乱立する「スマホ決済」 登録しても半数が使わない現状

7payとファミペイがスタートし「スマホ決済」が乱立 登録も半数が使っていないと回答

記事まとめ

  • スマホ決済サービスがコンビニでも本格的に始まり、"キャッシュレス時代"真っ盛りとも
  • 7payとファミペイがスタートし「スマホ決済」が乱立 登録も半数が使っていないと回答
  • 7月1日開始のセブン-イレブンの7payは、不正アクセス被害のトラブルに見舞われた

乱立する「スマホ決済」 登録しても半数が使わない現状

乱立する「スマホ決済」 登録しても半数が使わない現状

スマホ決済サービスの種類は増えているが…

 7月よりコンビニでも本格的にサービスが始まったスマホ決済。世は“キャッシュレス時代”真っ盛りともいえるが、その利用実態を見てみると、意外にもスマホのヘビーユーザーである若年層でさえ乱立するスマホ決済に戸惑っている現実がある。神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏がレポートする。

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 昨年から急に騒がしくなったスマホを使ったキャッシュレスサービス。興味や関心はあるが、まだ使っていないという人も多いでしょう。「PayPay」が火をつけた大型のポイント還元セールは、その後、「LINE Pay」や「Origami Pay」などでも実施され、その派手な宣伝は多くの人たちの関心を集めました。

 今年に入ってからは、スーパー、ドラッグストア、飲食店などでもスマホを利用したQRコード決済サービスが使えるところが急増してきました。そして、7月1日からはコンビニのセブン-イレブン7pay)とファミリーマート(ファミペイ)が、それぞれ独自のスマホ決済をスタートさせました。

 コンビニでは7payが不正アクセス被害のトラブルに見舞われ出足で躓いてしまいましたが、いざスマホ決済を利用してみると、キャンペーンのせいもありますが、相当な割引を受けることが可能です。さらに別のポイントも併用できることが多いので、知らないうちにポイント還元を受けることもできます。また、いつどこで使ったのかも一目で見ることもできますから、金銭の管理にも便利です。

◆登録したけど約半数が使っていない

 しかし、スマホ決済の普及はサービスの増加とは裏腹に道半ばのようです。市場調査会社のリサーチ・アンド・ディベロプメントは、首都圏在住の20歳から69歳を対象に「キャッシュレス決済」に関する調査を実施していますが、それによると、スマホQRコード決済の「所有・登録経験あり」と回答した人は29.2%でしたが、意外にも登録者の約半数が使っていないという結果が出ています。

 多くの人たちがキャンペーンのCMを見て、アプリを登録するところまではやるのですが、実際に使っていないのです。同じ調査では、店での買い物(ネットショッピング含む)について決済方法別の利用率も調べていますが、スマホを使った電子マネーの利用率が19.2%だったのに対し、金額割合では3%程度と少額での利用が多く、これも意外なことに現金決済割合が高いのは20代男女ということが明らかになっています。

◆半年でスマホ決済は急増したが……

 一方、ネットリサーチ企業のマクロミルが全国20歳から69歳の男女を対象にした調査では、利用している支払い方法の第1位は「現金」で97%でした。次いで「クレジットカード」75%、「銀行振り込み・引き落とし」38%、それに続いてSuica、PASMOといった「交通系ICカード」で37%、WAON、nanaco、楽天Edyといった「流通系ICカード」で34%でした。

 LINE PayやApple Payなどの「スマホ決済」は19%でまだ少ないものの、2018年10月から2019年4月の半年で164%という急激な伸びは示しています。

◆スマホ決済ではPayPayが一歩リードだが……

 こんな調査もあります。デジタルマーケティング事業を手掛けるナイルが4月23日から4月30日まで10代から60代以上の男女を対象に調査した結果によると、利用したことのあるQRコード決済サービスは、「PayPay」が18.2%で最も多く、次いで「楽天ペイ」の13.1%、「LINE Pay」の12.9%と続いているそうです。

 PayPayの2019年3月期決算は、売上収益5億9500万円に対して、当期利益はマイナス367億8700万円と大幅な赤字になっています。ソフトバンクとヤフーは昨年の100億円還元キャンペーンに続いて、第2弾の100億円還元キャンペーンを実施し、さらに還元キャンペーンを継続して早期に400万人登録を目指すといいます。競合するLine Payやd払いなども、同様の還元キャンペーンを行っており、まるでチキンレースの様相を呈しています。

◆キャッシュレスで人との触れ合いもなくなる?

 さて、実際に使ってみるとどうでしょうか。第1関門は、スマホ決済で必要なアプリをダウンロードして、登録を行うことです。

「いろいろなアプリを使っているので、これ以上、いろんな決済アプリをダウンロードするのは……」と話す若者がいたり、「ダウンロードまではできたんですけど、そこからの登録手順がなんだか分からなくて」と困っていたのは、ドラッグストアの50歳代の女性従業員です。いずれも「割引キャンペーンやっているので、興味あるのですが」と言います。

 私も飲食店やドラッグストアなどでスマホ決済を利用してみたところ、中高年の従業員の人たちから、「使ってみてどうですか?」、「私でも使えるかしら」などと声をかけられることが多かったのには驚きでした。Tポイントやdポイント、Pontaポイントなどポイントが別に付けられる場合も多く、手間がかかるために、むしろ会話が弾むことが多かったのです。

◆大学生も困惑

 さらにスマホ決済の利用動向を探ろうと、私は6月上旬、スマホの利用時間が多い大学生100人(3年生・4年生)にアンケート調査を実施しました。その結果、なんらかのスマホ決済を利用しているのは25%、4人に1人とやはり思ったより少ないことが判明しました。

 一方で、交通系ICカードを利用している(重複も含む)学生は95%と高い割合になりました。まったく使っていない学生は5%。10%の学生はクレジットカードを利用していました。

 学生たちに意見を聞いたところ、「チャージ式の交通系ICカードの方が安心できる」、「セキュリティ面が不安だ」と言う意見が多く、特に「たくさんありすぎて、どれがトクなのか分からない」と言った意見も多く出されました。

 また、「スマホ内にアプリがいっぱいで、これ以上入れたくない」と、初めから使用する気のない学生たちもいました。学生たちのスマホには、音楽や画像、動画、ポイントカードなどのアプリがたくさん入っています。

「飲食店でも、家電量販店でも、なんでもアプリをダウンロードしないと特典をもらえない店ばかりで面倒くさい」と話す学生も。さまざまな企業がそれぞれにアプリを提供しているために、利用者側はキャッシュレスの利便性以前に疲れてしまっているようです。

 実際に支払いをしようとしてレジに並んでみると、キャッシュレス用のアプリを立ち上げ、さらにポイント用のアプリも立ち上げて──と準備をしなくてはいけないし、店舗によっては電波状態が悪くて反応が遅い場合もあります。1回使ってみて、こうした手間がかかることにがっかりしてしまったという学生もいました。

◆政府の思惑通り消費税率上昇で一気に普及するか

 政府は、キャッシレス化を2025年に40%、さらに将来的には80%まで引き上げると表明しています。経済産業省はキャッシュレス決済ができる店を検索したり、どの支払い方法がトクかの情報を知ることができるサイトなども公開しています。

 今年の10月には消費税が8%から10%に引き上げられる予定です。それに併せて、10月から9か月間、政府はキャッシュレス決済を利用した消費者に対し、購入額の5%もしくは2%分をポイントやキャッシュバックで還元する施策を決めています。これによって中高齢者の使用も増加するのではという期待も高いようです。

 一方、商業者側からすると従来のクレジットカードと比較すると手数料が安く、さらに口座への振り込みが翌日から2日間と短いことなどから、キャッシュレス決済の導入を歓迎する経営者も多いのです。

 しかし、流通業の関係者は「どれを使ってよいのか分からない競合状態と、アプリの使い勝手、それからセキュリティなどへの不安が解消されないと、巨額の還元キャンペーン狙いだけで、一気に熱が冷める可能性もある」と危惧しています。

◆利用者目線のサービスが広がるか

 キャッシュレス決済に乗り出す事業者の動きを見てみると、4月にはPayPayがイオンとの提携を発表し、決済金額の20%を還元する「イオンでPayPayはじまるキャンペーン」を実施しました。6月に入ると、ヤフーは電子マネー「Yahoo!マネー」を9月30日に「PayPay」に統合すると発表しました。今後、乱立している決済サービスは整理統合されていくでしょう。

 また、LINEとメルカリ、NTTドコモの国内3社に、アリババの「支付宝(アリペイ)」や騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャットペイ)」の中国大手2社がQRコードを共通化する取り組みを始めると発表したように、今後はこうした事業者間の連携の動きも急速に進むものと思われます。

 スマホ決済の普及や利用率アップの鍵を握るのは、サービス提供会社がいかに利用しやすいサービスを提供できるかにかかっています。もし、利用者目線のサービスが広がらなければ、また「登録したけど約半数が使っていない」状態に逆戻りする可能性も高いのではないでしょうか。

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