暴力団幹部「一般人が反社かどうか見抜くのはムリ」

暴力団幹部「一般人が反社かどうか見抜くのはムリ」

反社を見分けることはできる?

 警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団幹部や元刑事に“反社”の定義を聞く。

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「だいたい吉本芸人たちがかわいそうですよ。あの連中が忘年会に行った時、特殊詐欺グループのやつらもそのフロント企業も、反社(反社会的勢力)扱いになっていませんからね」

 暴力団幹部はそう言って首を傾げた。

「問題の捉え方がおかしい」

 吉本興業ほかの芸人たちが、闇営業で特殊詐欺グループの忘年会に出席しギャラをもらっていた問題で、暴力団幹部はこう話した。反社会的勢力の認定は定義にあいまいな所があり、当時、特殊詐欺グループが反社だと認定するだけの根拠はなく、認定された時期にも問題があると指摘したのだ。

 謝罪会見を開いた宮迫博之は、そのグループが吉本を通したイベントのスポンサーだと聞かされていたと話した。だが吉本興業の岡本昭彦社長は、会見でこれを否定、「すべての取引先に反社チェックをしている」と述べた。

「フロント企業がイベントのスポンサーになった時、やつらはまだ逮捕されていないし、逮捕歴もなかったから反社かどうかはわからない。あの写真が撮られた時、やつらは普通の人。その後でオレオレ詐欺だとわかって逮捕され、反社扱いになっている」

 暴力団幹部からすれば、逮捕前で反社と認定される前なら“普通の人”なのだ。

「マスコミだって吉本だって、あの写真が撮られた時、やつらが反社扱いになっていないとわかってると思うけどね。なのに誰もそこを言わないし、取り上げない。だから、芸人たちは反社の忘年会に出たことになっているが、本当は違う。

 それにあの忘年会、場所は一流ホテルだ。そん時、やつらは普通の人だから、一流ホテルも貸している。反社扱いされていたら、ホテルは貸さない」

 写真週刊誌『フライデー』に掲載された写真は、2014年12月、都内の一流ホテルで行われた特殊詐欺グループの忘年会でのもの。だが詐欺グループが逮捕されたのは、翌2015年の6月。忘年会が行われた時、詐欺グループはまだ逮捕前だ。同じく『フライデー』に掲載された宮迫と金塊強奪犯とが一緒の写真は、撮られたのが2016年7月。福岡市で事件が起きた3週間後ではあるが、強奪犯が逮捕されたのは2017年5月だ。

 彼らに前科前歴がなければ、芸人たちが彼らを危ないやつらだと感じても、反社だと見抜くことはできないだろうと暴力団幹部は話す。

「一緒に写真を撮る、営業に行く、ホテルは部屋を貸す。その後、事件になって逮捕され、そいつらは反社扱いになった。そういうのが後になって出てきたら、いったい何年前まで写真や営業やらをさかのぼればいいんだって話ですよ。やつらがやっていたことは違法でも、その時点では反社扱いではない。だけど写真が公になった時は反社だ。そんなことは山のようにある。そんな問題を何年前までさかのぼって、ここからはダメだと線引きするのか。暴排条例までさかのぼればいいのか」

 暴力団幹部の言うことも、確かに一理ある。

「だからね、本当の暴力団なら事前にわかるが、半グレだったら、それが反社かどうかなんて一般の人にはわからない。海に行けば今時、入れ墨をしている人はうんざりするほどいる。入れ墨が見えたら全部、反社にするかって。そんなことしたら人権問題だ。だいたい、ヘタに前科を照会したら人権問題になる」

「吉本はこの問題を甘く見たね。根本的な問題は彼らがギャラをもらっていたか、もらっていなかったかだけで、本来こんなに騒ぐことではなかったのに。吉本も芸人も、その時は反社だと知りませんでした、と謝れば済むことだった。まあ、その前に、オレオレをやっていると聞いていたなら話は別だけどね」

 暴力団幹部はそう断言した。

 ところで、暴力団はどうやって半グレの情報を入手しているのか?

「そこはそれなりにルートは、いろいろあるからね。警察がわかるのはパクってからだ。任意で聴取を受けたとか、逮捕歴があるとか。事件を起こした事務所に名簿があって、そこに載っていたとか。問題のある場所や会社で写真を撮った時、そこに写っていたとか。あの連中、不動産屋、飲食にエステと、抜け道になる会社をあれこれ作るからね。本当の暴力団の方が反社かどうか見分けやすい」

 本当の暴力団という言葉が出たが、公安委員会から指定された者は指定暴力団の構成員となる。指定されていない者は暴力団と認定されず、暴対法は適用されない。だが周辺者または指定外の暴力団になるのだと、企業などに対策をアドバイスしている元刑事は言う。

 では、警察はどのようにして情報を収集するのか?

「過去の処分歴や組織の出入り、組関係者との交際、バッジ、代紋、名刺、取り調べの際の供述、風評、関係者と一緒に撮った写真、捜索の時にその事務所や部屋にいたとか、携帯に登録されていたとか」

 十数年前になるが、警察が作成した暴力団や右翼団体構成員のリストを見たことがある。「人定」が詳しく書かれた分厚い物だったが、その後、暴対法などができ、地下に潜り、フロント企業が増え、暴力団の情報を取るのが難しくなったと聞く。だが元刑事は「特にそんなことはない」と言う。

 ちなみに「人定」とは人物特定のことで、住所、氏名、年齢、生年月日、職業、電話番号などを明らかにして、身元を確認することである。

 では一般人は相手が反社かどうか、どうやって見抜けばいいのだろうか?

「警察OBでもあっても、前科や暴力団の照会はできないのが現状。昔なら聞けたものが、今は教えた側が情報漏えいになってしまうため、こちらからも聞けない。だから大手の企業は各々、報道された被疑者や被疑会社名、関係者の人定についてデータ化して活用している」

「事件絡みであれば警察に相談できるが、その場合でも“何組で反社です”とはっきり回答してくれない。奥歯に物が挟まったような言い方などから、こちらで判断するしかない」

 吉本は警察や暴追センター(暴力追放運動推進センター)に相談していると会見で話していたが。

「東京都には暴追都民センターがあり、“不当要求”や“暴力団絡みの民事相談”などの相談ができるが、ここでもはっきりわからない。相手が暴力団と名乗っても、本当に暴力団かどうか判断できない。名刺を出されれば、そう判断してもよいだろうが、結局自分の判断でしかない」

 元刑事は困ったように表情をゆがめた。

「結果、一般の人が、相手が反社かどうかはっきりと確認することはできないだろう」

 意図せずとも反社との接点ができることもある。だがそれを見分けるのは難しいというのが現実のようだ。

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