銃強奪犯の父は関テレ常務、フジテレビが緊迫した長い1日

銃強奪犯の父は関テレ常務、フジテレビが緊迫した長い1日

「身内案件」にフジテレビに緊張が走った

 日本列島を震撼させた大阪拳銃強奪事件は、発生から25時間後に逃走犯逮捕に至った。しかし、それを報じるテレビの裏側では、別の“緊迫ライブ”が繰り広げられていた。

 6月19日に開かれた関西テレビ(大阪市)の定時株主総会と取締役会では、新しく就任する嘉納修治会長と羽牟正一社長のお披露目の場となるはずだった。ところが、予定していた晴れの舞台は一転、神妙な会見の場となってしまった。

 拳銃強奪事件で、強盗殺人未遂容疑で逮捕された飯森裕次郎容疑者(33)の父親で、同局の常務取締役だった飯森睦尚氏が退任したことが発表された。

「本人の気持ちを素直に受け入れた」

 そう語った嘉納新会長は、フジテレビの持ち株会社であるフジ・メディア・ホールディングス会長でもある。

「この総会はうち(フジ)から嘉納会長が出て会見するにもかかわらず、それどころではなくなったことに関テレ側はお詫びしきりでした」(フジ幹部)

 しかし、それ以上に事件で困惑したのは、フジテレビの“現場”だったようだ。

◆“関テレ”には触れない

 G20を控える大阪府吹田市の千里山交番前で巡査が包丁で刺され、拳銃が奪われたのは6月16日の早朝だった。

 大阪府警が不審者の画像を公開すると、父親から「息子に似ている」と通報があり、翌17日早朝には飯森容疑者が逮捕された。

 報道関係者の間では、前夜の時点で早期逮捕に協力した父親が「関西テレビの常務」という情報が巡り、系列のキー局であるフジ局内には緊張が走ったという。情報番組ディレクターが、そこからのフジの“長い長い一日”についてこう語る。

「逃走犯、それも銃を持っているとなれば重大ニュースなので各局が取材に動いていた。

 ところが、父親がフジ系列の関テレの常務であることに加え、飯森容疑者もかつてフジ系列の岩手めんこいテレビの関連会社『めんこいエンタープライズ』に勤務していたことが発覚すると、フジ局内ではこれは“身内案件”だから慎重な対応が必要になるという空気に一転しました。なにせ3日後には嘉納会長のお披露目も兼ねた関テレの株主総会を控えていましたから」

 すぐに飯森容疑者のフェイスブックが特定されたが、そこにはフジとの関係を示唆するような画像も掲載されていた。

「飯森容疑者は円周率の問題を解いたようなメモの画像を載せています。そのメモの下部に『BSフジLIVE PRIME NEWS』のロゴがあった。これは『プライムニュースの集い』という毎年3月に開かれる会合の記念品として配られたメモ帳とみられます。

 10周年のマークもあるので今年の会とも推測されましたが、詳しいことはわからず。他局の記者から個人的に問い合わせがあったが、何と答えていいのか困惑するばかりでした」(同前)

 事件の関係者が身近な人物であれば特ダネのチャンスは増えるものだが、フジの出足は鈍かった。

 飯森容疑者が逮捕された17日朝の情報番組『とくダネ!』や午後の『直撃LIVEグッディ!』では、事件について大きく時間を割いたが、“関テレ”に触れることはなかった。フジ関係者が言う。

「逮捕直後の番組では父親については伏せるということで関テレ側との話がついていたようです。確かに容疑者の父親の職業を明かす必要性は低く、父親本人への確認も取れていなかった。それにまだ他局もそこまで報じていなかった。飯森容疑者の職歴について『元自衛官』を強調して、『めんこいエンタープライズ』について触れなかったのにも配慮があったのでしょう」

 そこまで気を遣う背景にはフジと関テレとの微妙な関係があるという。

 関テレはフジ系列の準キー局ではあるが、他の系列局とは「別格」といわれる。フジよりもわずかに早い1958年に放送開始し、かつての人気番組『発掘!あるある大事典』『SMAP×SMAP』などを制作。現在も全国ネットで「火曜21時」のドラマ枠を持つなど、キー局のフジと比肩する存在である。

「フジの中でも“天下の関テレ様”と呼ぶ局員も多い。系列なので基本的には“仲間”ですが、普段の番組作りでも関テレが映像素材を貸さない、警察情報を渡さないというような“ライバル意識”があるように思います」(同前)

◆アナウンサーが“補足”

 しかし、事態は変わってくる。昼には、読売新聞(オンライン)をはじめ「父親は関西テレビの役員」との情報が広がり始めたのだ。

「“なぜフジは報じないのか”といった批判が出始めたこともあり、午後になって関テレ側と話し合いが持たれました。さすがに勤務先を実名で取り上げるべきではないかということをフジから提案し、夕方のニュースで扱うということに落ち着きました」(同前)

 そうして『Live News it!』で初めて、容疑者の父親が実名で発表したコメントを紹介し、木村拓也アナが「なお、父親は関西テレビの役員を務めています」と補足した。それまでのワイドショーでの熱量とは打って変わって、淡々と読み上げられると次のニュースへと移った。局内の極めてデリケートな判断が窺える場面だった。

 報道の経緯についてフジ、関テレに問い合わせたが、両局ともに「お答えしておりません」との回答だった。前出・フジ関係者が言う。

「フジの株主総会も26日に控えており、事件の続報については引き続き難しい判断が迫られることになる」

 常務再任を辞退した飯森氏だが、顧問に就任し関テレに残留する立場となった。フジの“NOグッディ”はもうしばらく続きそうだ。

※週刊ポスト2019年7月5日号

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