7月からの相続法の新制度 フル活用できる手続きとは

7月からの相続法の新制度 フル活用できる手続きとは

相続の賢い手続きは?

 資産寿命を延ばすための柱は「収入を増やす」、「支出を減らす」とともに、「賢く遺す」もまた重要だ。相続で子供に損をさせないための親の「終活」方法と、遺された家族が葬儀、相続、墓などでトラブルを避けるにはどんな手続きが有効なのかを探った。

 ポイントは、40年ぶりに改正され、今年7月から実施される相続法(民法改正)の新制度をフルに活用する手続きだ。それを知っておけば、親は子供たちの遺産争いを防ぎ、子供たちは円満な相続で心安らかに親を見送ることができる。

「死ぬ前」と「死んだ後」の手続きを進める上でどちらも重要なのは、自分の意思や希望を家族と共有しているかどうかだ。

 葬儀社の選定に、葬儀の規模や形式、その後のお骨の扱いから遺産の分け方まで、事前に取り決めていれば理想の形で送り出してもらえるし、家族にとっても面倒な手続きを避け、無駄な支出を抑えることにつながる。

 そのためにまず重要なのは、自らの“持ち物”を把握しておくことだ。銀行口座の整理や不動産の名義確認を怠っていると、死後、家族が遺産の把握に四苦八苦する上、相続の段取りが煩雑になる。

 自らの資産の全貌を明らかにできれば、生前にあらかじめ教育資金や結婚・子育て資金の「一括贈与」や「暦年贈与」を行なうことで、相続税を大幅に節税することもできる。

 資産の「可視化」と「意思表示」の両方の機能を併せ持つのが遺言書だ。遺言書は、公証人の立ち会いのもと作成し、原本が公証役場で保管される公正証書遺言と、自ら書き上げる自筆証書遺言に分かれる。

 どちらも正しい体裁で記されていれば法的に認められるが、自筆証書遺言の場合、わずかでも記述に誤りがあると、遺言そのものの有効性が問われてしまうこともある。

 7月の大改正に先立って、今年1月から、自筆証書遺言に関し財産目録については「パソコン、ワープロ」で作成することが認められるようになり、手書きから大幅に負担が減った。

 また遺言書は、正しく保管されなければ意味がない。「円満相続税理士法人」代表の橘慶太氏が解説する。

「しまいこんだ遺言書が死後に見つけられないといった事態に対応するため、来年7月から、法務局での自筆証書遺言の保管が始まります。自宅での保管と違って、紛失の恐れがなくなると同時に、内容の改ざんや偽造といったトラブルも防げます」

◆「住む場所」も「現金」も

 遺される家族も新制度について理解しておく必要がある。

 7月の改正で、故人の死によって預貯金を引き出せなくなる、いわゆる「凍結口座」から、相続人なら一定の金額を引き出せるようなる。「夢相続」代表の曽根恵子氏が言う。

「口座の凍結によって葬儀費用や病院・施設代金などの支払いに家族が窮するケースは少なくなかった。法改正では、家庭裁判所での申請や手続きを経ずにお金を引き出せるようになる」

 葬儀は目まぐるしく進む上、何かと入り用になる。親族それぞれが費用を立て替えておくと、後からの精算が複雑になる。新制度を賢く利用したい。

※週刊ポスト2019年6月7日号

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