インフルエンサーに粘着する厄介ユーザー 対処法ない実態

「ゆうこす」らインフルエンサーが厄介ユーザーに悩み インスタに脅迫めいたDMも

記事まとめ

  • モテクリエイターの「ゆうこす」が厄介ユーザーについて「言葉のDV」と呟き話題に
  • 現役女子大生のインスタグラマー、ミチャさんも誹謗中傷に悩まされているという
  • 2000年にストーカー規制法が成立、改正されてきたが、悲劇は繰り返されている

インフルエンサーに粘着する厄介ユーザー 対処法ない実態

インフルエンサーに粘着する厄介ユーザー 対処法ない実態

記事画像

 モテクリエイターを名乗る実業家で、インスタグラムやツイッターなどのSNS総フォロワー数100万人を超えるインフルエンサー「ゆうこす」が、「ファンだからと言って人を傷つけて良いわけがない。そんなのは、完全にDVなんです。言葉のDV」とつぶやいて話題になった。オシャレで居心地が良いとされてきたインスタグラムにも「厄介ユーザー」が現れ、ゆうこす以外のインフルエンサーたちも日々、悩まされている。最近では、ネットの外でも怖ろしい思いをさせられることが少なくない。現実世界でも脅威になりつつある「厄介ユーザー」の実態を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 「最初はインスタに“かわいい”とか書き込んでくるユーザー“Xさん”というだけの認識でした。ツイッターを始めたら、同じ名前のアカウントからフォローされて"頑張って"とかDMが届いた。ファンの方だと思い嬉しかったんです」

 現役女子大生のミチャさん(仮名・20代)は、いわゆる「インスタグラマー」である。キュートな出で立ちもさることながら、インスタ映えするセンスの良い写真が好評で、アパレルブランドや化粧品メーカーから“宣伝”をお願いされることもある。有名人と言えば有名人だが、芸能人かと問われればそうではない。しかし場合によっては、そんじょそこらの芸能人より露出は多く、ネット空間で芸能人以上の衆人環視の中にいる。そうした今風な存在の彼女たちが悩むのは、SNS上にいる危険な人たちだ。

「最初は返信していたんです、ありがとうとか、応援してくださいとか。フォロワーが増えて、返信を返すことが難しくなり、いいね返しだけしていたのですが…」(ミチャさん)

 ミチャさんの元に突如送られてきたのは、Xを名乗るユーザーからの脅迫めいたダイレクトメールだった。

「俺を無視するな、人気が出るとそれか、みたいな…。そもそも男性であることも知りませんでしたし、ごめんなさいと返信したのですが、その後も一方的な恨みメッセージが送りつけられ、インスタのコメント欄にも"ブス"とか"バカ"とか誹謗中傷されるようになって…」(ミチャさん)

 懇意にしているインスタグラマーの友人に相談すると「無視するに限る」とアドバイスされた。起きていることは理不尽きわまりないのに、自分を守る手段がなさすぎるのだ。こういったトラブルが起きると、ネットで無防備なことをするからだと自己責任を問う人が必ず出てくるが、それも理不尽な言いがかりだ。ネットではなく日常生活に置き換えてみれば、自己責任という、一見、きちんとしているかのように聞こえる言葉で済まされることではないことがわかる。

 たとえば、綺麗な格好をして可愛いメイクをして街を歩いていたところ、見知らぬ男から声をかけられた。最初は笑顔でやり過ごしていたが、無視するようになると文句を言われるようになり、一挙手一投足に罵詈雑言を投げかけてくるようになった。これを、異常行動といわずしてどう表現しようか。

 また、異常な行動への対処法についても、無視するに限るとする被害者心理は当然でもある。これも、ネットではなく日常生活に置き換えれば分かりやすい。 たとえば、電車の中で奇声を上げている人がいたとする。自身が屈強な男性で、存在だけで相手を威嚇できるような風体でない限り、奇声をあげる人を諌めたりはしないだろう。異常な行動に対する現実的な対処は無視が精一杯で、それはネットでも変わらない。

「無視よりもブロックのほうが楽なのでは? そう思ったんですが友人は、ブロックだけは絶対にダメと。徹底的に無視するしかない、罵詈雑言のコメントも消しちゃダメ、そう言われたんですね」(ミチャさん)

 自身の投稿に「ブス」「バカ」と書かれ、それを放置することにも苦痛は伴う。しかし、ブロックをしてしまえば、結果的に相手はミチャさんが「自分をブロックした」すなわち、自分を相手にしてくれていると感じるに違いない。罵詈雑言のコメントを消すのも同様で、自分のコメントをミチャさんは読んでいるから消している、これは自分に対する反応だと誤解されかねない。単なる嫌がらせではない、ストーカーそっくりな言動なので、拒否する態度すらも勝手にコミュニケーションだと曲解されるのだ。

 それでも、まだ「ネットの中の出来事」と割り切っていたミチャさん。悪口を言われるのもいやがらせを受けるのも、ネットの中では珍しいことではない…そう自分に言い聞かせていたある日、想像以上の出来事が起きた。

「私が紹介した商品を販売する業者に嫌がらせメールが届いたり、行きつけの美容室に無言電話がかかってくるようになったんです。無視もブロックもできない上、現実世界にも影響が出てきた。警察に相談しても、被害がない以上は動けないし、相手が誰かわかるなら厳重注意はするとしか言われず…。警察は何もしてくれないのです」(ミチャさん)

 有名人の宿命といえばそうだが、インスタグラマーやユーチューバーの多くは芸能事務所などの組織に属さず、個人で情報を発信し活躍する人々だ。誰にとってもネットやSNSが当たり前になるほど、ミチャさんのような人たちが注目を集め、同時に危険にさらされている。取り締まる法律は何度も変更を加えられているが、運用が現実に追いついていない。

 2000年に成立した「ストーカー規制法」は、前年に起きた桶川ストーカー殺人事件をきっかけに法整備された。そのとき、ストーカーが行った嫌がらせは、近所中に中傷ビラを撒く、関係先へ手紙を送るといったことだった。それに対応した法律は、その後、急速に普及するネットへの対応にいつも出遅れている。事件で被害者が出るたびに改正されてきた。それでも、悲劇は繰り返されている。

 2000年に成立して以降、問題が多いと言われながらなかなか改正されなかったストーカー規制法が、2013年に初めて改正された。きっかけは、2012年11月に発生した逗子ストーカー殺人事件で、執拗な電子メールを送りつけることが、法が定める「つきまとい行為」に追加された。

 2016年に東京・小金井市で発生した女子大生殺人未遂事件では、ファンの男が歌手活動などを行っていた女子大生にSNSなどで執拗につきまとい、挙句の果てには切りつけるに至った。女子大生は最初無視をしたがストーカー行為はやまず、警察にも相談していたのに、悲劇は防ぐことができなかったのである。この事件をきっかけに、SNSが法の規制対象となった。

 被害者は女性だけではない。2016年6月には、有名ブロガーの男性がネットユーザーに逆恨みされ、セミナーで訪れていた福岡市内で刺殺されるという事件も起きた。この男性もまた、ネット上で絡んでくる犯人のことを無視していたが、犯人は一人勝手に恨みを募らせ、凶行に至った。防ぎようがないのだ。しかもストーカー規制法では「恋愛感情」を前提にした行為が対象となっているが、この事件のように恋愛以外の口実によるストーカーも数多く存在する。法律だけでは対応できないため、都道府県で迷惑防止条例を新たにして対応しているのが実情だ。

 無視しても相手にしても怖い人々。こうした人々の存在はネットの世界に限ったものではないかもしれないが、SNSを介したコミュニケーション上で目立つというのは事実だろう。法律はもちろん、ユーザだけでなくサービス運営側も含めた多方面からの努力が必要になっているのではないか。

関連記事(外部サイト)