逆転Vの渋野日向子が“持っている”「マインドフルネス特性」

逆転Vの渋野日向子が“持っている”「マインドフルネス特性」

快進撃が止まらない渋野日向子(Gatty Images)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、逆転優勝を果たした、プロゴルファーの渋野日向子選手を分析。

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 シブコはやはり“持っている”。次々と快進撃を続け、記録を塗り替えていく渋野日向子の活躍を見ていると、そう思わずにはいられない。

 9月22日に行われた「デサントレディース東海クラシック」最終日、渋野選手は首位と8打差の20位でスタート。おそらく試合を見ていた誰もが、彼女の優勝は無理だろうと思っていたはずだ。当人でさえ、「逆転はほぼ無理だと思っていた」とコメントしたぐらいだ。最初のうちは、渋い表情を見せていたが、4番ホールで最初のバーディーを取るとようやく顔がほころんだ。

 その後も渋野選手の勢いは止まらない。笑顔もだんだん満面の笑みへと変わっていく。16番ホールでは難しいリカバーに成功。ボールがカップへと吸い込まれていくと、右腕を強く振り、ギャラリーの歓声にこぼれおちそうな笑顔で応えた。台風17号の影響から最終組は雨や風に悩まされたが、シブコは天候に恵まれ、終わってみると8バーディー、ノーボギーのベストスコア「64」をマーク。優勝するという大逆転劇を起こし、メディアは一斉にこの逆転Vを「奇跡」と報じた。

 これまでの数々の活躍でも、「勝利の女神が微笑んだ奇跡」と書くメディアは多かった。初優勝したのは今年5月の「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」。国内メジャータイトルを20才178日で優勝し、史上最年少Vになった。8月には、全英女子オープンで日本勢として42年ぶりの優勝という快挙を成し遂げ、“シブコフィーバー”が湧き起こる。9月の「日本女子プロ選手権大会コニカミノルタ杯」でも、国内大会で29ラウンド連続オーバーパーなしのツアー最長記録を達成した。

 ここまで来ると、奇跡というより、「奇跡を起こす力」、「運をコントロールする力」があるような気がしてくる。これこそが彼女が“持っている”と思わせる所以であり、その土台にあるのは、ここぞという時にチャンスをものにして鮮やかなまでの結果を出せる心理的競技能力、いわゆるメンタルの強さだ。

 渋野選手が優勝した試合や試合後のコメントからは、自然体で自分らしく、気負わないというメンタルの強さが見えてくる。そして、これを支えているのが彼女の高い「マインドフルネス特性」ではないかと思う。

 マインドフルネスとは「『今、ここ』での経験や瞬間に対して、評価や判断をすることなく注意を向けること」と定義される。そして、体験されるマインドフルネスの程度や、マインドフルネス状態の経験のしやすさをマインドフルネス特性という。

 マインドフルネス特性には、「瞬間的に行っている行動への気付き」、「感覚や情動に対して判断しない」、「観察」などいくつもの要素がある。これらの特性が高ければ、必要に応じて集中したり、注意を切り替えたりする能力が高くなるという。プレッシャーに負けず、他者からの評価を恐れない。周りの選手の不調やマイナス感情に影響されず、不安やネガティブな感情にも引きずられずに、穏やかで安定した心理状態を維持できるといわれる。

 渋野選手は、全英女子オープンの試合中に駄菓子を食べる様子が話題となるなど、まるっきりの自然体。屈託のない明るい笑顔で「スマイルシンデレラ」と呼ばれた。優勝後のツアーでは、プレッシャーや葛藤が垣間見え、感情が表に出てしまうこともあったが、今回の「デサントレディース東海クラシック」では、そんな自分を立て直している。初日に「自分らしさを久しぶりに出せた」と話し、最終日には増えて行くギャラリーを前にしても「今日はプレッシャーにも感じず楽しんで、見渡してプレ―できてた」と笑顔でコメント。持っているマインドフルネス特性をフルに発揮して、強いメンタルを維持できたということだろう。

 すでに今期の獲得賞金は1億円を突破。次の目標は「賞金女王です」と宣言した渋野選手。次はどんな試合運びで観客を魅了してくれるのだろうか。

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