億万長者が続々の「eスポーツ」 プロゲーマー育成の難しさ

eスポーツの世界も億単位のプレイヤーが続々誕生 Ninjaは10億円超の年収と報道

記事まとめ

  • 八村塁の4億円年俸が話題になったが、eスポーツ界も続々と億万長者を生み出している
  • Ninjaは10億円超の年収と報じられドイツの26歳KuroKyは賞金だけで4億円超を稼いでいる
  • 有力プレイヤーは広告媒体としての価値も認められ、ブランドと提携し広告費を得ている

億万長者が続々の「eスポーツ」 プロゲーマー育成の難しさ

億万長者が続々の「eスポーツ」 プロゲーマー育成の難しさ

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 バスケットボールのNBAドラフト一巡名に指名された八村塁がいきなり4億円年俸を得られることで話題になったが、「eスポーツ」の世界もいま続々と億単位のプレイヤーを生み出している。米Time誌が選出する「世界で最も影響力のある100人」にトランプ大統領などとともに選ばれたゲーム『Fortnite(フォートナイト)』プレイヤーNinjaは10億円超の年収と報じられ、『Dota 2』(ドータ・ツー)プレイヤーのトップに君臨するドイツの26歳KuroKyは賞金だけで4億円超を稼いでいる。ジャーナリストの西田宗千佳氏が、ゲームの競技会がスポーツへと発展し多くの称賛と賞金が集まるなか、課題もある現状について解説する。

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 ここ数年で、ゲームが「eスポーツ」として紹介されることが増えてきた。オリンピック競技に含める、という話は頓挫したが、eスポーツという言葉への注目は高まる一方だ。

 だが、ゲームに「スポーツ」という言葉を 使うことについて、違和感を訴える人は少なくない。画面に向かってコントローラーを操作する姿は、確かに一般的なスポーツのイメージとは異なっている部分がある。

 しかし、筆者はそれでも「eスポーツはスポーツと名乗るに足る条件を備えている」と考えている。一方で、多くのスポーツとは異なる部分が厳然と存在するのも事実である。eスポーツはなぜ「スポーツ」と呼ばれるようになったのか? その点を解説してみたい。

■巨額の賞金が動く「プロ競技」が成長

 eスポーツ・トッププロの賞金が数億円、というニュースを見たことはないだろうか。日本では法的な問題があって高額賞金を伴ったイベントは開催しづらい状況にあるが、海外ではそうではない。世界最大級の格闘ゲームに関する大会のひとつ、カプコンカップ2018年度世界大会は、賞金総額が40万ドル(約4400万円)、優勝賞金25万ドル(約2750万円)。Epic Gamesが開催する「Fortnite World Cup」の賞金総額は1億ドル(約110億円)、優勝賞金3000万ドル(約33億円)という巨大イベントになっている。

 それだけのイベントに勝つ可能性のある有力プレイヤーは、当然それだけ注目されるので、広告媒体としての価値も認められている。パソコンやヘッドホンなどのメーカー、エナジードリンクブランドなどと提携し、広告費を得ている。

 ゲーム大会の賞金と広告費で生計を立てる人々を、一般に「プロゲーマー」という。ちょっとゲームが上手ければなれる、というものではない。長時間にわたる修練と恵まれた能力があって、ようやく成功できる狭き門である。彼らのゲームに対する姿勢はアスリートそのものであり、ゲームを知らない人が考える「ちょっとゲームが上手い人」というレベルからはかけ離れた存在だ。まさに、他のスポーツのプロと同じである。

 プロがいて大きな額のお金が動く様がプロスポーツの世界に似ているため、勝ち負けのあるゲームの世界を「eスポーツ」と呼ぶようになった……。簡単にいえば、そういう図式である。

■本質は「ゲームプレイを見て楽しむ」人の増加にあり

 ただし、確かにプロがいることがeスポーツの世界を広げたことは事実である。一方で、なぜ巨額のイベントが成立するようになったのか、その点を考えておく必要がある。

 大きな転機となったのは、YouTubeに代表される「ネット動画」の登場だ。

 ゲームの大会やイベントは30年以上前から存在した。ゲームの販売促進を兼ねて、得点を競う競技会や対戦イベントはさほど珍しくない。だが、そうした存在はあくまで「イベントごと」にすぎなかった。参加するのはゲームをプレイしているファンがほとんどだったからだ。

 だが、ネット動画を配信するサービスが広がると、事情は少しずつ変わっていく。イベントに足を運ぶような熱心なファンでなくても、日常的にゲームをプレイする人々の映像を見られるようになっていったからだ。すると、映像を見ているのは「ゲームを実際にプレイしている人々」だけではなくなった。ゲームの対戦映像を見ることそのものを楽しむファンが増えたのだ。野球ファンは、常に野球のプレイヤーではない。ボクシングファンのうち、実際にボクシングをしている人の割合はとても少ないはずだ。

 スポーツは、それを「実際にプレイする」ことだけを指すものではない。プロスポーツ選手をはじめとした、優れた人々の競技を「見て楽しむ」という要素、優れた人々に憧れる、という要素もある。eスポーツの本質とは、高額な賞金にあるのではない。「見て楽しむ」「応援する、憧れる」といった、プロスポーツとファンの関係に近いものが成立する、という点にある。

■プロの育成やセカンドキャリアには課題も

 ゲームビジネスの収益は、これまではゲームの販売やサービス利用料金が中心。そこにキャラクターなどのマーチャンダイズ料金が追加される程度だった。だが、ゲームを見て楽しむ人が増えるということは、そこからの収益が生まれる可能性が高くなる、ということである。

 すでに述べたように、ゲームを見るのは、プレイするよりも手軽だ。それだけ、広く薄く収益を集められる可能性が出てくる。しかも、ゲームのプレイを見せることは、それそのものが、ゲームにとって大きなプロモーションともなる。それだからこそ、ゲームメーカーにとってeスポーツは新しい収益源として注目の存在なのだ。

 だが、そうした特性こそが、eスポーツと他のスポーツの違いとも言える。

 スポーツは、世界中で同じルールで争われるものであり、ルール改定はあるが、存在自体が大きく変わってしまうことはまれだ。ユニフォームも戦術も変わってはいるが、50年前も今も、サッカーはサッカーだ。「ブレインスポーツ」と言われるチェスや囲碁、将棋なども、ルールはそうそう変わらない。

 だが、ゲームは商品である。ゲームをしないと人々からは同じように見えるかもしれないが、バージョンアップによってルールや有利不利など含む「ゲームバランス」は定期的に変化する。商品が大きく代替わりし、続編が出ることもある。宣伝としての意味合いも大きいため、eスポーツが扱う「競技」であるゲームは変わって行かざるを得ない。この点は、他のスポーツと大きく違う。そのことでゲームがスポーツではない、と断じる要因にはならないが、大会運営などの扱いは変わらざるを得ない。

 また、生まれたばかりの分野なので、プロの育成やセカンドキャリアなど、「プロゲーマー」という職業に絡む問題もある。

 反射神経や視力の衰えは、ゲームの腕に大きく影響する。長時間駆け引きをするには、集中力の維持も必要だ。経験や判断力でカバーできる領域もあるが、他のスポーツと同様、加齢による衰えはある。ゲームのプロとして、一生賞金だけで稼ぐのは不可能だ。また、ゲームは日々変わっていくため、「ゲーマーをプロとして育てる」のも難しい。ゲームそのものでどう勝つか、うまくなるかは、結局自分で編み出さねばならない。「指導」できるのは、生活スタイルや稼ぐための方法論といった、プロとして生活するための外堀にあたる部分、といっていい。プロゲーマーのマネジメント手法も確立していない。

 プロスポーツに似た特性を持ちながら、新しいジャンルであるがゆえに未成熟な部分もあり、一方で大きなお金が動いている。そのアンバランスさが、eスポーツの課題といえる。一方で、そうした危うさを含む部分もまた、勃興期ならではの魅力、ということもできるのだが。

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