SNSにあふれる人生の成功者たち その苦しい台所を示す一例

SNSにあふれる人生の成功者たち その苦しい台所を示す一例

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 インターネット上には、自分を桁違いの金持ちやセレブリティーだとアピールする人たちがいる。そして、人生の勝者になるマニュアルやセミナーへの誘い文句がたいていセットになっている。彼らはいったい、本当はどんな人間として生きてきて、暮らしているのか。ライターの森鷹久氏が、まるで別人になってしまったという自称人生の成功者のセミナー主宰者についてレポートする。

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「たった半年で人生の勝者に!」
「三ヶ月で投資のプロになれるマニュアル販売!」
「平成の不動産王を目指す○○が送る必勝セミナー!」

…と、派手な文言で埋め尽くされたホームページを眺めながらため息をつくのは、九州出身で、現在は都内のメーカーに勤務する井出邦彦さん(仮名・30代)。よくある投資詐欺にでも騙されたというのか。

「違うんです。この○○(男性の名前)、実は高校時代の友人なんです。すごい真面目なやつで、スポーツも勉強もよくできて、一流大学から有名不動産屋に就職したはずなのに…」(井出さん)

 この怪しげなセミナーを主催する男性、仮にX氏としよう。X氏は九州の中堅進学校を優秀な成績で卒業後、現役で一橋大学へ進学。大学卒業後は、不動産業界を目指す学生なら誰もが羨む大手デベロッパーに就職し、仕事は厳しいかもしれないが、充実した人生を送っている…ように見えた。例えばX氏のフェイスブックを覗いてみると、当時「仕事の打ち合わせで銀座で飲んだ」とか「友人の紹介で大手航空会社のCAと交流会」とか、キラキラ系の王道を行くようなライフスタイルを謳歌していることが伺えた。

「身内だけの同窓会やった時も、バイタリティに溢れていて、なんかこう、差をつけられたなって感じだったんです。ただ、やたら“ビジネスビジネス”と連呼していたのには、若干違和感を覚えたんですが」(井出さん)

 この違和感が正しかったのかはさておき、それから数ヶ月して、X氏の投稿がパタリと途絶えた。何かあったのではないか、そう思ってメールや電話をしてみるが返信もなければ、通じることもない。まさか大病を患っていたりしないだろうか、などと友人らと噂していた数ヶ月後、X氏のフェイスブックが突如更新されたのだ。しかし、そこには元のX氏とはあまりにかけ離れた姿があった。

「先の怪しい文言とともに、ついさっき床屋に行ってきました、って感じに整えられたヘアスタイルと眉毛のXが、あいつなら絶対に着ないようなブルーストライプのスーツに赤ネクタイでガッツポーズをしている姿が目に飛び込んできました。見たことも聞いたこともないような出版社から投資のハウツー本が出たと。記念パーティーをやるからみんなで来てくれというメッセージも、同級生全員が受け取っています。そこには、大手デペロッパーで得た経験を元に、一年で数百室、数棟の不動産を購入し、人生の勝者になったとかなんとか書いてあって。もうわけがわかりません」(井出さん) 心配していた同級生たちが、とりあえず無事を確認できてホッと胸をなでおろしたのもつかの間、X氏が変な仕事に手を染めているのではないかと、新たな不安に襲われた。心ある友人は、X氏のパーティーに出向き、直接問いただしたりもしたそうである。しかし、X氏は逆ギレ。俺の商売を邪魔するのかと一喝され、一方的に縁を切られてしまったというのである。それもそのはず。というのも、井出さんは、X氏がその時に置かれていた本当の状況をのちに知ってしまったのだ。

「会社員時代、顧客から領収書を出さない“アドバイス料”とかを貰っていたようで懲戒処分になっていたと、Xの母親から聞きました。フェイスブックがストップした時期とも重なりますし、給料以上の派手な遊び方をするもんだから、借金も相当あったらしい。それで食い詰めて“やってしまった”んだと」(井出さん)

 その本の出版というのは去年の暮れごろの話。むろん自費出版であったことものちに判明するが、X氏のフェイスブックページは今年の春ごろを最後に更新はストップしたままで、貼られていた個人のホームページのリンクはすでに切れていた。投資のアドバイスをする会社を立ち上げた、というX氏本人の書き込みを元に法人登記を探し、取得してみたものの、本店所在地は東京・五反田のレンタルオフィスになっており、本人の住まいは、東京・杉並区のくたびれたワンルームマンション。ともに、本人は転居済みだった。登記に記された会社の設立資金は1万円。ほとんど実態のない会社であったことが容易に想像できる。さらに悪いことに、X氏は今年の夏頃に破産していたことが、官報にバッチリ記されていた。

「要は、会社をクビになり怪しい情報商材屋に成り下がったんだと思います。Xのセミナーに行った知人によれば、主婦や若者を集めて、限定何名だけの特別セミナーを三万円とか五万円の参加費で募っていたらしいです。"本当に儲かるならなんで人に教えるのさ?"と聞いたところ、烈火のごとく怒られたとか。別にX氏が人生の勝者でも敗者でも関係ない。昔のあいつが好きだったんですけどね…」(井出さん)

 つい最近になって、X氏に運用目的で数十万円を預けていたという複数の同級生がいたことも発覚。みな、X氏のいうがままに「人生の勝者になりたい」とか「不労所得で儲けたい」などとフェイスブックに書き込んでいたが、結局X氏に騙された格好だ。返金どころか、本人への連絡手段が一切なく、泣き寝入りするほかない現状だ。

 SNSには、こうした「自称金持ち」や「自称成功者」が驚くほどたくさんいる。このうちの何人が本物のセレブリティーで、弱者のために一肌脱ごうというセレブがどれほどいるのか。それは神のみぞ知る、といったところか。

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