マンションの大規模修繕は必要なのか 悪質コンサルも存在

マンションの大規模修繕をめぐって住宅ジャーナリストが疑問 悲しい現実の一つと嘆き

記事まとめ

  • 分譲マンションで管理会社は熱心に大規模修繕工事を勧め、国交省は築12年が目安と示す
  • 竣工後40年以上も大規模修繕を一度も行わないマンションは、いくつも存在するという
  • 『悪徳理事長』がいた場合に大規模修繕は美味しいイベントで、1千万円以上稼げるとも

マンションの大規模修繕は必要なのか 悪質コンサルも存在

マンションの大規模修繕は必要なのか 悪質コンサルも存在

巨大な金額が動くマンションの大規模修繕には思わぬワナも(写真はイメージ)

 分譲マンションでは10数年に1度の割合で「大規模修繕工事」を行うケースが多い。街を歩いていると、足場を組んで外壁の修繕工事を行っているマンションを見かけることも多いはずだ。工事は区分所有者である住民がコツコツと溜めてきた多額の修繕積立金が使われるわけだが、「そもそも一様に大規模修繕は必要なのか」と疑問を呈するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。

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 分譲マンションの大規模修繕工事は何をやっているかというと、主に外壁タイルの補修だ。外壁タイルは建物の主要躯体であるコンクリートの表面に、セメントと砂を水で練った接着用のモルタルで貼りつけられている。そのモルタルが劣化するとタイルが剥がれてくる。剥がれたタイルが落下して、地上にいる人間に当たると大けがをする可能性がある。

 もしそうなった時に責任を負うのは、そのマンションの所有者だ。具体的には管理組合が損害賠償責任を負う。

 外壁タイルが剥がれているのは、ある程度目視で分かる。いわゆる「タイルが浮いている」という状態になるのだ。そういう状態が複数か所見つかると「外壁の修繕工事が必要だ」ということになる。そのために足場が組まれるのだ。これには多大な費用がかかる。

 まずは、そもそも論で考えたい。マンションの外壁にはなぜタイルを貼る必要があるのだろう。これは建築構造上必要なわけではなく、100%見栄えをよくするためである。そのほうが高級そうに見えるからだ。

 世の中には外壁にタイルを貼っていないマンションもたくさんある。20階以上のタワーマンションの外壁にタイルが張られているケースは少ない。タイルっぽく見えるALCパネルを貼っている場合はたまにあるが、そもそも、マンションの外壁にはタイルを貼る必要はないのだ。

 それに変わるものとして「吹付けタイル」というものもある。時間が経てば凝固する液体をコンクリートの壁に吹き付けるのだ。これで雨風が直接躯体コンクリートに吹き付けるのを防ぐ。一枚一枚タイルを貼ることに近い保護効果が得られるのである。

 また、どうしてもタイルを貼りたいのなら性能の安定しないモルタルよりも、剥離の可能性が軽減される接着剤を使えばいい。多少費用はかかるが、モルタルよりも耐用年数は長い。その費用の差は、大規模修繕で足場を組む費用の数10分の1でしかない。

 さらにそもそも論を言おう。国土交通省は大規模修繕工事の目安として「竣工後12年」という数字を出している。この根拠がよく分からない。

 私が知る限り、竣工後40年以上も足場を組んでの大規模修繕を一度も行っていない分譲マンションはいくつもある。つまり、鉄筋コンクリート造のマンションは施工精度によって大規模修繕の必要性が異なるのだ。それを一律で定めるのはふさわしくない。

 仮に12年に一度大規模修繕工事が必要なら、竣工後の24年後も36年後も48年後にも行わなければいけなくなる。

 なによりも、大規模修繕工事には1戸当たり100万円程度の費用がかかる。タワーマンションなら、それが2倍以上になる。そういった費用を永遠に負担し続けるのは、何ともリアリティがない。また、区分所有者が高齢化すると経済的に不可能になってしまう。

 しかし、多くのマンションの管理組合では築10年を過ぎると「大規模修繕準備委員会」みたいな組織を作って、その準備を始める。たいてい、管理会社が誘導している。

 管理会社は、大規模修繕工事を自ら受注して売り上げと利益を上げたいと考えている。だから、築10年を過ぎると「そろそろ準備を始めたほうがいいですよ」と、管理組合の理事たちに囁きかける。あわよくば自社で受注しようとするレールを敷くのだ。

 実のところ、管理会社に大規模修繕工事を発注するほどの愚挙はない。管理会社はそもそも工事部門など持っていない。ほぼ100%外注だ。大規模修繕工事を受注した場合の利益率は普通に3割。うまく行けば5割近くになっている。

 だから管理会社は熱心に大規模修繕工事を勧める。では、なぜ国土交通省までもが大規模修繕工事の目安を「築12年」などと示しているのか。

 きっと、管理会社の業界団体に天下りポストでも確保されているのだろう。だから管理会社が安定的に利益を上げられるスキームを示している。そこにはマンションの区分所有者や管理組合の利益を保護しようとする姿勢は見られない。

 管理組合側にも問題がある場合が多い。マンションの規模にもよるが、管理組合には管理費や修繕積立金という名目で多額のお金が集まる。それをどう使うかを決めるのは理事会。理事会を動かすのは理事長だ。

 つまり、理事長は管理組合の予算という巨大な利権を握っていることになる。あまり表立った事件にはなっていないが、管理組合の理事や理事長たちがこの利権を私物化している例は枚挙にいとまがない。

 特に大規模修繕は巨大な金額が動く。例えば200戸のマンションの大規模修繕工事なら予算の目安は2億円だ。その1%が理事長にキックバックされる仕組みを作れば、その額は200万円だ。管理会社もそういうことにはなれているので、バレないようにリベートを支払うなどということは朝飯前だ。

 分譲マンションの管理組合というのは1962年にできた区分所有法でその運営手法などが定められているが、この法律、制度疲労が甚だしい。

 そもそも、そういう悪事を働く理事長の出現を想定していない。だから管理組合の理事長になって私腹を肥やそうと思えば簡単に出来てしまう。悪徳理事長にとって大規模修繕ほど美味しいイベントはないのだ。そこで一気に何百万円、あるいは1000万円以上のお小遣いを稼げてしまう。

 さらに近年では、管理会社の紹介などで大規模修繕の設計・監理(チェック)を外部コンサルタント(大手設計事務所など)に依頼するケースも増えているが、中には施工会社に高い工事費で請け負わせ、多額のリベートを受け取る悪質コンサルタントの存在も指摘されている。

 さまざまな陰謀も渦巻くマンションの大規模修繕。すべてがそうでないにしろ、これが日本の分譲マンションを取り巻く悲しい現実のひとつだ。

「大規模修繕は時期が来たら必ずやらなければならない」と管理会社や管理組合、コンサルタントなどに丸投げするのではなく、まずは修繕工事の必要性や金額の妥当性などについて、住民みながしっかりと話し合うことが必要だろう。

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