サントリーHD・新浪剛史社長 創業家との関係と右腕を語る

サントリーHD・新浪剛史社長 創業家との関係と右腕を語る

サントリーホールディングスの新浪剛史社長

 非上場企業のサントリーHDで初の外部出身経営トップとなって4年余り。新浪剛史・社長体制下で、サントリーは米ビーム社との統合など、世界規模の経営戦略に乗り出している。三菱商事を経てローソンの社長を経験し、「プロ経営者」とも呼ばれる新浪社長は、新時代に向けてどう動こうとしているのか。(聞き手/河野圭祐=ジャーナリスト)

◆「悠々として急ぐ」経営

──外部から招かれた新浪さんと創業家との関係は?

新浪:佐治(信忠)会長とは週に一度は話していますが、「時々は立ち止まって考えなさい。経営者は全体像を見て、大所高所から判断しなければダメだ」とよく諭されます。私は率先して走り回り、むしろ走りながら考えないと逆に息切れするタイプ。だからこそのアドバイスかもしれません。

 会長の口癖は、(サントリーの前身、壽屋宣伝部出身で作家の)故・開高健さんの言葉である「悠々として急げ」。結果を出すためにスピーディーでありながらも、常に悠然とした気持ちを忘れるなと。まさに至言ですね。

──しかし、「プロ経営者」の筆頭格と呼ばれる新浪さんとしては、「すぐに成果を上げなければならない」という思いもあるのでは?

 経営者は誰しもプロでなくてはいけない、というのが前提ですが、大事なものは2つあると思います。まず「自己犠牲を伴ったリーダーシップ」を持つということ。言い換えれば、社員にも会社に対しても深い愛情を持たなければならない。

 もう一つは「モデスティー(慎み深さ)」じゃないでしょうか。自信過剰だと本当にいい経営者にはなれないと思うんです。自分の判断が正しいか常に不安があるから、常に自分を磨こうと追い込んでいける。自分は権力者で偉いんだとふんぞり返ってしまったら、その時はもう引退しなければいけない。それが経営者だと思います。

 そういう意味で重要なのは、社長に物を言ってくれる右腕を置くことです。その助言を聞いて、少し引いて判断するのがトップですから。自分だけの判断でやっていたら、会社はおかしくなってしまいます。

──新浪さんには右腕がいますか?

新浪:今の2人の専務がまさにそうで、タイプは違うんですが2人とも「違うものは違う」と意見してくれる。ありがたいですね。

 私は外部から来ていますから、その業界に長くいる人間とは違う視点や目線を持っている。「新しいこと」をやるのを常に大事にしていますし、それが自分の強みだと考えている。しかし同時に、だからこそ見えないものもある。生え抜きの役員たちにはそれが見えているわけですから、つばきを飛ばして侃々諤々と議論を戦わせます。

 トップの私が「それはダメだ」と言ってしまうことは簡単ですが、重要なのは、会社を愛するがゆえに私に直言する心意気を、トップとして絶対に感じないといけないということです。

【PROFILE】にいなみ・たけし/1959年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1981年に三菱商事入社。1991年ハーバード・ビジネススクール修了(MBA取得)。2002年ローソン社長、2014年会長。2014年10月にサントリーHD社長就任。

●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):かわの・けいすけ/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。

※週刊ポスト2019年4月5日号

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