レクサスRX450hL ミニバンより狭いSUVの3列シートはアリか

レクサスRX450hL ミニバンより狭いSUVの3列シートはアリか

3列シート・7人乗りのロングタイプが加わったレクサス「RX450hL」

 トヨタ自動車の高級車ブランド、レクサスのSUV「RX」がマイナーチェンジし、3列ソート・7人乗りのロングタイプが加わった。中大型ミニバンに比べて車内スペースが狭いSUVだが、果たしてレクサスブランドの乗り心地はどうなのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が試乗レポートする。

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 トヨタがアメリカを主体に世界で販売しているプレミアムラージSUV「レクサスRX」に2017年末、3.5リットルV6ハイブリッドパワートレインを搭載し、室内に2-3-2人の7人乗りが可能な3列シートを備えたロングバージョン「RX450hL」が追加された(国内販売は8月下旬〜)。

 このRX-Lは発売以降、なかなか好評なのだそうだ。車体のテールが11cm延長され、全長は実に5m。3列目シートを折り畳んだときの荷物の収容性は標準型に比べてはるかに良好で、そこが人気獲得の最大のポイントとなっている。

 一方、多人数乗車という観点では、ホイールベースを延ばさないまま後部だけを延長した関係で3列目シートが狭く、あくまで小柄な人のエマージェンシー用という意味合いしかない。

 そのシートレイアウトをあえてフルに使いながら、大人6名乗車で東京〜群馬北部を約450kmツーリングする機会があったので、所感をリポートしたい。

 出発はまず1名乗車で始まり、都内複数か所で同行する人をピックアップしていく。4名乗車まではもちろん2列目までで事足りる。2列目シートを後端までスライドさせると足元は広々。この時点では標準型のRXとほとんど同じ使い心地だ。

 最後の2名をピックアップしたところで、いよいよ3列目シートを使ってみた。2列目を後ろに下げていると、3列目の足元スペースはほぼゼロになって乗車不能になる。3列目を使うときには2列目をスライドの前端に寄せるのがほぼマストだった。

 そのシートアレンジ状態のスペースは、前席はまったく変わらず、2列目はシートを後方にスライドさせているときよりは狭いものの普通に乗ることができ、3列目は小柄な人であれば何とか乗り込めるというイメージ。さすがに中大型ミニバンのように3列フル乗車でもある程度快適性が保たれるわけではない。

 その後方のラゲッジスペースだが、3列目を立てると言うまでもなく狭い。3列目の狭さとあいまって、6名で長距離旅行をするのは現実的ではないだろう。だが、今回の東京〜群馬のような近距離、1泊2日程度の旅行であれば、全員分の荷物を収容するのはわけのないことだった。

 3列目シートには小柄な人に乗ってもらうことにして、いよいよ関越高速経由で目的地の群馬・川場村方面へ。りんごの木の花摘みなど、いろいろなところへ寄り道しながらの、のんびりとした旅だ。

 RX450hLのドライブフィールは非常におっとりとしたもの。高速道路でのクルーズは一番の得意科目で、ロードノイズも風切り音もとても小さく、路面がうねっているような場所でも上下に強く揺すられたりせず、ゆるゆるとそのうねりをサスペンションで吸収する。海でちょっと大き目のクルーザーに乗っているような感じだ。

 こう書くと、重量級SUVなのだから当たり前のように感じられるかもしれない。が、実はこの点が標準型のRXと最も異なる部分だった。筆者は2年ほど前、標準型で1500kmほどツーリングをしてみたことがあるのだが、その時はサスペンションのしなやかさがまったく不足し、路面の不整が少しきつくなっただけで揺すられ感が強く出るのに驚いた。

 RXはアメリカ向けのラージサイズセダン「アヴァロン」をベースに作られている。もちろんしっかり作ってあるのだが、いかんせん車体やシャシー(サスペンションやブレーキなど)の能力には制約がある。

 RXが発売された当時、トヨタはレクサスをメルセデス・ベンツやBMWなどに拮抗するブランドに育てようとしており、その一環で走行性能を上げようとしていた。その心意気はよしとして、シャシーに能力以上の仕事をさせようとすると、得てしてがさつな味付けになってしまう。RXとその下のミッドサイズSUV「NX」は、その悪影響がモロに出ていた。

 今回のRX450hLも事前に一番懸念していたのはその点だったのだが、乗ってみるとまったく問題なしであった。無理をしすぎると良くないとみて自然なチューニングに回帰したのか、3列シート車だからそういう味付けにしたのかは定かではないが、シャシーの能力を過剰に使わず、無駄にもせず、それにぴったり見合ったチューニングをやるのがクルマを良くする一番の方法なのだ。

 サスペンションが柔らかくなり、車体の揺れを抑制する減衰力も弱められたことで、高速道路を降りてからの群馬の山岳路などでの敏捷性はサスペンションの固かった標準型に比べるとそれなりに落ちるように感じられた。

 だが、多人数乗車のドライブではそれは何らかのアクシデントで緊急回避を必要とするようなシーンに出くわさないかぎり問題にはならないだろう。多人数乗車のレジャーツーリングでドライバーが速度制限を大幅に逸脱しながら山岳路をブッ飛ばすなど、普通はやらないからだ。

 ゆったりとした走りに徹しているかぎり、RX450hLの室内は荒れた道、未舗装路などでも上々の快適さが保たれた。また、敏捷性が低いと言ってもクルマ酔いするような揺り戻しは実によく抑えられているのも好感が持てた。

 パワートレインは3.5リットルV6にトヨタお得意の2モーターハイブリッド「THS II」を組み合わせたもの。V6エンジンはミラーサイクルという高効率タイプだ。

 このシステム、まずパワー的にはまったく不足はない。RX450hLは車両重量が2.2トン超と、大型オフロード4×4並みに大きいが、スロットル開度を開けるとあっという間に車速が上がる。構造的に変速段がないので、加速感も滑らかだ。

 一方、燃費はこれだけの大型SUVゆえ、ハイブリッドへの期待値ほどには良くない。高速道路をそこまで飛ばさず平和にクルーズしていても、実燃費はせいぜいリッター11km/リットルというところ。都内ではおおむねリッター8km。それでも純エンジン車であれば5km台に落ちかねないことを考えれば、十分に経済的ではあった。

 その後のドライブ雑感だが、3列までを使ったツーリングは思いのほか楽しいものだった。狭い3列目からはスペースに対する不満はもちろん聞かれたが、それでもりんごの花摘みを終えた日曜の午後、関越渋滞をパスするために赤城山の麓から休憩なしで一気に都心まで帰ってもたいした疲れは招かなかった。

 試乗車は2列目シートに大型のディスプレイが装備されており、それは前席のカーナビの液晶画面と違って常時見ることができる。2列目、3列目の乗員はヒマなときにはその画面でテレビを見、景色の良いところにやってきたら絶景に目をやっていた。

 今日、SUVは世界の自動車マーケットで一大ブームとなっており、3列シート車の需要も徐々に高まっている。ミニバンよりはずっと狭いが、ミニバンより走りに適したディメンションを持ち、見た目の印象もアクティビティに富んでいるという特性が支持されているのだろう。プレミアムセグメントはミニバンのモデル数が少ないため、余計にロングSUVの出番が増える。

 ホイールベースは標準型そのままにボディの後方だけを延長するという手法で作られたRX450hLは、3列シートSUVのライバルの中では決してスペーシーなわけではないが、それでも多人数乗車でのアクティブライフを楽しめる最低限の機能は有していた。

 この先、SUV人気がどこまで続くのかは予想が難しいが、高所得者層の遊びグルマとしては悪くない選択肢であるように思われた。

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