詐欺犯罪のセオリー「ターゲットはまず自国民」

詐欺犯罪のセオリー「ターゲットはまず自国民」

詐欺や強盗は自国民がターゲット

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、詐欺や強盗で自国民をターゲットにする理由について探る。

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「自国の人間は、自国の人間を騙す」

 詐欺の手口は変われども、どこにいてもまずターゲットとして狙うのは他国の人間ではなく同じ国の人間だと、暴力団幹部は言う。

 まったく同じことを警視庁組織犯罪対策課の元刑事も言っていた。

「中国人はまず最初に中国人を、韓国人は韓国人を狙う」

 騙そうとする相手の反応や考え方、どう行動するかがよくわかる方がやりやすいというのは確かだろう。そのいい例が振り込め詐欺だと暴力団幹部は話す。

「あれは言葉が通じて、生活や習慣、文化がわかるからうまくいく。国や人種、宗教が違えばムリだね」

 山梨では、中国に向けて特殊詐欺の電話を掛けていた台湾籍の男女10人が逮捕された。観光目的の短期滞在資格で入国していた彼らもまた“掛け子”として、中国語の名簿やマニュアルを使っていたという。

 先日、タイのパタヤで逮捕された日本人詐欺グループも掛け子であり、騙す相手のリストだけでなく、その特徴が記されたメモや成功する騙し方、注意点などが細かく書かれたマニュアルが押収されている。

「騙すにはまず相手の心理、どう考え、どう動くかを知ることが大事。次にトーク力だ。テレアポ(電話営業)と同じでブラッシュアップしないと成果を上げられない。金の取り立てじゃないんだからさ。イライラしてすぐにカッとなるヤツ、人の言うことを聞けないヤツ、面倒くさがるヤツはムリだね」

 掛け子にも向いているヤツと向かないヤツがいるらしい。

「観光客を騙すという手口も多いが、これにもガイドとか通訳とか運転手とか、どこかで自国の人間が絡んでいるのがほとんどだ」

 暴力団幹部は、ある中国人の名前を出した。その男のスポンサーとされるのは誰もが知る中国系の大手企業だ。

「ヤツは日本で働いている中国人ガイドたちを使って、中国人観光客に良質の漢方薬だと偽って粗悪な品を売っている。ガイドや通訳が中国人観光客を連れていく量販店に卸してもいるね。中国人なんて、日本の品物はいい物だと思っているからみんな買うのさ。中国から仕入れた粗悪品を日本製と称して、中国人に売り付けているんだ。ヤツへの戻りは売り上げの50%。ぼろい儲けだ」

「俺らが海外に出かけた時、狙うとすれば日本人だ。例えばフィリピン。自分もフィリピンに行けば、日本人を騙すだろうね。あそこは警察官がグルだからさ。金を払えば何でもOK、何でもできる。女の子に売春をさせてもフィリピンでは捕まらない。警察がグルだから俺らはもちろん、女の子も捕まらない。日本なら俺らも女の子も捕まるだろう」

 フィリピンの警察官が金欲しさに、俺も俺もと寄ってきて仲間が増えすぎたのだと暴力団幹部は語る。

「そのうちお前、殺されるぞ」

 仲間にそう言われて、フィリピンで稼ぐのは止めたという。

「フィリピンはやりやすいんだ。金さえ払えば捕まらない。なぜって、フィリピンの警察官はみんな、俺たちと友達だからね。ワルばかりさ。あそこの警察は、あと100年はよくならない」

 積水ハウスが騙された地面師事件で、主犯格とされ逮捕されたカミンスカス容疑者が逃げていたのもフィリピンだ。その時、話を聞いた暴力団幹部もフィリピンの警察組織は腐っていると鼻で笑っていた。

 他国民より自国民を狙うというのは、詐欺に限ったことではない。

「窃盗でも強盗でも中国人は中国人、韓国人は韓国人を狙うことが多い。日本で逮捕された中国人強盗団も最初のうちは中国人の家を狙って強盗に入っていた」

 警視庁組織犯罪対策課の元刑事が逮捕した外国人犯罪者にも、そういう傾向があったのだという。

「彼らも日本人の家を狙うにはリスクが高いらしい。日本人の家に押し入るのは勇気がいると言うんだ。泥棒に勇気もないがね(笑い)」

 この強盗団は中国人の家や店に押し入って、被害者を縄で緊縛して銃や刃物で脅し、金品を奪いキャッシュカーを奪って暗証番号を聞き出しては現金を引き出すという緊縛強盗を繰り返していた。凶暴な犯罪者でも、日本人の家に強盗に入るにはリスクがあるという。

「だから彼らは集団で犯行に及ぶ。住宅事情や生活習慣など、様々なことが自分たちとは違うので、運転手、見張り役、実行犯と役割を分け、グループで犯行を行っていた。その方が安全で効率的なんだ」

 今回逮捕された台湾の詐欺グループのように、窃盗団グループも台湾や香港、中国から日本に犯罪目的で出稼ぎ的に渡航してきている。これらのグループは、犯行後すぐに帰国するのが常套手段だ。盗めるだけ盗むと盗品は国際便で全部送り、すぐに日本を出国してしまう。そして数年後にまた戻ってくる。

「ひとつの手口を解明して捜査手法を確立すると、もう次の新しい手口が出てくる。せっかく被疑者に目星をつけても、次には違うメンバーが入ってくる。数十人が何回も、日本を出たり入ったりを繰り返しながら犯行を重ねていくんだよ」

 自国に逃げられたら捜査が止まる。そのため被疑者が国内にいるうちに捕まえないといけない。捜査は思った以上に大変なのだ。

「厄介だが、現場付近の防犯カメラの映像などから、メンバー全員を割り出して逮捕するしかない」

 日本にいても海外に出ても、警戒すべきは自国民とは。ますます世知辛い世の中になりつつある。

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