共産党と赤旗 皇室にすり寄り態度を変えた理由とは

共産党と赤旗 皇室にすり寄り態度を変えた理由とは

昭和天皇崩御の際には苛烈なタイトルが並んだ

 かつては昭和天皇を「日本歴史上最大の惨禍をもたらした人物」などと苛烈な表現で天皇批判をしていた「しんぶん赤旗」だが、今上陛下がこの8月8日に「生前退位」の意向を示された(とされる)ビデオメッセージの発表については、拍子抜けするほどあっさりと報じている。

 その背景に何があるのか。フリーライターの清水典之氏がレポートする。

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 8月9日付の「『象徴の務め難しく』天皇が国民に向け表明」では、メッセージの内容を簡潔に伝えるに留め、非常にニュートラルだ。

 他の新聞を間違えて手に取ったかと思うほどで、その記事に続いて志位和夫委員長の意見が載っていたので赤旗だとやっと確認できるほどだったが、〈政治の責任として、生前退位について真剣な検討が必要だと思います〉と述べ、批判の言葉は一つもない。

 以前の共産党なら、「天皇による政治への干渉だ」と非難囂々だったのではないか。共産党の皇室に対する態度は、近年、明らかに変化している。

 たとえば、愛子内親王がご誕生すると、2001年12月2日付で、志位氏は〈新しい生命の誕生は、ひとしく喜ばしいことです〉とコメントしていた。天皇家の子どもだから喜ばしいのではない、と言わんばかりだ。知人に子どもが生まれたときに、もしこんなひねくれた祝辞を述べたら、社会人としては失格だ。

 ところが、時を経て、2006年の悠仁親王ご誕生時になると、2006年9月7日付で、志位氏は〈元気な赤ちゃんが誕生したことは喜ばしいことです〉と述べ、嫌味が消えている。

 2015年元日には、小池晃氏(現書記局長)が、朝日新聞デジタルに掲載された天皇陛下の「新年にあたっての感想」をツイッターに引用している。先の戦争について触れた部分だが、共産党議員が陛下のお言葉を引用するというのは極めて珍しいことで、共産党支持者とみられる人々から批判の声が上がったほどである。

 さらに小池氏は、2014年5月、千鳥ヶ淵戦没者墓苑で開かれた拝礼式に出席し、秋篠宮ご夫妻の長女、眞子様と同席している。共産党の幹部が、“能動的”に皇室と接触したのはおそらく戦後初めてで、これは歴史的事件だ(小池氏はその後も毎年出席し、2015年5月には秋篠宮ご夫妻、2016年5月には常陸宮ご夫妻と同席)。

 今になってはそれが伏線だったとわかるが、60年以上も出席を拒否してきた国会開会式にも、今年初めて共産党議員6人が出席し、陛下に頭を垂れた(※注)。

(※注)これまで欠席してきた理由について志位委員長は記者会見(2015年12月24日)で、(1)開会式が「主権在君」の形式、(2)天皇のお言葉のなかに政治的発言が含まれていたため憲法違反、の2点を挙げた。その上で(2)は「この三十数年来は、儀礼的・形式的」になり違憲ではないとし、出席を表明。同時に(1)は引き続き改革を求めるとし、改革実現のため開会式出席がより積極的な対応になると判断したと説明した。

 理屈は何であれ、かつて打倒を主張していた皇室に対し、すり寄っていると言ってもいいだろう。ここまで態度を変えた理由は何か。西村眞悟元衆院議員が語る。

「共産党は、街頭デモと武装蜂起で革命を起こすという方針をとっくの昔に放棄していて、いまはあらゆる階級の民衆を取り込む戦略に変わっている。

 しかし、天皇制廃止という方針を捨てたわけではない。『共産党は恐ろしい組織ではない』『昔と違う』と印象づけるために、皇室を利用していると見られても仕方ないでしょう。そのうち、国会開会式だけでなく、園遊会にも参加するのではないか」

 共著に『日本共産党研究絶対に誤りを認めない政党』がある産経新聞政治部の酒井充氏も口を揃える。

「園遊会への出席は十分に考えられます。もう一つ注目すべきは、来年か再来年に開かれる党大会で、党綱領が大幅に改定され、皇室への姿勢も現在の延長線上で変化していく可能性がある。ただし、共産党の本質は変わっていません」

 皇室に対し融和的になっているが、現行の党綱領の、《天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである》という箇所は、表現がソフトになる可能性はあるが、根本は変わらなさそうである。

※SAPIO2016年10月号

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