戦争用語使わない「しんぶん赤旗」はスポーツ報道に向かず

戦争用語使わない「しんぶん赤旗」はスポーツ報道に向かず

赤旗の「主張」欄は2面にある

 党機関紙であり、すべての記事が共産党の意向を反映している「しんぶん赤旗」にも、“社説”欄がある。同欄のタイトルは、ずばり『主張』。その言説を、評論家の古谷経衡氏が分析する。

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 しんぶん赤旗には堪らない語感が満載だ。赤旗用語ともいうべきか、そのやや前時代的で大仰な言い回し。

 策動・支配層・蛮行・独占資本・反動・天皇制国家・民主連合政府……。

 赤旗の文体は「です・ます」で統一され、重要なオピニオンの部分は「~ではないでしょうか」で締めるのが恒例だが、時折顔を出すこういった単語が珍妙でアンバランスな読後感を与えてくれる。

 8月22日に終了したリオ五輪。赤旗は8月8日の「主張(社説)」の中で「南米初のリオ五輪」と題して、「サンバのリズムに乗って南米から発信される『新しい世界へ』の呼びかけ」などと称揚し「リオから東京にオリンピック開催旗が無事に手渡される瞬間を見届けたいと思います」と手放しの絶賛。

 しかし2009年3月18日の赤旗には、「日本共産党は、オリンピックの名による浪費をやめ、都民のくらしへの支援を最優先」するという観点から東京五輪招致反対を明言している。

 この間に転向したのであろう。共産党は大日本帝国憲法を改正して現行の日本国憲法を公布する段でも、「天皇制が象徴天皇制という形で存置されているのは君主制の温存だ」などとして唯一日本国憲法に反対した党だが、その後の非暴力路線を経て「現行憲法下においては天皇制と共存」と転向し、護憲の旗手になったのだから、驚くにはあたらない。

 それよりも赤旗のリオ五輪における基本的報道姿勢を記したネット版の記事に目を奪われた。

 赤旗のスポーツ報道については、「『敵』や『主砲』といった戦争用語を使わない『しんぶん赤旗』のスポーツ報道が注目されています」とある。この法則にしたがえば「ゴジラ松井、主砲のバットでチーム三連勝」という見出しも戦争用語だからダメ、という訳である。アウトを駄目、セーフをよし、と言い換えた戦時中の敵性言語追放運動を思い出す以上に、私は小松左京の掌編『戦争はなかった』を思い出した。

 この作品は1991年のフジテレビ系『世にも奇妙な物語』で映像化されている。林隆三演じる戦中世代の銀行マン紺野が、若い部下の提案してきた「あなたの街に幸福の集中爆撃」と書かれた定期預金の広告コピーに、戦争の記憶が風化していることを嘆くシーンで始まる。

 本作は痛烈な戦後風刺だが、と同時に何の意図もない日常にすわ戦争を発見する、戦中世代の杓子定規・滑稽さも描写している。“主砲”は戦争用語だから駄目……。なるほど奇妙な話だが、イチローのバットが爆発したときに赤旗はどう表現するのか調べてみた。普通に「安打」と書いてある。日本語の語感をもっと大切にしてほしい。赤旗はスポーツ報道に向いていない。

●ふるやつねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』『左翼も右翼もウソばかり』。近著に『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』。

※SAPIO2016年10月号

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