反天連デモ参加者 司法官憲に防護されて恥ずかしくないのか

反天連デモ参加者 司法官憲に防護されて恥ずかしくないのか

在特会の怒鳴り声が響きわたった

 8月15日、靖国神社。日本はおろか、世界が注視するのは首相や閣僚が参拝するか否かである。一方、左右イデオロギーの激突の場であることを報じるメディアは少ない。日本で一番“特別な日”の水面下で展開される、不可思議な現象に評論家の古谷経衡氏が迫った。同氏はデモ参加者から身元がバレた際、デモへの参加を拒否されたという。その後は周辺からこの日の状況を取材した。

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 8月15日。先の大戦で不幸にも戦没した英霊を顕彰するという、荘厳な祈りの空間に最も似つかわしくない熱狂が、まさに九段・靖国の周辺で繰り返されていた。

 反天連(反天皇制運動連絡会)。1984年に結成された、天皇制打倒と靖国神社解体を標榜する新左翼グループである。2009年頃より毎年、靖国神社近傍の九段・水道橋付近で「靖国いらない!」のシュプレヒコールを上げる。

 機動隊と公安に「防護」された反天連が神保町交差点に差し掛かるまで、特攻服を着たVシネさながらの右派系市民団体の構成員が入れ替わり立ち替わり、鉄柵を乗り越え先導する警察車両に向かって突きかかってくる。その都度機動隊員に制止されるので行進へのダメージは無い。

 構成員らの突撃にリアリティが感じられない。まるで機動隊員の制止を期待しているようだ。スピーカーを下げたカーキー色の戦闘服をまとう若い女が、反天連の進行方向の歩道に座り込む。たちまち機動隊員4人に抱き上げられる。

「おい、こら、触んなぁ!」の絶叫が可愛らしい。どこかプロレス的な一連の繰り返しが延々と九段下交差点を過ぎるまで続く。旭日旗のTシャツを着た腹の突き出た中年男が叫ぶ。

「死ね! クズ! 朝鮮人!」

 日々の鬱憤がシャウトの中に溶け込んでいる。もはや思想の左右など関係ない。

「この警備にいくら税金を使っているんだ……」。眼前で繰り返される騒擾に市井の人々はあきれ顔だ。

 たった数十人の反天連デモとカウンターとの衝突を防ぐために、毎年、二千人近くの機動隊と公安職員が動員される。九段下交差点を俯瞰できる居酒屋の窓辺では、左右両極の衝突を酒の肴に、団体客が飲んでいた。沿道から反天連デモに突入する血気の人が現れるたびに「お、行った行った!」。まるで五輪観戦の気分である。

 肖像権の侵害! などと機動隊と公安に怪気炎を吐いていた反天連デモ参加者は、完全に国家権力に守られている。「天皇制国家」の走狗である司法官憲に防護されて街を練り歩いて、恥ずかしくないのか。

 天皇制国家を打破したいのなら、官憲に頼らず「楯の会」のような民間防衛組織でも作ったらどうか。そんな企画力も意思もない。

 英霊への顕彰を無視した異様な左右の激突は、反天連が過ぎると、ものの10分もたたずに規制線が解除される。機動隊員たちが仲間と談笑しながら、トラックに鉄柵を積み込んでいた。

 靖国は日常に還る。

●ふるやつねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』『左翼も右翼もウソばかり』。近著に『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』。

※SAPIO2016年10月号

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