新紙幣 肖像画に選ばれた人の子孫が「嫌だ」と言ったら

新紙幣 肖像画に選ばれた人の子孫が「嫌だ」と言ったら

1万円札はこの人に(時事通信フォト)

 新元号に続いて発表され話題となった新紙幣。1.6兆円もの経済効果をもたらすといわれる一方で「肖像画の人名がピンとこない」「数字が大きすぎる」など早速物議を醸しているが、一体誰がどうやって決めたのか。財務省が“国家機密”とする「新日本銀行券の謎」に迫る。

●“お札の顔”を決めるのは誰?

 実際に「選定」に携わる財務省理財局・通貨企画係の担当者が語る。

「お札の表面の肖像画の選定は数十の候補から財務省、国立印刷局、日本銀行の各担当部署が協議し、候補を準備した上で、最終的に財務大臣が決定します」

 実は、選考の過程で“時の政権の意向”が反映されているという。

「今回採用された渋沢栄一さんは新たな産業の発掘に尽力した。津田梅子さんは女性の活躍の礎になり、北里柴三郎さんは医学の発展に貢献しました。『日本産業の競争力を強化』『女性の人材活用を進める』『健康長寿社会を構築』といった現政権の成長戦略と重なる人選になっているのは確かだと思います」(同前)

 実際に、今回の紙幣刷新の発表に際して「選考過程で安倍首相への相談や了解はあったのか」との質問に、麻生太郎・財務相は「あった」と答えた。

 2002年に現行紙幣のデザインが発表された時も、塩川正十郎・財務相(当時)は小泉純一郎・首相(当時)が推し進める「学術振興や男女共同参画」が人選のベースにあり、野口英世と樋口一葉が採用されたと明言した。

 ちなみにこの時、一万円札の福沢諭吉が続投となったのは「小泉氏と塩川氏の出身大学が慶應義塾大学だから」という説がまことしやかに囁かれた。

●落選したのは誰?

「肖像画の具体的な候補者名や数は明かせない」と前出の担当者は語るが、渋沢栄一はかつて“落選”の憂き目に遭っている。

 大蔵省印刷局のOBで『紙幣肖像の近現代史』(吉川弘文館)の著書もある植村峻氏はこう話す。

「1963年発行の千円札は、伊藤博文と渋沢が候補でした。偽造しにくいよう、細かな印刷技術でないと再現できないヒゲのある人物を優先して採用していたので伊藤さんになったと言われています。

 現在ではホログラムや微細な透かしなど、その他の技術が発達したので、ヒゲの有無が関係なくなった。それでヒゲのない渋沢さんも採用されるようになったのでしょう」

 また、「最近は“国民が嫌がる”ことを懸念して政治家や軍人は避ける傾向にある」(前出・財務省担当者)という。

●誰が肖像画を彫るの?

 肖像画の印刷に使われる原版は彫工の手彫りだ。

「担当者についてはまさに“最高機密”です。もし漏れて何者かに拉致され、偽札作りに協力させられたら大変ですから……というのは冗談ですが、それほどの扱いなのです」(同前)

●肖像画に選ばれた人の子孫には連絡するのか?

 肖像画として採用が決まったときに子孫に挨拶に行き、了承を得るという。

「私の知る限り、これまで採用に関して断わられたということはありませんが、『どうしても嫌だ』と言われたら、考え直さなければならないかもしれません」(同前)

※週刊ポスト2019年4月26日号

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