自動ブレーキ車「安全性能最新ランキング」調査データ公開

自動ブレーキ車「安全性能最新ランキング」調査データ公開

自動ブレーキへの期待は大きい(時事通信フォト)

 子供が犠牲になる痛ましい自動車事故が相次いでいる。高齢ドライバーによる事故問題に大きな社会的関心が集まるなか、万が一、自分が加害者にならないためにはどうすればいいのか。その一助になると期待を集めているのが「自動ブレーキ」だ。現時点でどこまで事故を防げるのだろうか。その性能をランキング化したデータを公開する(表参照)。

◆「人命を救えるか」を点数化

 どんなに運転に自信があるドライバーでも、不測の事態は起こりうる。相次ぐ高齢ドライバーによる事故で明らかになったように、歳を重ねるほどにそのリスクは上がる。

 ただ、交通事情の良い都会なら代替交通機関があるかもしれないが、車がなければ生活が成り立たない地域があるのも現実だ。認知能力のチェックがより厳格に行なわれるべきであることは言うまでもないが、ハンドルを握るのが人間である以上、運転ミスが起きる確率をゼロにはできない。そうしたなかで、自分が加害者になってしまうリスクを少しでも減らせないのか―─。

 そうした悩みを解決する助けとなるのが、自動車に搭載されている、「予防安全性能」だ。前方の障害物を察知して自動的にブレーキがかかったり、衝突回避の警報が鳴ったりするシーンをCMなどで見たことがある人も多いだろう。

 そういった技術の進歩により、どんな事故がどれだけ防げるのか。国土交通省所管の独立行政法人「自動車事故対策機構」(NASVA)では、自動ブレーキを含む6つの項目について、現在販売中の車種の性能を評価・比較している。NASVA自動車アセスメント部の担当者が解説する。

「試験車種は、予防安全技術を搭載した車種のなかでも、日本自動車販売協会連合会などが集計する新車販売台数が多い車種のうち、最も売れているグレードで試験しています。各社の性能を点数で比較できるようにすることで、より高い予防性能を搭載した自動車の登場を期待しています」

 2018年度にNASVAが試験した16車種の結果をランキング化したものが別掲の表だ。試験項目は、

【被害軽減ブレーキ[対歩行者]】65点満点(日中25点+夜間40点)
【被害軽減ブレーキ[対車両]】32点満点
【車線逸脱抑制】16点満点
【後方視界情報】6点満点
【高機能前照灯】5点満点
【ペダル踏み間違い時加速抑制】2点満点で、すべてが満点だと126点になる。

「これらの機能を搭載していない車で発生した実際の事故をもとに“もしその機能が搭載されていれば、どれだけ死傷者を減らせたか”を基準として配点を振り分けています。具体的には、全6項目の中で【被害軽減ブレーキ[対歩行者]】の配点が最も高いのは、この機能が搭載されていれば防げた事故が最も多かったことを意味しています」(同前)

◆「夜間対応」の機能かどうか

 1位は『カローラスポーツ』(トヨタ)の122.4点。対歩行者ブレーキの評価は満点の65点だった。トヨタ自動車はこの結果についてこう回答した。

「弊社では衝突回避支援または被害軽減を図る機能である『Toyota Safety Sense(TSS)』を導入しています。対歩行者・対車両で衝突の危険がある時はまずブザーで警報し、その後にブレーキを踏む力が弱ければ不足分をアシスト、さらにドライバーがブレーキを踏めなかった場合、自動ブレーキが作動する流れです。TSSなどの予防安全機能を搭載した車では、追突事故が9割低減しています。2018年からは夜間歩行者や自転車も検知する機能を追加するなど、さらなる機能強化を行なっています」(広報室)

 2位は『フォレスター』(スバル)の122.3点が続く。

「運転支援システム『アイサイト』により、対象となる人や車の位置や移動速度を高精度で測定できることが特徴です。今後は、“2030年の死亡交通事故ゼロ”を目標に、予防安全技術のさらなる進化を図ります」(スバル広報部)

 3位にホンダ『インサイト』が121.4点で名を連ねた一方で、『オデッセイ』は62.7点と、同じメーカーのものでもその差は大きく開いた。対歩行者ブレーキの点数が65点中8.5点だったことが響いた。

「『インサイト』には夜間対応の被害軽減ブレーキ機能が搭載されている一方で、『オデッセイ』にはない。(対歩行者の)65点中40点が夜間性能の配点なのですが、非搭載車種は“未実施”として0点になります」(前出・NASVA担当者)

◆「踏み間違い」にも種類がある

 各社の最新車種を乗り比べてきた、ドライビングインストラクターの赤城宏太郎氏がこう話す。

「車間距離を測る機器として、これまではレーダーかカメラのどちらかを搭載するのが普通でした。しかし、レーダーは悪天候に強い代わりに障害物の種類を見分けられない。カメラは白線も見分けられるが雨や雪だと性能が落ちてしまう。そこで近年は、その両方を搭載することで安全性能を高めた車種が増えている。1位の『カローラスポーツ』がそれにあたります」

 それらが備えられていれば、東京・池袋で親子2人が死亡した事故や滋賀・大津で保育園児ら16人が死傷した事故は防げたのだろうか。モータージャーナリストの中尾真二氏が指摘する。

「(87歳男性による)池袋の事故はアクセルとブレーキの踏み間違いが原因とされていますが、各社の『踏み間違い防止機能』はあくまで“停止時にアクセルを急に踏み込んだ場合を想定したもの”で、池袋の事故のような“走行中の踏み間違い”では作動しなかった可能性が高い」

 保育園児が死傷した滋賀県・大津市の事故はどうか。

「右折車に弾かれる形で瞬時に縁石に乗り上げた事故ですから、自動ブレーキがレーダー式でもカメラ式でも、障害物が突然視野に入るのに対応できなかったのではないか。停止できないまでも、ある程度減速できた可能性はありますが、衝突回避は難しかったのではないかと予想されます」(同前)

 現段階では、「どの機能もあくまで『ドライバーの運転を妨げない』ように作られている」(前出・赤城氏)という。日々進化を続ける性能と、各メーカーの取り組みを引き続き注視していくとともに、最終的にはドライバーの運転能力や判断力が問われることを認識しなければならない。

※週刊ポスト2019年6月7日号

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