかだ。湯気とともにソースの匂いがただよい、食欲を刺激する。

 席につくと、まずは麺を箸にとり、口にほおばる。麺にからまるソースの味は、まろやかでくどさがない。普通のソース焼きそばよりもサッパリした味わいのように感じる。イカスミを使っているというが、あまりイカを感じさせる匂いはしない。ポールスタア広報課の村上美枝課長によると、何種類もの香辛料を加えて煮出す、という工程を繰り返して、イカスミ特有の生臭さを消しているという。

 麺とともに、キャベツや豚肉、モヤシ、ニンジン、ニラといった具材の食感も楽しい。時々、紅しょうがを混ぜて風味の変化を楽しむ。あっという間に皿が空いた。十分な満足感があるが、さっぱりした後味なので、もう1杯くらいはいけそうだった。

 食堂が黒焼きそばをメニューに加えたのは、平成21(2009)年。市の担当者によると、ポールスタアと市内の飲食店60数軒が黒焼きそばソースを使用したメニューのキャンペーンを企画した際に、「町おこしの一環として市でも黒焼きそばを提供して盛り上げよう、ということになり、食堂に依頼しました」という。

 それから7年、食堂では人気メニューに。食堂の運営会社である「レパスト」の寺村義則所長は、「黒焼きそばは1日平均10食は出ます。メニュー全体でも1日あたり170〜180食ですから、比率としてはかなり大きいですね。人気メニューのカレーが1日12〜13食ですから、カレーに匹敵する存在ともいえます」と評価する。

 「今や、黒焼きそばはご当地グルメとして定着しており、多くの人が知っています」と市の担当者は話す。市では、市内小中学校の給食メニューにも黒焼きそばを取り入れるなど、官民あげてこのご当地グルメを育んできた。

 黒焼きそばのような地元生まれの味覚について、市は「市民にとっては市への愛着心を生み出す効果が期待できるほか、市外の人が訪れる契機になるなど、産業の振興にもつながるので、市にとっては絶対に切り離せない存在」と説明する。市では、ほかにも多摩湖梨など地元の味のブランド化に取り組んでおり、第2、第3の黒焼きそば誕生に期待をかける。

 食堂は平日午前11時〜午後3時営業で、定休日は土日祝日。東村山市役所へは、西武新宿線「久米川駅」北口から徒歩約7分、同新宿線および同国分寺線「東村山駅」東口からだと徒歩約12分。

(取材・文:具志堅浩二)