クレーマーがファンになる女性が伝えるクレーム対処法

クレーマーがファンになる女性が伝えるクレーム対処法

クレーマー対応のコツとは

 パート先では「なんで売り切れなのよ!」、クタクタで帰れば「嫁のくせに、こんな時間まで出歩いて!」。けんかはしたくないけれど、黙って耐えるのも悔しい…。世の中にあふれる理不尽なクレームにどう対処すればいいのだろうか? 公務員として1日200件近いクレーム処理をしているうちに「いつしか元クレーマーによるファンクラブができていた」という経験をもとに、のべ8000人以上にクレーム対応を指導している、山下由美さんが最強のクレーム対処法を伝授する。

◆「超共感法」でクレーム脳をクールダウン

 山下さんが編み出したのは、どんなタイプのクレーマーにも通用する「超共感法」だ。怒りを落ち着かせ、相手の“ゴール”を明らかにする。

「超共感法の目的は、相手に『そうなんです』と言わせること。ビジネスの世界でも使われている手法です。クレームを言っている時の脳は興奮状態で、こちらの言うことをすべて否定しようとしています。

 しかし、肯定の言葉を言わせると、脳は自分の発した言葉に影響され、少しずつ落ち着いていきます」

 クレーム対応のマニュアルに多い「常に笑顔で冷静に話す」というのは、「私は怒っているのに、ヘラヘラしないで!」と、火に油をそそぐ。

 超共感法なら、怒りでわれを忘れているクレーマーにこそ効果を発揮できるという。

「最も重要なのは『ペーシング』といって、声の大きさやテンポ、体の動きなどを相手に合わせること。例えば、パート先のお客様に『この店はどうなってるんだ!』と怒鳴られたら、同じくらい大きな声で『どうなさいましたか!?』と聞いてください。早口で慌てている人が来たら、自分も早口で、一緒に慌てましょう」

 大声で怒鳴る人は、相手が萎縮することを想定しているため、怖がらずに大きな声を出されると隙ができる。慌てている人は、相手がのんびりしているとイライラするため、同じように早口で“共感”を示すのがよい。

「声の大きさや動きで同調することで、無意識のうちに好感を抱かせることができます。そのままペーシングを続けながら相手の言い分を聞き、相手の気持ちを探ってください。

 この時、黙って話を聞くのは避けましょう。ペーシングができず、相手の気が済むまで話を聞き続けなければならなくなります」

 ペーシングしながら「長らくお待たせしてしまい、申し訳ございません」「商品に傷がついていたのですね」など、相手の気持ちを代弁することができれば、相手の「そうなんです」を引き出せる。

「あとは、相手が『そうなんです』と答えそうなことを3回は繰り返してください。『お出ししたビールがぬるかったのですね』『こんな暑い日に、がっかりなさったでしょう』と、続けるうちに相手のゴールが見えてくるはず。

『サーバーの調子が悪くて』などと説明はせず、相手に『そうなんです』と言わせることだけに集中してください。超共感法で“味方につけた”後なら、新しいビールを出すまでに何分かかるかの説明も、冷静に聞いてもらえます」

 万が一、超共感法でも怒りが収まらない場合は、「すぐに対応できないので、後日あらためて連絡します」など、クールダウンの時間を設けるといい。

「『後日あらためて』という言葉を過剰に嫌がるようであれば、金品目的の悪質なクレーマーの可能性が高い。ご近所トラブルでも『お詫び』を要求されることがあるので、相手の要求にどこまで応えるか、あらかじめ線引きしておくといいでしょう」

◆クレームノ≠嫌がらせ 丸く収めて味方を増やす

「『超共感法』を使えば、怒鳴っていた相手が笑顔になるだけでなく、自分の味方になってくれます」と山下さんは言う。しかし、もともと人の顔色をうかがうことが得意な人は、少し注意が必要だ。

「相手の気持ちを代弁しようとするあまり、本心から相手に共感してしまうと、相手の怒りや焦りに影響されて冷静な判断ができなくなったり、相手から『この人は私の話を聞いてくれる』と認識されて、愚痴のようなクレームを延々と聞き続けるはめになったりと、自分が追い込まれてしまいます。相手の話を聞いて味方になるのではなく、相手が話を聞いてくれるようになるまでクールダウンさせて、自分の味方にしてください」

 そのためには、「私にはあなたの怒りがよくわかります」と、自分ひとりで相手に“共感”するのではなく、「今、あなたが怒るのは当然のことですね」と、相手の気持ちを一般化し、“誰もが共感できる”として代弁する。

「超共感法では、本心から相手に寄り添う必要はありません。子供の成績が悪いことを怒鳴る義母を『うるさいな』と思っていてもいい。

 大きな声で『そんなに子供のことを思ってくださるんですね!』と驚くだけで、義母は少し心を開きます。3回『そうよ!』と言わせた後で、仕事が忙しいことや、子供は塾で勉強していることを説明すれば、『そうだったの。あなたも大変ね』と、味方になってくれます」

“クレーム”のたびに超共感法を繰り返せば、“うるさい姑”が本当は“孫思いのお義母さん”だったとわかる。「子供のことを思ってくれてありがとう」と、心から言えるようになるはずだ。

 めんどうなクレーマー全員が悪質なわけではない。彼らの本当の気持ちを探り当て、嵐を追い風に変えてしまおう。

※女性セブン2019年10月10日号

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