三菱自「デリカD:5」「ekクロス」 オラオラ顔の訴求力は

三菱自「デリカD:5」「ekクロス」 オラオラ顔の訴求力は

「ekクロス」発表会に登場した俳優の竹内涼真さん(右)と益子修・三菱自動車CEO

近年、クルマの「顔」であるフロントマスクの大型化が目立つようになってきた。昨年秋にマイナーチェンジした「デリカD:5」や、今年3月より発売している新型軽自動車「ekクロス」などを投入する三菱自動車も大きなフロントマスクを採用しているが、果たしてそれら特徴的なデザインにはどんな狙いが込められているのか。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。

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 よく、“オラオラ顔”のクルマという形容を聞く。いかつい、威圧感のあるクルマといった意味だが、その代名詞のように言われた筆頭が、トヨタ自動車のミニバン、「アルファード/ヴェルファイア」で、確かにオラオラチックなクルマはかつてより総じて増えている。

 そんな中、昨秋に行ったビッグマイナーチェンジで、賛否両論話題になったのが、三菱自動車の「デリカD:5」だった。見た目は一見ミニバンだが、最低地上高があるSUVジャンルのクルマでもあり、“SUVミニバン”という独特のポジションを三菱自動車が築いただけに、一定層のファンがいる。

 その「デリカD:5」がマイナーチェンジでフロントマスクを大きく変え、いわゆるオラオラ顔になった。三菱自動車側からすればこの顔立ちは、「ダイナミックシールド」という統一感のあるデザインコンセプトの一貫だ。

 ポイントは、ランプ類のレイアウトを上下に分けて配置し、上部は歩行者からの視認性を高めるデイタイム・ランニングランプ、下部は、対向車や歩行者の眩惑防止のためのヘッドライト配置だという。

 デザイン意匠はまったく異なるが、この上下のランプ、ライトの配置は、たとえば日産自動車のコンパクトSUV、「ジューク」があてはまる。「ジューク」の場合、出たての頃は特色を出すための奇異なデザインにも映ったが、見慣れてくると先進的なデザインに見えるようになったから不思議だ。

 一方、三菱自動車の場合は全車横断的に順次、「ダイナミックシールド」のデザインを採用している。この一連のフロントマスクは、クルマの形状タイプによってかなり印象が変わるのではないか。「デリカD:5」の場合、賛否のうち否の意見のほうが目立ったが、これは一見、スクエアなミニバンライクなクルマであるため、威圧感を一層増してしまう印象がある。

 そう感じるのは、最近発売された、三菱自動車の新型軽自動車「ekワゴン」「ekX(クロス)のうち、最新の「ダイナミックシールド」を採用した「ekクロス」は、「デリカD:5」とはだいぶ異なる評価を聞いたし、筆者もそう感じたためだ。たとえば、他の自動車メーカーのある幹部は、

「『デリカD:5』では威圧感があった顔が、軽の『ekクロス』だと、意外に可愛らしさも出ているように感じ、結構、消費者に受け入れられるような気がしていますので、お客さんの反応をウォッチしていきたいですね」

 と定点観測したいと語っていた。また、あるモータージャーナリストも、

「『ekクロス』の事前公開写真を見た限りでは、なぜこんなどぎつい顔にするのかと思いましたが、発表会で実車を見ると、意外と違和感がなかった。同じような顔でも、『デリカD:5』より断然しっくりきますね」

 と言う。同じスクエアなフォルムに載った「ダイナミックシールド」のデザインでも、ミニバンと違って軽自動車のような小さなサイズだと、威圧感が消えるのだ。

 ほかに、昨年3月に発表したSUVの「エクリプスクロス」も、曲線が多用されたフォルムの効果もあってか、それほどいかつい感じは受けない。さらに、タイで人気のピックアップトラック、「トライトン」や、インドネシアでベストセラーカーになったクロスオーバーMPVの「エクスパンダー」も、一昨年から昨年にかけて新しい「ダイナミックシールド」デザインに変わっているが、写真を見る限り、やはり強烈なオラオラモードまでは感じない。

 近年、三菱自動車と同様に、フロントマスクのデザインを統一するメーカーが増えてきた。

 トヨタでは、細目の鋭いヘッドライトとV字に切れ上がったグリルが特徴の、キーンルック。レクサスは、台形を上下に配置したスピンドルグリル。日産自動車は、グリルにV字型のメッキパーツを多用した、Vモーショングリル。さらにマツダは、顔の部分だけでなくクルマ全体に統一コンセプトを持たせた、魂動デザインを採用。海外メーカーでは、左右に2つ並んだフロントグリルを持つ、BMWのキドニーグリルがよく知られている。

 この中でBMWは別格として、車種ラインナップの統一感を最も強く打ち出しているのがマツダだ。

 マツダの軽自動車はOEM供給してもらって自前のモデルはなく、箱型でデザインが差別化しにくいミニバンからも撤退。主力のSUVを軸にハッチバックやセダンタイプのクルマに絞り込み、独特のソウルレッドをイメージカラーに、さまざまな車種を一堂に会して“群れで見せる”という世界観を打ち出している。

 昨今は、マツダを筆頭に「同じような顔で飽きる」と消費者にネガティブに見られるリスクより、「一目でどのメーカーのクルマかがわかる」と、ポジティブに捉えて、その個性に共感してくれる人をつかまえたいという考え方を優先する傾向が、かつてよりも強くなっているということだろう。

 三菱自動車では、前述の「ekワゴン」「ekクロス」合わせた月販目標は4000台だが、

「半分以上は『ekクロス』のほうで売っていく計画。広告宣伝も強化し、新しい顧客をつかみたい」(執行役員国内営業本部長の深澤潔氏)と、「ダイナミックシールド」採用車種のほうを全面に打ち出していく方針だ。

「ekワゴン」「ekクロス」発表会の際、同社商品戦略本部チーフプロダクトスペシャリストの吉川淳氏は、こう語っていた。

「2008年と2018年、それぞれで軽自動車を選ぶポイントをアンケートしたところ、2008年は上位3位までが順に〈税金・保険の安さ〉〈価格〉〈燃費〉で、4位に〈車体色〉、8位が〈スタイル・外観〉でした。ところが10年後の2018年は、1位が〈車体色〉で、3位に〈スタイル・外観〉という結果になっているんです」

 要は、かつては下駄代わりと目されていた軽自動車の市場占有率が上がっていく過程で、人に見られる部分の個性が、より重視されているというわけだ。

「色もとても大事な要素。そこで今回、2トーンのクルマを用意しただけでなく、5種類ある2トーン車は、すべて違う色のルーフカラーを設定しました」(同)

「ダイナミックシールド」のデザインやカラーバリエーションの品揃え強化といった点に、他社との差別化ポイントを置く三菱自動車。保守的で大人しいデザインではどんどん埋没してしまう時代にあって、“いかつい顔つき”のクルマの訴求力はどこまで浸透するか。「当社は国内販売台数の54%が軽自動車」(益子修CEO)と言うだけに、より個性を際立たせた「ekクロス」で、勝負を賭けることになる。

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