一線を退いた一流創業者らがその後の人生の挑戦に見出す価値

一線を退いた一流創業者らがその後の人生の挑戦に見出す価値

社長を離れた今は?

『週刊ポスト』のグラビア連載「寿影」は2018年2月から50回にわたって続いた。「寿影」とは、写真家・渡辺達生氏が、出演をしてくれた被写体の人々が晩年にこれまでの人生を祝う意味を込め、葬儀で使用する「遺影」を「寿影」と置き換えて始まったプロジェクト。

 連載に登場した有名人のなかでも、一代で大きな成功をおさめて、周囲が驚くほどの潔さで後進に後を譲り引退した経営者のふたりは、隠居という言葉からはほど遠い老後の計画をカメラの前で語った。

『ジャパネットたかた』創業者の高田明氏(70)は、4年前に長男に会社をあっさり譲り渡し、新たな人生を歩み始めた。社長職を離れてからは、「生き生きした世の中を作りたいとの願いと、辞めても明は生きているぞ」の意味を込めて、『A and Live』という会社を設立。また、2年前には倒産寸前だったプロサッカーチーム『V・ファーレン長崎』の社長に就任、地元長崎を盛り上げる。

「私にとって人のために役立つことが究極の喜び。それをミッションにして、残された人生を社会貢献に費やしたい」と語る高田氏は、4年ほど前にあと50年(117歳まで)生きると公言した。

「そう考えたら、今からやりたいことがたくさん出てくる。実際にはそこまで長生きしなくても、そう信じて生きることに価値を感じます」

 高田氏と同じく成功譚にしがみつくことなく、経営の第一線から身を引いたのは、『カレーハウスCoCo壱番屋』の創業者、宗次徳二氏(70)である。

 引退するまでは友人を1人も作らず、3、4時間の睡眠で仕事に専念。毎朝4時台に出社して1000通以上のお客様アンケートに目を通し、店舗の清掃を行なうのが日課で、休みは年間15日ほど。並みの経営者以上の働きで大成功を収めたが、「三流経営者でも何とかなる見本でしょう」と謙遜する。

 引退後は2003年に音楽やスポーツの振興、福祉施設やホームレスへの支援などを行なうNPO法人を設立して理事長に就任。さらにクラシック好きが高じて、2007年にはクラシック音楽の普及を目的とし、28億円の私財をなげうって名古屋に『宗次ホール』を建設。経済的理由で進学できない音楽家志望の奨学金支援や小中学校への吹奏楽器の寄付も行なうなど、社会貢献に力を注ぐ。

 引退後も早起きは変わらず。町やホール周辺の掃除で汗を流し、四季の花を植えて人々を楽しませている。

「“早起きは百利あって一害なし”。毎日一生懸命生きるのが私の終活です」と語る。

●取材・文/下川良子(スペース・リーブ)

■渡辺達生作品展『寿影』
・10月4日(金)〜17日(木)11時〜19時
・ソニーイメージングギャラリー銀座:東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階

※週刊ポスト2019年10月18・25日号

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