水面下で蔓延しつつある液体大麻 常習者の身勝手な理屈

液体大麻の利用広まる 雑貨店で営業中は電子タバコ、閉店後は大麻に変え吸う人も

記事まとめ

  • 乾燥大麻より割安で「キマり方」が強いとして、液体大麻の利用者が増えているという
  • 電子タバコ用の道具を販売する雑貨店に集い、閉店後に液体大麻を吸う人たちも
  • オークションや、ネットの匿名化ソフトを使ってしか入れない掲示板で売買しているそう

水面下で蔓延しつつある液体大麻 常習者の身勝手な理屈

水面下で蔓延しつつある液体大麻 常習者の身勝手な理屈

乾燥大麻から液体大麻へ

 盗人にも三分の理ではないが、人間は誰しも、自分の行いを正当化せずにはいられない。大麻を利用する人たちも、まるで法律の方が間違っていると言わんばかりの理屈をつける。利用が広まっている理由について液体大麻常習者らの“いいわけ”を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

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 仕事も人間関係も破壊し、生活、ひいては人生が台無しになるにも関わらず、いったん常用しはじめるとやめられなくなる数々の違法な薬物。筆者はこれまで、そういった薬物の動向を追い続け、危険性を訴えてきた。ライフワークとも言える筆者の活動を知る人から、今後大きな社会問題にもなりかねない、液体大麻の愛好サークルの存在と、その実態に関する情報がもたらされた。知人が話すサークルの様子は、あまりに堂々としたものだった。証言を元に"再現"してみる──。

 南関東某市の雑貨店。営業終了の午後11時を回ったのに、店には続々と“客”がやってきた。

 店主の望月文雄(40代・仮名)は、閉店時間を過ぎて常連客だけになったところで、入り口のドアを閉め、鍵をかけてカーテンを引いた。客はそれぞれ、ポケットやバッグから「ヴェポライザー」と呼ばれる器具を取り出すと、口をつけ息を吸い込み、ブハーっと煙を吐く。

 客は全員が乾燥大麻の愛好者。乾燥大麻は我が国においては、大麻取締法で所持が厳しく禁じられている。なかには大麻所持で複数回検挙された人物もいるとのことだが、電子タバコブームによって、液体大麻へ強い関心を示した者が中心となり、その店に集うようになったという。「集い」は週に三~四回ほど。午前二時頃になると、その場で仮眠をとったり、家へ帰るなどして集いは終わる。集まる人たちは全員が社会人。家族がいて、持ち家を所有する人間もいる。

 望月が営むその雑貨店では、合法の電子タバコ用の道具は販売しているものの、液体大麻そのものは取り扱っていない。「常連になれば裏からこっそり出してくれるのでは?」というようなこともない。液体大麻は、客がおのおの持ち寄り、皆で分け合って吸っている。常連の一人である40代男性は、毎晩、午後八時頃に仕事を終えると店へ向かう。閉店時間までは「普通の電子タバコ」を吸い、閉店後に中身を液体大麻に変えて吸う。

「合法か違法かつったら……“今は”違法なんでしょうね。でも、アメリカ見てくださいよ。医療用大麻は合法でしょう。嗜好用大麻だって州によっては合法になってきている。日本はね、遅れてるんですよ。電子タバコ流行ってますよね。タバコより害が少ないっていうし、いろんなフレーバー(香り)があるから飽きないし、ニオわない。外ではストロベリーとかバニラとか、香りのいいものを吸ってます。夜はコレ(液体大麻)。四六時中吸ってるわけでもないし、仕事終わりに酒を飲むようなもん。中毒にならない分、酒よりマシなんじゃないすかね」(40代男性)

 大麻草を煮詰めて麻薬成分を抽出したものや、大麻草に強い熱を加えて陶酔成分だけ蒸留させ抽出したものなど、液体大麻の製法はいくつかあるようだが、いずれも加熱して蒸気を発生させ、それを吸い込んで使用する。加熱に電子タバコでも使われるヴェポライザーを使うのが、いまどきの流儀らしい。もちろん、たとえ液体であっても、日本の法律では所持が禁止されている。彼らは、どこで液体大麻を入手しているのか。

 集まっている店で入手ができるのかと、いうと、「電子タバコを扱っている店だから、警察からも目を付けられやすい」から販売は決してしないのだという。別の常連客は「ネットで買えますよ」と明かしてくれた。

「地域掲示板やオークションでも買えますし、ネットの匿名化ソフトを使ってしか入れない掲示板上で簡単に売買できる。単価は乾燥大麻より少し高いくらいですが、効き目が段違い(に高い)ので、少量でキマれる」

 大麻や覚せい剤などと同様に、非合法品は表での取引ができない分、売買価格も高価になりがちだ。だが液体大麻も決して安くはない。それでも愛用するのはなぜなのか。

「普通の草(乾燥大麻)も耐性が付く。だから、海外のブランド物の草(大麻)とかいろいろ試すんですけどね、大麻リキッドは本当に(効能が)強い。(大麻)仲間にもリキッドを勧めますけど、みんな普通の草よりいいって言う。これから超流行るでしょうけど、だんだん偽物も多くなってきている」(前出の常連客)

 使用量に対する金額としては、乾燥大麻より割安ということだ。特にヘビーなユーザーが「液体大麻」にハマる理由もそこで、とにかく「キマり方」が強いのは、乾燥大麻の陶酔成分が濃縮されているから。捜査当局はこの「効能の高さ」こそが危険であると指摘しているが、愛好者らの感覚は真逆。「よくキマる」ものこそ「良いもの」という認識だ。

 諸外国では合法、などと言っても、さらにそれが液体であっても大麻は大麻。日本では所持することが許されない代物だ。所持や使用について大変なリスクがあることも承知しているのだろうか。もし、液体大麻のために集まっているところへ警察がきたら、どうするつもりなのか常連客に質問した。

「警察が来たら? 急いで全部便所に流しちゃうよね(笑)。飲んじゃってもいいかも。大麻取締法ってワケわかんないのよ。所持はダメだけど、使用はいいの(※吸引そのものは罰則付きの禁止にはなっていない)。でも吸うためには手に持たないとダメじゃん? 人に大麻持ってもらって吸うのはいいのか? でも唇についちゃった時点で所持になんのか……。ま、どうでもいいんだけど……」

 違法薬物の常習者は誰もが、自分が罪を問われることはあり得ないという根拠のない自信にあふれている。筆者が問うた雑貨店店主も、常連客も同じだった。そして、彼らはリスクも承知、違法行為をやっている自覚もある。でもやめないし、そもそも法律がおかしいという自分勝手な理屈だ。

 とはいえ、彼らにやましい気持ちがないわけではない。後ろめたさを消すためなのか、液体大麻を吸うためのパイプ(ヴェポライザー)や周辺器具はデザイン性にも富んでおり実にファッショナブルだ。パイプを複数所有したり、自宅に並べる愛好者も多いが、違法薬物はいつも「ファッション性」を身にまとう。危険ドラッグを取材したときもそうだったが、所有感を満たすおしゃれな外装によって、使用者の罪悪感を消す作用もあるのかもしれない。

 諸外国がどうであれ、我が国では違法。中毒にならないなどと気軽に言うが、精神的な依存症を引き起こす危険性は決して低くない。そんな違法薬物を、あれこれ理由をつけて使用すること自体が、すでに「おかしい」と思わないといけないはずだが、彼らにそのような「当たり前」の思考はないのだ。

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