違法動画蔓延で崩壊危機も声あげられぬR18映像業界の苦悩

違法サイトへのアップロード蔓延でR18映像業界が苦悩 8割が違法サイトを経由?

記事まとめ

  • ネット上の違法動画への遵法意識が高まる一方で、保護されづらいジャンルがあるという
  • R18映像の有名メーカー関係者は「8割くらいは"違法サイト"を通じて見ている」と語る
  • 弁護士らが対応に当たっている事例もあるが、数が多すぎるため追いつかないという

違法動画蔓延で崩壊危機も声あげられぬR18映像業界の苦悩

違法動画蔓延で崩壊危機も声あげられぬR18映像業界の苦悩

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 身分や職業にかかわらず権利は守られるべきだが、実際には格差があるのが現実だ。著作権保護においても、そういった格差が生じつつある。ネット上の違法動画への遵法意識が高まる一方で、同じ動画でも保護されづらいジャンルが存在する。その結果生まれつつある危険と広がる治安の低下について、ライターの宮添優氏がレポートする。

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 ネット上に、違法に複製された漫画などのコンテンツをアップロードしていたとして、違法サイト「漫画村」の管理人と見られる男らがフィリピン当局に身柄を確保され24日、やっと日本に移送された。これから福岡県警による取り調べが行われる予定だが、あまりに動きが鈍く「いくら海外当局が絡んでいるからといって遅すぎる」と、司法当局、マスコミ記者も苛立っている。

 しかし一部を除けば、こうした違法コンテンツをアップロードしているサイトやSNS上の個人アカウントは、騒動のおかげで厳しい衆人環視のもとに置かれるようになった。「著作権」がどういう権利なのか、具体的には誰が損し誰が得をしているのか、ぼんやりではあるが一般市民も理解し始めたため、出版社や放送局、著作家達が権利を主張しやすい土壌が形成されつつあるのだろう。

 一方で、漫画やテレビ映画などの映像、音楽作品だけが「コンテンツ」ではない。とある業界では、違法コンテンツの蔓延が手に負えないだけでなく、自身の著作権を声高に主張できない現実がある。それは、R18業界だ。

「然るべき許可を得て、出演者、製作陣にも正当な対価を払い、法に則って流通させ販売しています。それでも、今日発売した作品が、同時に違法サイトにアップロードされます。たとえば、とある有名女優の新作が出ても、DVDとして売れるのは数千本が限界で、ダウンロードされてもだいたいそれくらい。作品を見るほとんどの人、おそらく8割くらいは“違法サイト”を通じて見ているのです」

 こう話すのは、都内の有名メーカー関係者。多い時で月に百数十本の“新作”をリリースしているが、直後に違法アップロードされるため、売り上げが落ちると嘆く。閲覧者の8割が違法サイト経由、ともなれば目の上のたんこぶどころではなく、資産をごっそり奪ってゆく“泥棒”そのもの、なはずだが「作品が作品だけに」(メーカー関係者)権利を声高に主張したところで、漫画や普通の映像作品のように、訴えを世間が聞き入れてくれるのか、不安が残るという。

 実際に、こうしたメーカーの声を受けて、日本国内の弁護士らが対応に当たっている事例もあるが、とにかく違法アップロードサイトの数が多すぎるため追いつかない。また、首謀者を突き止めようとも大変な労力を要するために、結局のところ野放し状態になっているのが実情だ。都内の法律事務所関係者も肩を落とす。

「R18作品だからということで仕方ないのではないか、そう思われているメーカーさんだっているほどです。しかし正当な権利はやはり守られて然るべきなのは当然。そう思ってやっていますが、何せ数が多く、複数の反社勢力、海外マフィアなどが手を組み運営している場合もある。日本国内の司法当局に訴えるだけではダメで、国際的な捜査を要するのです。だから難しい」(法律事務所関係者) 違法動画の蔓延による販売不振により業界のビジネスモデルが崩れたわけだが、なかでも深刻なのは、新人女優の売り込みが、困難を極めるようになったことだ。

「誰でも最初は新人なわけですが、そのデビュー作の販売数が伸びないと、次に繋げづらい。最低でも数千本は売れて欲しいのですが、最近は数百本というときもある。せっかく良い作品でデビューできても、利益が出なければ次回作に響きます。今は有名女優でも作品に出るだけでは売れない時代です。販売促進のイベントをさかんにやって、そのイベント参加券をつけたりしています。接触イベントは危険も少なくないですが、それでも頑張って女優さんみずからSNSで宣伝してくれていますね。ほかに、作品制作のためのクラウドファンディングなど、新しい試みも始まっていますが、業界全体の苦しさを思うと、焼け石に水かもしれません」

 偏見が先立つ業界ではあるかもしれない。しかし、法に則り営業しているR18映像業界の正当な権利を守らなければ、犯罪の温床になってしまうなど負の連鎖が続き、結局はさらに悪い事態が引き起こされる。良識的な人からは目くじらを立てられるようなコンテンツであっても、権利は権利。真っ当に仕事をしている人たちの権利が踏みにじられていることを黙認すれば、潰れるのはその真っ当な人間だけではない。誰かの権利をないがしろにするということは、権利者に不利益を生じさせるだけでなく、様々な不測の事態を呼び込むという現実があることを、今一度認識しておく必要があるだろう。

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