「まん防」三鷹駅南北問題 武蔵野市より感染者が多い三鷹市が適用外の不可解

「まん防」三鷹駅南北問題 武蔵野市より感染者が多い三鷹市が適用外の不可解

「まん延防止等重点措置」が適用された三鷹市の飲食店(時事通信フォト)

 東京、京都、沖縄の3都府県に「まん延防止等重点措置」が適用された4月12日、駅の南北で適用に差が出たJR三鷹駅周辺。メディアやネット上では「まん防南北問題」と話題になっているが、実態はどうなっているのか──。ジャーナリストの山田稔氏が現地を取材し、レポートする。

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 東京都以外の方にはピンとこないこの問題を簡単に説明したい。東京都内で「まん防」が適用されたのは、23区と八王子、立川、武蔵野、府中、調布、町田の6市である。適用当日、4月12日時点の6市の感染者の累計は次の通りだ。

八王子市/2965人(前日比+17人)
立川市/999人(同+2人)
武蔵野市/990人(同+1人)
府中市/1380人(同+1人)
調布市/1538人(同+3人)
町田市/2055人(同+1人)

 ちなみに23区は新宿区の7191人が最多で、678人の千代田区が最少だ。大半が2000人以上となっている。

 問題のJR中央線三鷹駅は、北口が武蔵野市、南口は三鷹市となっている。今回、三鷹市は適用外となったため、人々が行き交う同じ駅でありながら北口の飲食店等は20時で閉店(酒類の提供は19時まで)となったのに対し、南口の店は21時閉店(酒類の提供は20時まで)である。

 この1時間の差により、適用以前から「不公平」「南口の店に客を取られる」などといった声が挙がっていた。

 都は今回の線引きについて、「どこかで線引きをしなければならず、総合的に判断した」(小池百合子知事=4月9日の会見)との判断だ。総合的の要素としては店舗数、感染者数、人口比などを挙げている。今回の判断の妥当性は後に触れるとして、まずは適用初日の様子を振り返ってみたい。

まん防適用初日、吉祥寺「名物盛り場」の夜

 4月12日夕方、最初に訪れたのは吉祥寺駅北口近くの名物盛り場「ハモニカ横丁」。何本もの路地に100軒ほどの店が立ち並ぶエリアで、若者からシニアまでさまざまな人々が憩いのひと時を過ごす横丁だ。

 外はまだ明るいが、多くの飲食店が営業中だ。月曜日だというのに、客もそれなりに入っている。ほとんどの店がドアなどに「4月12日〜5月11日 営業時間を20時までとさせていただきます」という営業時間短縮のお知らせを掲示している。

 横丁を外れた商店街の中の店も同様だ。老舗のジャズライブの店も「ライブタイム18:45〜19:45、20:00 close」となっている。

 18時ごろ、ハモニカ横丁の一軒の老舗居酒屋に入ってみようと、ガラス越しに店内をのぞいたらカウンター席はすでに満席だった。終いが早いので、客の出足も早いようだ。

 空いていた別の店に入る。客は4組で、適度に距離を取り、小声で話しながら酒を楽しんでいる。店の方に今回の「まん防」について尋ねると、

「夜の閉店時間を1時間早めることでどれだけの効果があるのか示して欲しい」
「サラリーマンの常連の方は急いで来てくれても18時半ごろになる。それなのに酒の提供が19時まででは話にならない。結局、またの機会にということになってしまう」

 と嘆いていた。

 店の外に出ると人々が通りを行き交い、お目当ての店に入っていく。残されたわずかな時間を楽しもうとしていた。

同じラーメン店でも南北で閉店時間が違う三鷹

 次に、吉祥寺駅から一駅先の三鷹駅に向かった。最初に駅ビル内の飲食店をチェック。どの店も営業は21時までとなっている。それもそのはず。三鷹駅の住所は三鷹市になるからだ。つまり、駅構内の店は「まん防」の適用外ということだ。

 北口に降り立つ。駅前ではテレビカメラが待ち構えている。注目の初日の状況を取材しているのだろう。駅前には大手外食チェーンの本社がある。それなのに、飲食店は「まん防」のため営業は20時まで。時刻は19時50分を過ぎていた。

 どの店も閉店の準備にかかっている。20時ごろ、ラーメン店に1人のサラリーマンがやってきた。ドアを開けて店員と話をしているが、結局は入れずじまい。とぼとぼと駅に向かっていった。

 派手なネオンに彩られた飲食ビルも人の気配はない。「鍋食べ放題!」の看板が虚しい。灯りの付いている小料理屋も店内では椅子を上げて清掃中だった。通りそのものが静かだ。

 駅北口に戻る。駅前のチェーンラーメン店。ここでも店に入ろうとして断られた客がいた。仕事帰りなのだろう。切ないシーンだ。

 次に南口へ向かう。こちらはどこも営業中。ビルの2階にある店も客が多い。通り沿いにある大手牛丼チェーンには、店の外にまで客が立っていた。店内は飲食の客とテイクアウトの客でいっぱいだ。

 北口で営業を終えていた同じチェーンのラーメン店が、こちらの店では営業中で賑わっている。路地裏に回っても貸し切りの店もあれば、20時を過ぎても客がお酒を楽しんでいる店も。「南北格差」は歴然だ。

 こうした現状に、北口の店の関係者からは「南口の店に客が流れてしまう」という懸念の声が上がり、三鷹市民の間からは「南口の店が密になり、感染拡大が心配」と不安の声が挙がっている。適用を除外されたからといって、市民としては歓迎というわけにはいかないのである。

人流が変わって新たな感染リスクの懸念

 さて、話を戻そう。なぜ、三鷹市が「まん防」の適用対象とならなかったのか。三鷹市の4月12日時点の感染者数の累計は1224人で、適用された武蔵野市や立川市よりも200人以上も多い。最近の新規感染者数を比べても、武蔵野市と三鷹市はほぼ同じような状況が続いている。

 では、人口比の感染状況はどうか。武蔵野市の人口は14万7975人。人口1000人当たりの感染者数は6.69人となる。一方、三鷹市の人口は19万774人。人口1000人当たりの感染者数は6.42人。これまたほぼ同じ水準だ。

 たしかに飲食店の数では人気エリア・吉祥寺がある武蔵野市のほうが三鷹市よりも3倍ほど多いのだが、これまでの感染状況に大きな差がない以上、三鷹市を除外するというのは理解に苦しむところだ。

 しかも、この一帯で見ると、三鷹市に隣接する武蔵野市、府中市、調布市が「まん防」の適用対象となっているのだ。そのため三鷹市民も納得がいかない様子だ。

「隣接市が対象となっているのに三鷹市が対象とならないのはなぜか、など市民の方からの声が何件か届いています」(三鷹市健康福祉部の担当者)

 対象地域を決めたのは東京都だから、市としても対応には苦慮しているのだろう。ホームページ上に「まん延防止等重点措置期間における市民のみなさんへのお願い」というメッセージを載せ、その中でこう記している。

〈4月12日からは東京都が「まん延防止等重点措置」の実施区域となりました。三鷹市は東京都の定める対象地域から外れていますが、都民の方全体を対象とした要請は継続されており、引き続き下記のことにご協力をお願いします〉

 そのうえで、都の要請内容として不要不急の外出・移動の自粛、変異株により感染が拡大している大都市圏との往来の自粛などを列挙している。

 ある三鷹市民はこう語った。

「メディアは『南北問題』だとか言って、店の客が減った、“脱北者”が南口に流れたといったことばかり報じていますが、この問題の本質は都の判断基準の不透明さですよ。なぜ、三鷹市が適用外なのか明快な説明はまったくない。線引きはしょうがない、という問題ではないはず。

 そもそも、三鷹にしろ武蔵野にしろ、都心部に通勤している人がかなりいるわけで、そこを抑えないことには感染防止対策にならないはず。今回のような中途半端な措置は、不公平感だけでなく、人の流れが変わることで新たな感染リスクが生じかねない。都知事はきちんと説明してほしいですね」

市民の不満と不安がうずまく1か月に

 4月12日の21時過ぎ、三鷹駅から再び吉祥寺に戻った。ハモニカ横丁の大半の店は閉め、人通りもほとんどない。そのなかで1軒の店が通常通りの営業を続け、多くの客で盛り上がっていた。

 大型施設前の通りでは、学生らしき若者十数人が車座になって座り込み、酒を飲み、たばこを吸っていた。吉祥寺駅南口の飲食街では数軒の店が堂々と営業し、外からも客が酒を飲んでいるシーンが丸見えだ。

 これが「まん防」適用初日の夜の実態の一コマである。市民の不満と不安は解消されないまま、措置は1か月間続く。果たしてどれだけ効果があるのだろうか──。武蔵野市と三鷹市の今後の感染状況に注目したい。

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