ステップファーザーの音喜多駿氏、決めた覚悟と子への気配り

ステップファーザーの音喜多駿氏、決めた覚悟と子への気配り

音喜多さんの家族写真。長女は継子、次女は実子だ

「『本当の父親じゃない』と言われて、腹が立ったから首を絞めた」──。息子殺しの容疑で逮捕された継父はこう述べた。

 9月18日、埼玉県さいたま市の教員用集合住宅で小学4年生の進藤遼佑くん(9才)の遺体が見つかった事件。死体遺棄の容疑で逮捕されたのは、遼佑くんの義理の父親で無職の進藤悠介容疑者(32才)だった。

 悠介容疑者はインターネットで知り合った遼佑くんの母親と今年3月に結婚。その半年後の凶行に悠介容疑者は「帽子をなくしたことを注意したら、『本当の父親じゃないくせに』と言われて立腹し、電気コードで首を絞めた」と供述したという。10月9日、殺人容疑で再逮捕されると、容疑を否認している。

 昨年3月、東京・目黒区で無職の船戸雄大被告(34才)が、妻の連れ子で当時5才だった結愛ちゃんに虐待を繰り返して死亡させた事件は、連日、メディアで大々的に報じられた。東京地裁は10月15日、雄大被告に懲役13年の判決を言い渡した。

「公判の中で雄大被告は、血のつながりがないことを負い目に感じ、それを跳ね返そうと必要以上にしつけを厳しくしたがうまくいかず暴力をふるったと証言した。『親になろうとしてごめんなさい』と泣きながら謝罪する場面もありました」(社会部記者)

 夫婦のどちらか、または両方が子連れで再婚した家庭を「ステップファミリー」と呼ぶ。ドラマや映画では新しい家族のあり方としてポジティブに描かれることが多いが、現実にはそうした不幸な事件が起きている。

 ステップファミリーを支援する日本で唯一のNPO法人「M-STEP」の副理事長・平田えりさんは言う。

「今は結婚する男女の4組に1組が再婚で、学校の1クラスにつき1、2組はステップファミリーがいるイメージ。年々、確実に増えています。相談者は女性の方が多く、『子供と継父がうまくいかない』、『離婚したいけど収入の事情で別れられない』といった問題が多い。生活がうまくいかない時、妻が夫にしがみついたことによってDVやモラハラを招き、子供の虐待被害にも発展しやすくなります」

 悩みを打ち明けるのは女性の方が多いが、「問題を起こす」のは男性の方が多いと平田さんは続ける。それは、継親は「いい親にならなければ」と考えてしまうため、ストレスをため込みやすく、特に継父は悩みを内に秘めてしまう傾向にあるからだろうと指摘する。

◆“ステップファーザー”は実父の何十倍も準備が必要

 今年7月の参院選で初当選した参議院議員の音喜多駿さん(36才)も継父のひとり。大学卒業後、外資系企業でのサラリーマン生活を経て都議会議員になった音喜多さんは議員活動のため訪れた都庁にて、のちに妻となる江東区議の三次ゆりかさん(34才)と出会った。

「妻は当時、7才の娘がいるシングルマザーで、つきあい始めてからは常に3人でデートしていました。娘のためにも中途半端に仲よくなるより“新しいパパ”になろうと腹をくくり、交際半年で結婚を決めました」(音喜多さん・以下同)

 交際中にステップファーザーの専門書を読破し、そこで学んだことを実践したという。

「妻と価値観を共有するため、エクセル表に『何を優先したいか』『週に何度ごはんを一緒に食べたいか』などを記し、お互いの考えをすり合わせました」

 2015年11月、婚姻届とともに娘との養子縁組届を提出した。結婚と同時にパパとなった音喜多さんが自らに課したのは、「永遠の二番手」を受け入れる覚悟だった。

「子持ちの女性と交際する男性は、『なかなかふたりきりになれない』『子供の発熱でデートをドタキャンされた』など、自分が一番じゃないことに悩むケースが多い。でも子供を最優先するのは母親には当然のことであり、『永遠の二番手』になる覚悟がなければシングルマザーとの交際や結婚は諦めるべきです。結婚後も妻にとって一番は断然娘でしたし、娘にいたっては『ママ、じいじ、ぢゃぢゃ丸(ペットの犬)、僕』の順でした」

 そう苦笑する音喜多さんが父親になってうれしかったこととして振り返るのは、一緒に生活するようになった数か月後、家族でのドライブ中に起きた出来事だ。

「ずっと僕を『オト』と呼んでいた娘が突然『ねえパパ』と口にしたんです。娘はすぐ『パパパ、パトカー』とごまかして、『今パパって言ったでしょ』という妻のツッコミに『呼んでないよォ』と照れていました。すでに僕のいないところでは『パパ』と呼んでいたらしく、父親として認められた気がして本当にうれしかった」

 2016年に次女が生まれてからは、長女が寂しい思いをしないよう心がけた。

「継父のなかには“どうしても実子をかわいがってしまう”というかたもいますが、僕はどちらも分け隔てなくかわいく、自分でも驚くべき発見でした。上の子には“あなたが大切なんだよ”というメッセージを発信することを心がけ、下の子を通して『お姉ちゃんは1才の頃、こんなふうだったのかな』と想像することも楽しかったです」

 ステップファーザーにとって何より大切なのは「準備」だと音喜多さんは強調する。

「ステップファーザーになることは子供の人生を途中から背負うことです。突然父親になるのだから、実の親の何十倍も準備しないと子供を傷つけます。

 将来的に娘が『本当のお父さんと暮らしたい』と言う可能性もゼロではないので、そうなったらショックを受けるだろうことも今から想像してシミュレーションしています」

 現在の音喜多さんが想像するのは「長女の結婚式」だ。

「いちばん感動するのは両親への手紙ですからね。長女の結婚式を勝手に想像して、“手紙を読んでくれるかな”とひとりでドキドキします」

 そう緊張気味に語る顔は、紛れもない父親の表情だった。

※女性セブン2019年11月7・14日号

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