セクシー発言・進次郎氏 なぜ一斉バッシングが始まったのか

セクシー発言・進次郎氏 なぜ一斉バッシングが始まったのか

評価が上がったり下がったり(写真/時事通信フォト)

“将来の総理候補”ともてはやされ、38歳の若さで初入閣を果たすなど「上り坂」ばかりだった小泉進次郎・環境相が、「まさか」の猛烈な逆風に晒されている。そのバッシングの背景には安倍晋三・首相との“微妙な距離感”も影響しているようだ。渡米した安倍首相は、日米貿易協定に合意し、トランプ大統領と笑顔で握手して「ウィンウィンの合意だ」と強調したが、その足下では何が起きているのか──。

 進次郎氏が口を開くたびに、批判の集中砲火だ。

 会見での記者への答えが「ポエム」と批判を浴び、外交デビューとなった国連の環境関連会合で、「気候変動問題への取り組みはセクシーであるべき」と語ったことにも「言語明瞭、意味不明瞭」と非難が巻き起こった。ネット上では、ステーキを食べに行ったことまで、「家畜の牛の育成過程では多量の温室効果ガスが排出される」と槍玉にあげられる始末だ。

 8月にフリーアナウンサー・滝川クリステル氏との電撃結婚を発表し、9月11日に初入閣を果たした時の好意的な報道が嘘のような風向きの変化である。

「『セクシー』は隣に座っていたコスタリカの外交官の発言を受けての言葉。なぜここまで炎上するのか」(環境省関係者)と訝る声もある。しかも、進次郎氏に辛辣なのは、安倍政権に批判的なメディアばかりではない。

◆人気すぎても困る

 内閣改造後の世論調査で「活躍を期待する閣僚」として進次郎氏がトップだったことを報じた産経新聞は〈「進次郎さんは自民党の宝だ」(自民ベテラン議員)との声も上がる〉(9月17日付)と目いっぱい持ち上げていたが、「セクシー」発言後には、〈高い発信力に見合う責任を果たせなければ、“人寄せパンダ”からの脱却はかなわない〉(同23日付)とスタンスを一転させた。

 テレビも同様で、安倍首相自らが出演し、共演者と会食の席まで設けたことで知られる『ワイドナショー』(フジテレビ系、22日放送)ではMCのタレント・松本人志が、「(進次郎氏は)簡単にいうと後出しじゃんけんをしてきた人だと、申し訳ないけど僕は思っている」と厳しく評価してみせた。

“親安倍”と見られてきたメディアにまで、批判が広がっているのはなぜなのか。

「もともと進次郎氏は、ネット上で熱烈に現政権を支持するようなコアな安倍ファンからの人気はない」と指摘するのはネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。

「2018年の総裁選で石破茂・元幹事長に投票するなど、これまで政権と距離を置いていた影響が大きく、ひとたび失言などがあれば、保守層も遠慮なく批判に転じる。石破氏は『後ろから身内を撃つ男』扱いをされてきました。もちろん、政権に批判的なリベラル層は冷ややかな目線を向けますから、現在の進次郎氏は左右両陣営から標的となっているといえます」

 実は、その構図こそが、「安倍首相やその周辺が望ましいと考えていた状況ではないか」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)とみられているのだ。背景には複雑な権力構造がある。

「安倍首相は退任後も政権に影響力を残すために、キングメーカーとして次期首相を自ら選んだかたちにしたい。そのためには、これ以上、進次郎氏の人気が高まると都合が悪い。今回の改造では茂木敏充・外相、加藤勝信・厚労相ら後継候補を閣内にズラリと並べましたが、その中でひとりだけ人気が突出し、国民が“次は進次郎しかいない”と考える状況になれば、安倍首相としては、“自分が後継に選んだ”というかたちにならない。親安倍とされるメディアやネットでも急速に進次郎氏への批判が広がっている背後には、そうした官邸サイドの意向が微妙に反映されているのではないか」(野上氏)

 大臣就任をきっかけに進次郎氏の未熟さが強調されれば、“やはり頼れるのは安倍首相だ”と印象づけられるという指摘である。

◆イメージアップのはずが…

 しかし、そうした身内の大臣への“ネガティブキャンペーン”は、一歩間違えば安倍首相自身の首を絞めかねない。

 進次郎バッシングが高まるのと同時に、安倍首相もその言動が批判の的になった。

 ラグビーW杯が開幕した9月20日、安倍首相は〈世界中に感動を与える熱戦を、大いに期待しています!〉というメッセージとともに、日本代表ジャージのレプリカを着た動画を公式ツイッターに投稿。それに対し、台風15号の被害に遭った千葉県で停電・断水が続く地域があったことから、批判する投稿が相次いだ。

「当日の開幕戦を安倍首相はラグビージャージを着て麻生太郎・副総理、萩生田光一・文科相らと現地観戦し、中継に映り込んだが、その様子を見てネット上に同様の批判を書き込む人たちもいた」(自民党関係者)

 安倍首相は試合終了後、ツイッターに〈エキサイトしっぱなしでした〉と綴ったが、自国開催の大イベントという格好のパフォーマンスの機会を逃した印象は否めない。

「キングメーカーとなる野望を果たすには、退任間際まで求心力を維持し続けることが絶対条件。支持率がジリ貧の総理大臣に後継指名する力など残らないからです。しかし、党内の入閣待望組にポストを大盤振る舞いした今回の改造人事ではスキャンダルが取り沙汰されている大臣が少なくない。唯一の政権浮揚の材料だった進次郎氏の人気が急落し、首相自らの行動も炎上騒ぎを起こしているとなれば、さらに閣僚スキャンダルなどが出てきた際に、党内の求心力が一気に低下する可能性は十分にある」(前出・野上氏)

 政権の“総仕上げ”に向けた戦略は、危うい船出となっている。

※週刊ポスト2019年10月11日号

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