「嫌韓」という病 改めて考えるメリットとデメリット

「嫌韓」という病 改めて考えるメリットとデメリット

日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典に出席した文在寅大統領(AFP=時事)

 世の中の「分断」が進んでいると言われる。時には冷静かつ客観的な分析も必要だろう。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

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 口角泡を飛ばして主張なさっている方々も、今の日本のこういう嫌な雰囲気を良しとしているんでしょうか。「さすが日本、たいしたもんだ」と思っているのでしょうか。あるいは、目先の快感の追求に忙しくて何も見えていないのでしょうか。

 お気づきのとおり、いつの間にか日本には「嫌韓」という恥ずかしい病が広まってしまいました。なかでも「右でも左でもない普通の日本人」を自称しているような人が、とくに罹りやすいようです。この病のウイルスはかなり強力で、いったん罹ってしまうと簡単には治りません。本人は自分が病んでいる自覚がないので、ウイルスを巻き散らかして周囲を巻き込んだり、悪化して後戻りできない状態になったりします。

 罹りやすいタイプの人は読解力に難がある傾向も見受けられるので、念入りに申し上げます。病だと申し上げたいのは、隣りの国に対して憎悪を募らせ、悪口を言わずにいられない「嫌韓」という行為です。病に罹っている方の中で、早とちりして喜んだ人がいたとしたら、赤っ恥をかかせてすいません。

 ウイルスの影響を受けるのは、個人だけではなくメディアも同じ。主義主張や節度のようなものはいったん横に置いて、そういう人が喜びそうな記事や番組を作ればウケるかもという誘惑に、ついつい負けてしまいます。なんとも恐ろしいことです。

「嫌韓」という病がいかに厄介でいかに残念か、すでに罹っている人にはピンと来ないかもしれません。それを考えるために、まずは「嫌韓」に染まったりそういう発言を繰り返したりすることでどんな「メリット」があるのか、あえて着目してみましょう。

●「嫌韓」という病に罹ってしまうことによる5つの「メリット」

その1「どんなにダメな自分でも『みんなが言っているから』という虎の威を借りて、とりあえず『強い自分』になった気になれる」
その2「相手の側に非がある前提で非難することで、自分がやっていることの醜さから目をそらしつつ攻撃欲を満たすことができる」
その3「ネットを見渡せば、『嫌韓』を肯定してくれる手前味噌で薄っぺらい言説が蔓延しているので、安心感や連帯感が得られる」
その4「結局は何らかの意図で流された情報に踊らされているだけなのに、『自分は無知な愚民どもとは違う』と選民意識を抱ける」
その5「身近な国や民族をとことん悪く言うことで、自分や日本の体たらくから目をそらして、かりそめの自信を持つことができる」

 ああ、なんてタチが悪いんでしょう。人はそもそも弱い生き物だし、ここ数十年の日本は自信も経済力も未来への希望もすっかりなくなって、ウイルスが蔓延する条件がそろっていたのかもしれません。それにしても、こんなわかりやすい病にまんまと罹って、こんな恥ずかしい「メリット」に溺れてしまう人が多いのは、じつに情けないことです。

 ウイルスの蔓延を少しでも食い止めるために、そして、幸いにしてまだ軽症な人が「やっぱりそっちに行ったらマズイかも」と気付いて引き返してもらえるように、続いては「嫌韓」という病によって引き起こされるデメリットを考えてみましょう。

●「嫌韓」という病に罹ってしまうことによる5つの「デメリット」

その1「この人は大きな力に対して尻尾を振るしかないくせに、弱い自分をごまかしたくて虚勢を張るのが大好きなんだなと思われる」
その2「見事に踊らされているだけなのに、自分では『本当のこと』を知っている気になれるなんて、おめでたい人だなあと思われる」
その3「『嫌韓』な発言や態度が在日韓国人の人をいかに傷つけるか、そんな簡単なことにも気付けない想像力ゼロの人だと思われる」
その4「口実を見つけて感情的にわめくばかりで、他国や他民族に敬意を払うという当たり前のことができない幼稚な人だと思われる」
その5「本人はいい気なもんだけど、『日本が差別的な国と世界に思われるじゃないか。いいかげんにしてくれ』と苦々しく思われる」

 ああ、なんて残念なんでしょう。ほかにも、「差別」という人間としてもっとも恥ずかしいことを平気でやるとか、都合のいい自己正当化に余念がないとか、自分の国の過去を直視する勇気がないとか、過去の過ちを反省するどころか堂々と開き直るとか、そのへんの「あらためて言うまでもなくダメな要素」もたくさんあります。

 こう言っても、すでに重症の人は「向こうが悪いんだ!」「あいつらがこうだからだ!」とムキになって言い張りそうです。国と国との関係にせよ、人と人との関係にせよ、どちらかが一方的に悪いなんてことがあり得ると思っているとしたら、大人としてあまりに浅はか。昨今の出来事にしたって、どうひいき目に見ても「どっちもどっち」です。

 幸いにしてまだ罹患していない方は、5つの「メリット」を見て警戒を深めたり、5つの「デメリット」を見て恐ろしさを再確認したりしてください。日々、嫌なこともあるでしょうけど、うっかり甘い誘惑に乗ってしまったら、堕ちるのはあっという間です。ネットを見ていて興奮してきたら、うがいや手洗いで気持ちを落ち着かせましょう。

「嫌韓」という病の広がりに怒りを感じてらっしゃる方も、油断は禁物。何を隠そう、よく似た病とウイルスは無数にあります。「反体制という病」「正義の味方という病」「インテリ気取りという病」……。たとえば「メリット」の5つは、単語を入れ替えれば、ほかのことに怒っている人や文句を言っている人にもおおむね当てはまります。

 ともあれ、「嫌韓」という病で熱にうなされてはしゃいでいる人はさておき、このままではマズイというのは多くの人が感じているはず。慣らされたり流されたりしないように気を付けつつ、違和感を抱き続けたいところです。韓国人や在日韓国人の友人知人とはよりいっそう仲良くして、韓国からの観光客を歓迎し、韓国製品や韓国料理の恩恵も大いに受けましょう。まあ、あらためて言うまでもなく当たり前のことですけど。

 そういえば最近、このニュースサイトの母体である週刊誌もこういう話で批判を受けていました。まあ、雑誌メディアというのは懐が深くてまさに雑多な価値観が入り乱れているのが持ち味ですから、まったくスタンスが違うこんな原稿を書いてもとくに問題はないでしょう。テヘペロ。

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