国の債務を7割カットする大前研一流「年金改革」私案

国の債務を7割カットする大前研一流「年金改革」私案

意外な年金改革案を提案する

 少子高齢化がすすむなか、社会保障費の増大は避けられない。高齢者が増えるなか、年金への不安も広がっている。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本の財政危機を克服しつつ、年金を改革する方法を提案する。

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 2019年度の一般会計予算は、総額が過去最大の101兆4571億円に達し、当初予算として初めて100兆円を超える規模となった。そして、そのうち3分の1の34兆円を占めるのが社会保障費だ。高齢化に伴い、年金や医療などに莫大なカネが必要になっているのだ。

 ただし、年金問題が深刻化しているのは日本だけではない。今や世界各国で重要な政治課題になっている。

 なかでも、いま最も政府への批判が高まっているのはフランスだ。財政難で年金支給開始年齢を60歳から62歳に引き上げたが、さらに満額年金の支給開始年齢を2023年までに65歳から67歳に引き上げることになっており、これに対して国民が不満を募らせているのだ。

 アメリカはレーガン政権時代、このまま行くと年金が払えなくなるということで401k(確定拠出年金)制度を導入し、年金を企業に丸投げして対応した。これは、企業の従業員が自分で老後に向けた積み立てを行ない、国はその拠出金を税制で支援し、企業は従業員の拠出金に一定の金額を上乗せする仕組みだ。転職した場合には新しい職場に移すことができる。掛け金は株や投資信託などで運用されるため、結果的にその後、アメリカの株価は9倍に膨らんだ。

 日本も「日本版401k」を導入したが、アメリカとは全く異なる制度である。日本の確定拠出年金は「企業型」と「個人型」の二つがあり、前者はもともと企業が従業員の老後のために積み立てていた企業年金・退職金を新たに確定拠出年金制度に切り替えたもので、企業側が掛け金を支払っている。後者は個人が掛け金を支払うものだが、現状では積み立て不足で加入者も少なく、アメリカのように公的年金に取って代わるものにはなっていない。

◆個人資産を合算し老後に備える

 前述したように、多くの国では国民の高齢化が進む中で年金財政が危うくなっている。そして、その中でも最も深刻なのが日本である。今後は年金のさらなる減額や支給開始年齢の65歳以上への引き上げは不可避となるだろう。

 その一方で、個人金融資産は2018年12月末時点で1830兆円に積み上がっている。これが将来に対する“漠たる不安”で「いざという時のため」に銀行などにじっとしていて市場に出てこないから、日本の景気が上向かないのである。

 では、どうすればよいのか?

 私は、個人の資産を一本化して、年金をもらわなくても老後のファイナンシャルプランが設計できる金融システムが必要だと思う。

 具体的には、預貯金、生命保険、株や債券、不動産などをすべて合算し、その金額を定年退職してから年金を受給するまで給料のように月々、あるいはかつての「一時払い養老」のように一括で支払い、その収入に対しては課税しないインセンティブを付ける、という仕組みである。不動産の「リバースモーゲージ」は、自宅に住み続けたまま、自宅を担保にして老後の資金を借りるローン商品だが、それに金融資産まで加えたものをイメージしてもらえばよい。

 支払う金額や年金支給開始年齢を何歳に設定するかという方程式は、金融機関がAI(人工知能)で計算する。そして、もしその人が想定よりも長生きしたら、そこから先は従来の年金をもらえるようにするのだ。

 そういう選択肢を作れば、日本人の多くは将来に対する“漠たる不安”がなくなって年金受給者が減り、国の年金債務はざっと7割くらい消えるのではないだろうか。

※週刊ポスト2019年4月26日号

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