台風19号 4600人死亡の「伊勢湾台風」との類似点

【台風19号が日本列島接近】60年前に甚大な被害をもたらした伊勢湾台風との類似点指摘

記事まとめ

  • 過去最大クラスの台風19号が日本列島に接近し、事前にできる対策などが報道されている
  • 60年前に甚大な被害をもたらした「伊勢湾台風」の被害との類似点を指摘する声もある
  • 伊勢湾台風では死者4697人、行方不明者401人、負傷者3万8921人の被害が出た

台風19号 4600人死亡の「伊勢湾台風」との類似点

台風19号 4600人死亡の「伊勢湾台風」との類似点

急激に拡大し日本列島に接近中の台風19号(提供:NASA /The New York Times/Redux/アフロ)

 過去最大クラスの台風19号が日本列島に接近するなか、政府やメディアを通じて事前にできる対策や避難の心得が繰り返し報じられている。古今東西の災害の歴史にも詳しい歴史作家の島崎晋氏は、ちょうど60年前に甚大な被害をもたらした「伊勢湾台風」の被害との類似点を指摘する。

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 この週末(12〜13日)、再び巨大台風が上陸して、広範囲に大きな被害をもたらす恐れがある。先月、千葉県などを襲った台風15号を上回る恐れもあるというから警戒しなければならない。気象庁は「自分や大切な人の命を守るため、早めの対策を」と呼び掛けているが、上陸予想3日前に記者会見を開くのは異例なこと。それくらい今回の台風19号は特別ということである。

 台風による被害といえば暴風、高潮、波浪、河川の氾濫、洪水、土砂崩れなどがある。台風19号の進路や暴風雨の予想などは気象庁の発表をはじめ信頼できるニュースで常に最新情報を確認し万全な備えをしていただきたいが、災害の歴史を振り返ると、今回の台風19号と伊勢湾台風には、いくつかの共通点があるのが気になる。発生時の中心気圧や中心部分の最大風速は若干及ばないまでも、それに近い数値を記録している。発生から短時間で急速に発達した点や、「スーパー台風」であること、進路、高潮被害が懸念されていることなどが似ている。

 伊勢湾台風が日本列島を襲ったのは昭和34(1959)年9月26日から翌日にかけて。21日にマリアナ諸島沖で発生した台風15号が猛烈な勢いで発達し、非常に広い暴風域を伴いながらあまり衰えることなく北上。26日午後6時頃に和歌山県潮岬に上陸したのち、富山市の東から日本海に沿って北陸、東北地方を縦断して太平洋に抜け出た。

 直撃を食らった紀伊半島沿岸一帯と伊勢湾沿岸では高潮と強風、河川の氾濫による被害が甚大で、愛知県南西部・渥美半島の伊良湖では最大瞬間風速が1秒間に55.3メートルを記録。愛知県だけで死者・行方不明者3300人以上に及ぶ大惨事となった。

 全国の被害は、死者4697人、行方不明者401人、負傷者3万8921人、住家全壊4万838棟、半壊11万3052棟、床上浸水15万7858棟、床下浸水20万5753棟という甚大なものだった。気象庁によると、観測史上最大のこの台風は、九州から北海道までの全国で最大風速が1秒間に20メートル以上、最大瞬間風速が30メートル以上を記録したという。

 日本では伊勢湾台風を教訓として災害対策基本法が制定(1961年)されたほか、自治体レベルでは堤防の整備、避難体制の確立、具体的な備えについての啓発が、気象庁やメディアでは詳細な情報の提示などが積極的に行なわれるようになった。だが、自然の脅威はときに人間の予測をはるかに上回ることがある。

 伊勢湾台風から60年を経過した現在でも、高潮が想定外の高さに及べば大規模な被害が出ても不思議ではない。今回は干潮と満潮の差が大きい大潮の時期に重なり、台風が接近する時間帯に満潮時刻になると見られること、気圧が低く海面が吸い上げられることから、伊勢湾台風でも大きな被害を出した高潮が懸念されており、注意が必要だ。

 もし高潮に襲われ街中が水浸しになると、稀にトイレや風呂場、洗濯機の排水口など思わぬ場所から下水が噴き出してくることもあるが、国土交通省はこれへの備えとして、45リットル程度のビニール袋に水を入れた「土嚢」ならぬ「水嚢」を作るよう勧めている。袋を二重にして、半分程度まで水を入れてから、残りの空気を抜いて中袋を固く締める。外袋は紐できつく縛る。これらをあらかじめ排水溝の上にセッティングしておけば逆流を防げるとのことである。「備えあれば憂いなし」とはとはいかないまでも、「人事を尽くして天命を待つ」姿勢もまた必要であろう。

【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など多数。

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