新学習指導要領、来年スタート 「体験格差」がカギになる

 4月からの新年度を控え、子どもの塾や習い事をどうするか、あれこれ悩む時期である。ネットやメディアに氾濫する情報の洪水を前に、結局、どんな教育を子どもに授けるのがベストなのか、頭を抱える親も多いのではないだろうか。

 そのヒントとなり得るのが、今後予定されている教育改革である。小学校は2020年度、中学校は2021年度、高校は2022年度から、新しい学習指導要領に基づいた学校教育が始まるのだ。学習指導要領は文科省が定めるもので、どのような教科、項目について何時間学ぶのかが事細かに決められている。

 今回の改訂では、たとえば小学校ではプログラミング教育が必修化されたり、小学5~6年生の英語が現行の35時間から70時間に倍増したり、道徳が教科化されたり(成績評価の対象となる)といった変更がなされる。

 こうした変更は、さらなるAI社会、グローバル社会の進展が予想されることから、社会がどのように変化しても適応して活躍できるような人材を育てるための改革であるという。

 大きく変わる学校教育に、家庭はどう向き合えばいいのか。プログラミング学習塾「ステモン!」を主宰、『AI時代に輝く子ども』(CCCメディアハウス)を上梓した中村一彰氏はこうアドバイスする。

「読み書きそろばんに該当する学力の部分は、学校での勉強をしっかりやっていれば、全く問題ありません。その上で親は子どもに多種多様な体験を与える機会をつくってあげてほしいですね。さまざまな場所に行って、さまざまな人と会ったり、文化に触れたりすることで、教科書に書いてある内容が具体的にイメージしやすくなります。自然と触れ合って五感を使うことで、複雑な思考もできるようになるのです」

 学校の補習として学習塾や受験予備校に行かせるのも大事だが、親にはそれ以上に大事な役割があるという。

「すでに有名予備校のカリスマ講師の授業が低価格で視聴できるようになっており、学力格差はテクノロジーで補完できるようになっている。そうなると、体験の差(体験格差)が能力の差として顕在化してきます。体験の効果は目に見えないので実感しにくいのですが、後になるほど差がついて人生の幸福度に影響するのです」(中村氏)

 だからと言って、特別な体験をさせる必要はない。都市部に住んでいるなら、夏休みなど家族で旅行に行くときに、たまには農家民宿に泊まるのも一つだ。見慣れない農村の風景を眺めて、伝統的な民家のつくりを観察したり、畑で収穫体験をしたりすれば、教科書に出てくる物語の情景描写の理解を深めたり、そこで暮らす生き物や植物、食への関心が強まるかもしれない。夕食時などに宿の主人から地域の伝統や風俗について語ってもらえば、その話しぶりや雰囲気が記憶となり、郷土史にふれる貴重な機会にもなるだろう。

 子どもの潜在能力を引き出すか、そのまま眠らせてしまうのかを分けるのは、親の認識の差だという。中村氏が続ける。

「体験を通して子どもは自分の興味のある分野、得意な方面にのめり込んでいきます。そのとき、最初は親が目的や目標を指し示す先導者となるべきですが、次第に横について走る伴走者になり、最後は沿道から声援を送る一ファンになるべきです。小学校の高学年にもなれば、親は伴走力を発揮していくといいでしょう」

 子どもの教育に熱心な親ほど子どもを手放すのが難しくなる。子育ての目的が経済的にも精神的にも子どもを自立させることだとすれば、何かと手や口を出すことだけが子育てではない。すべてわかって、何もせず、そっと見守るのも立派な子育てだ。

◆取材・文/岸川貴文(フリーライター)

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