SNSでの「個人間融資」に騙された被害者たちの証言

SNSでの「個人間融資」に騙された被害者たちの証言

安易な依頼が手痛い事態を招くことも

 かつて「お金を借りる」という行為には後ろめたさがつきまとい、慎重にならざるを得ないものだった。ところが、SNSを使った「個人間融資」は、その入口に誰でも簡単にたどり着け、申し込める。その敷居の低さのために広まる「個人間融資」をさらに悪用し、金銭その他を奪おうとする勢力が出現している。窮地に陥って視野が狭くなったときに、SNSを悪用する者たちにつけ込まれた末の被害について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

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 先日、SNS上で広まる「個人間融資」が、いわゆるオレオレ詐欺など「特殊詐欺」に手を染める末端要因の「リクルート」に利用されている実態を詳報した。

 SNSを使った「個人間融資」とは、ツイッターやインスタグラムなどの「金を融資する」といった書き込みをもとに、金を借りたいユーザーが金を貸す側と接触することから始まる融資。貸し手の多くは金融業としての届け出はしておらず、多くは複数の法律に違反した“闇金”だ。だが、具体的なやりとりの様子がDMなどに移って見えにくいためか、推定される取引数に対して逮捕や摘発が極端に少ない。取材を重ねた結果、得ている実感としては、SNS経由の個人間融資は真っ黒に近いグレーな存在といえる。

 そんな危ない闇金、使う方がバカだ──。

 そういって借り手を断じることは簡単にできる。だが、溺れる者は藁をも掴むとはよく言ったもの。切羽詰まった人にとって、常に身近にあるスマホで簡単にたどり着ける存在は、救命ボートのように見えてしまう。SNSを使った「個人間融資」はいま、窮地に追い込まれて冷静さを失っている人間に金を貸すことに特化し、社会経験があまりない学生や、事件や事故に巻き込まれて判断力が低下している人を標的にするが、こうした現状を逆手に取る連中も登場し始めている。

「サークルの飲み会が続き、仕送りとバイト代が底をつきました。先輩に聞いて学生ローンなども検討しましたが、親にバレると大変だし、ツイッターで見つけた"融資話"に乗っかってしまいました…」

 こう話すのは、都内の有名私大に通う女子大生・みずほさん(仮名・20才)。四国から上京してきた2年前、サッカー系サークルに入部すると、一年生リーダーに抜擢された。飲み会や食事会で支払いが足りないと身銭を切ってしまうなどのお人好しさも手伝い、仕送りやバイト代はあっという間に底をついた。知人から、未成年でも金が借りられるという「学生ローン」の存在も教えてもらったが、親や学校にバレないかという不安がのしかかる。

「無知だったんです。そもそも、お金がなければサークルを辞めたり親に相談すればよかった。でも焦ってしまい“ツイッターでならこっそり融資してもらえる”と思い込んでしまった。10万円借りようとしたところ、身分証を送れ、バイト先を教えろなど言われて、言われるがままに従ってしまい…」(みずほさん)

 結論から言うと、みずほさんは金を借りることができなかった。みずほさんが接触した“融資アカウント”は、そもそも他人に金を貸したり融資するふりをして、女性たちに身分を全てあかさせた上で、裸の写真を送るよう要求したりして、最後は肉体関係を持たないと知人や学校、親にバラすとまで脅迫されたのである。

「5万円なら写真、10万円なら肉体関係と言われ本当に恐ろしくなり…。バイト先を教えていた為に、結局お金を借りなくても、職場に来られて嫌がらせをされるかもしれない。結局、体調を崩してしまい、学校やバイトの店長に全てを話し、引っ越しをしてなんとかことなきを得ました。しかし、私の裸の写真を渡したまま、名前もバレています。今も生きた心地がしません」(みずほさん)

 金に困った女性をターゲットにし、金銭の授受を匂わせセクシャルな要求を突きつける。絵に描いたような詐欺の構図は卑劣で許されないが、被害者は女性だけではない。

「インスタで見つけた融資話に乗っかり、約10万円を失いました。融資アカウントの名前で検索すると、実際に借りた、親身になってくれて助かったという他の書き込みがあったので信用してしまったのです」

 都内の会社員・門倉さん(仮名・二十代)は、会社の飲み会の後、一人でふらりと立ち寄った新宿区大久保のバーでぼったくり被害にあった。その額30万円。なんとかカードで支払ったが、返済のあてはない。ボーナス時期までしのげば返せると思いすがったのが、インスタグラムの“融資アカウント”だった。

「20万円ほど借りたいと言うと、先に5万円の"保証金が必要"と言われました。言われるがままに5万円分のiTuneカードを買い、カードのIDを送りましたが、20万円貸す為には、もう5万円分のIDがないとダメだと話がすり替わったのです。怪しいと思いながらも、頼みの綱はここしかないと思い、結局もう5万円分送りました。案の定と言うか、連絡はそこで途絶えたのです」(門倉さん)

 違法な“個人間融資”アカウントは、こうして被害者を騙す為に「自作自演」を行いターゲットを信用させることも少なくない。被害者に別のアカウントで接触し「被害者を救済する」などと言い、さらなる現金を要求してくる例もある。

 まさに蛇の道は蛇。危ないかも知れないけれど少しくらいなら……とグレーに見える方法で金を得ようとすると、その道のプロにしゃぶり尽くされ捨てられる。自身がこのような状況に陥ったら、親や先輩、友人らに相談するという「基本」を思い出して欲しい。スマホでSNSを見ていたら見つかったから、という理由でそこにすがるのは、危ういことだと肝に銘じて欲しい。

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